子育て消費増税の甘利明氏、批判受け司会とのやり取りを「捏造」

 新年早々、世間を騒がせることが好きな自民党の甘利明元幹事長が、消費増税を示唆して批判を浴びることになった。

 今月4日、伊勢神宮に参拝した岸田文雄首相は、直後の記者会見で「異次元の少子化対策」に挑戦すると明言。すると翌日、甘利氏がBSテレ東の番組で、「子育ては全国民が関わることで、幅広く支えていく体制が必要だ。将来の消費税も含め(財源について)地に足をつけた議論が必要」と消費増税もあり得るとの見解を示した。

 昨年末、岸田首相は防衛費をGDP2%まで増額するための財源として「増税」を打ち出したばかり。当然、甘利氏の消費増税発言に、メディアも世論も大きく反応した。

■司会者とのやり取りは甘利氏作

・『自民党税制調査会の幹部を務める甘利明前幹事長は、少子化対策の財源として将来的な消費税率の引き上げも検討対象になるとの認識を示した』(共同通信1月6日電子版記事)

・自民党の甘利前幹事長は、5日夜出演したBSテレ東の「日経ニュースプラス9」で「岸田総理大臣が少子化対策で異次元の対応をすると言うなら、例えば児童手当なら財源論にまでつなげていかなければならない」と指摘しました』(NHK1月6日電子版記事)

 ある自民党の職員が声を潜めてこう話す。
「自民党本部でも、消費税を上げるのかと、多くの記者が聞いて回る騒ぎになった。新年だったので幹部の数は少なかったが。『新年早々、甘利さんは何を言い出すのか』と皆が驚いていた」

 事の重大さに気が付いたのか、甘利氏は1月7日、ツイッターに《テレビ出演の際の消費税に関する件ですが、要旨は以下の通りであり、真意を伝えず断片的事実を繋ぎ合わせる報道はミスリードです》で始まる言い訳を投稿した。甘利氏によると、司会者と同氏のやり取りの全容は次のようなものだったという。

司会「総理が異次元の少子化対策を明言しましたが財源は消費税でやるんですか?」
甘利「いや総理は消費税をひき上げる積もりはないと思います」

司会「ならどうするんですか」
甘利「色々やりくりをして行くんでしょう」

司会「将来に渡って消費税は上げないんですか」
甘利「将来消費税を引き上げる必要が生じた時には増税分は優先的に少子化対策に向けるべきとは思います」

 そこで、BSテレ東の番組をチェックしてみたが、何度みても甘利氏はツイートのような発言をしていない。甘利氏だけではなく、司会者もツイートにあるような発言をしていないのだ。まさに「捏造」である。

■火消しに手を貸した神奈川新聞

 ある自民党の大臣経験者は、BSテレ東の録画を見ながら「ツイートにあるようなことは、どこにも出てこないじゃないか」と呆れ、以下のように加えた。
「甘利さんは岸田首相誕生の立役者の一人で、幹事長をはじめ政権政党である自民党の要職や重要閣僚を歴任してきたほどの政治家だ。消費増税発言は失敗だが、それはあとで修正すればよかった。なのに、架空の発言をツイートしてごまかそうなどとというのは、絶対にあってはならない。政治家として非常に問題がある行動だろう。テレ東に対してもも失礼極まりない。即刻、ツイートは削除すべきだ」

 しかし、今も甘利氏のツイートはそのまま。すると、批判を交わそうとしたのか、1月17日になって神奈川新聞に『甘利明・自民党前幹事長インタビュー 当面の消費税増税には慎重な考え』というインタビュー記事が掲載された。

 甘利氏の選挙区は神奈川県。前出・大臣経験者は「地元紙を使って火消しを図ろうとでもしたのか」と危ぶむ。

 確かに見出しだけを見ると、消費増税に慎重な姿勢とみられるのだが、記事を読むと、甘利氏が「消費増税に慎重」と語っているところはない。やはり甘利氏の本音は、「異次元の少子化対策」については「消費増税ありき」なのではないだろうか。

 一方、甘利氏が語ってもいないことを見出しにした神奈川新聞には、政治家との癒着が疑われる。

 元東京地検特捜部の郷原信郎弁護士は自身のブログで、《甘利氏が引用している番組動画をいくら見ても、ツイートで書いている「やり取り」は発見できません》、《甘利氏が「やり取り」を捏造してツイートしたのだとすると、自民党有力政治家の発言の信頼性そのものに関わる重大な問題です》と指摘している。

 自民党の現職幹事長だった甘利氏は、2021年の総選挙で、神奈川13区から再選を狙って敗北。比例復活となった。次期衆議院選挙では、改正公職選挙法による「10増10減」にともない、新20区に「国替え」して出馬する方針だ。「ねつ造」を正当化する甘利氏には、再度厳しい審判が下される可能性がある。

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