福岡市長選啓発でウルトラマンと筋トレに4000万円 投票率は史上最低

現職・高島宗一郎市長の圧勝に終わった福岡市長選。28万5,435票という史上最多の得票で3期目の勝利を飾った高島氏だが、ネット上で話題となったのは市選挙管理委員会が啓発のため広告代理店に制作させたウルトラマンを使ったCMと筋トレ動画だけ。選挙自体は盛り上がりを欠き、投票率は過去最低の31.42%にとどまった。
啓発の効果はなかったという結果になるが、市選管への情報公開請求で、広告代理店への業務委託に約4,000万円もの税金を投入していたことが分かった。

 

■低い市政への関心

過去最低の投票率で史上最多の得票――。何とも微妙な結果だったが、高島人気の底堅さは、素直に認めざるを得ない。ただし、当日の有権者数124万に占める高島氏の得票の割合(絶対得票率)は23%に過ぎず、「2割自治」(市関係者)の状況であることも確かだ。なぜ7割の有権者は、そっぽを向いたのだろう。

身近な政治であるにも関わらず、市政に対する市民の関心は低い。過去5回の市長選の投票率は、1998年(H10年)が43.49%、2002年(H14年)には当時の過去最低である32.46%まで落ち込み、その後2006年(H18年)が42.57%、2010(H22年)が43.67%、2014年(H26年)が38.73%と推移してきた。50%はおろか45%にすら達したことがないというのが市長選の実情である。二人以上の立候補者がいる時だけ10ポイントほど上昇するが、今回のように共産党推薦候補と現職の一騎打ちという構図の場合は、30%を超えるか否かが話題になるという深刻さだ。

多くの市民にとって、本当に身近な存在と言えるのは居住地域の区役所。普段、市役所に出向く必要はない。かつてのこども病院移転問題のような争点がない限り、市長選で投票所に足を運ぶという気にはならないのかもしれない。高島氏にこれといった失政がないうえ、大手メディアが天神ビッグバンなどの派手な施策ばかり取り上げることも、市政への関心をなくしている原因だ。

投票率低迷の最大の要因は、「争点」を作り出せなかった野党のふがいなさだ。争点のない選挙は、市長選でなくとも投票率が下がる。つまり、争点を作り出せなかった野党各党の責任ということだ。共産党を除く国民民主や立憲民主党などの野党各党は、候補者擁立さえできずに不戦敗となり、人材不足を露呈した。議会活動が見えずらい現状で求められているのは、市長選などの大型選挙で、きちんと候補者を立てて争点を明示することだろう。

■3件の業務委託に4000万円

選挙管理委員会はあの手この手で啓発に努めてきたが、なにをやっても空回り。今回の市長選では、多額の税金を投じてウケを狙ったものの、31.42%という過去最低の投票率を記録してしまった。

市長選絡みでネット上の話題になったのは、ウルトラマンを使ったCMとネット上で流された筋トレ動画(*下の画面)だけ。一体どれくらいの公費を啓発事業に使ったのか、市選管への情報公開請求で入手した関連文書を検証した。

市選管は、業務委託の形で啓発事業を行っていた。下の表に、業務名と契約金額、受注業者をまとめた。

委託された業務は3件。ウルトラマンを使ったCMや関連グッズの制作業務を2,699万9,998円で読売広告西部が、民放各局でのスポットCM放送を1,000万円で博報堂九州支社が、筋肉トレーニングの動画を制作してネット上で流す業務を149万9,904円で西鉄エージェンシーが受注していた。3件の業務委託で、計4,000万円近い税金が費消された計算だ。

選管としては、啓発に向けて努力したつもりだろう。しかし、4,000万円もかけた広報の結果が史上最低の投票率なのだから、明らかな失敗。一般市民にとって、4,000万円という金額がどれほど重いものか分かっていない。むろん、低投票率は選管の責任ではない。市政と市民の距離を縮める義務を負っているのが、議会であり市長であることは言うまでもない。

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