安倍派幹部“立件断念”でも終わらぬ特捜部の捜査

今月26日に予定されている通常国会の開幕を前に、自民党安倍派(清和政策研究会)の政治資金パーティー裏金事件が風雲急を告げている。

13日、東京地検特捜部が安倍派5人衆を含む幹部の政治資金規正法違反での立件を断念するとのニュースをNHKが配信。「検察に強い」とされる読売新聞も同様の報道を行った。

“巨悪を眠らせるな!”と怒る国民からの期待を集めた特捜部の捜査は、高額の裏金を受け取った池田佳隆容疑者と大野泰正参議院議員、谷川弥一衆議院議員の3人だけで終わる見通しだという。事実なら、まさに「大山鳴動してネズミ一匹」。立憲民主党の議員のコメントは、間違いではあるまい。しかし、本当にこれで終わりなのだろうか?

◇   ◇   ◇

裏金事件の捜査ルートは二つある。一つは、安倍派による政治資金収支報告書の不記載問題。この点については、会計責任者と安倍派幹部の共謀を立証する証拠がないとして、事務総長家に経験者を含む5人衆全員が不起訴になる見通しだ。

だが、逮捕されている池田容疑者への容疑は、自身の政治団体「池田黎明会」への約4,800万円の不記載による政治資金規正法違反。濃厚となっている大野氏、谷川氏の容疑も、両人自身の政治団体への不記載もしくは虚偽記入によるものだ。

安倍派幹部は、5人衆である萩生田光一前政調会長、松野博一前官房長官、西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長、高木毅前国対委員長と事務総長経験者の下村博文元文科相、塩谷立安倍派座長の7人。実は、それぞれの政治団体の不記載、虚偽記入での立件可能性はまだ残されえているということになる。

これまでの報道によれば、松野氏、世耕氏、高木氏は1,000万円を超すキックバックがあり、いずれも不記載とみられている。下村氏は安倍派のパーティー券を売りながら派閥に入金も申告しない「パクり」が500万円以上あったという。捜査関係者からは次のような声が聞こえてくる。
「世間は安倍派への捜査が終わったとばかりに報道を見て大騒ぎだ。確かに、派閥ぐるみという形で、清和政策研究会の幹部を立件するのは難しいが、それぞれの議員の政治団体については捜査は継続している」

今も捜査対象となっているのは、世耕氏、高木氏そして西村氏の3人という情報もある。西村氏はキックバックが数十万円とされ、「パクり」が高額だったという記事もない。しかし、同氏を支援してきたある人物が、怒りを露わにこう話す。
「西村は『派閥のパーティー券を買って』と現金や振り込みによるカネ集めをしていた。それを派閥には渡していなかったということだろう。これまでに、検察から問い合わせや確認を受けた支持者もいます。普段はええ恰好ばっかしているが、とてもカネに汚いことがわかった。派閥のパーティー券を買っているのに、ポケットに入れている――。詐欺ですよ。支援者を欺く酷い話だ。特捜部には、西村の責任を厳しく問うてほしい」

本サイトで報じたように(既報)、高木氏と森喜朗元首相とのグレーなカネのやり取りも噂されている。また、萩生田氏への疑義も残っている。

「萩生田さんは、政治資金に関する資料をすべて特捜部に提出している。『何もないので安泰』と同氏の周辺から声があがっているが、本当にそうなのか?萩生田さんの関係者が、旧統一教会とのことを特捜部に聞かれたという情報がある。萩生田氏の子分の一人が池田(容疑者)であることは周知の通りで、池田の裁判で萩生田さんが旧統一教会から資金提供などを受けていたなどと明かされでもしたら、捕まらないにしてもアウトだろう」(安倍派の衆議院議員)

安倍派幹部の「立件断念」はSNS上でも大きな波紋を呼んでいる。【#検察は巨悪を眠らせるな #検察仕事しろ】というポストが相次ぎ、前明石市長で弁護士の泉房穂氏の《『安倍派幹部立件見送り検討に“私見”「立証困難なら、なおさら捜査を続けるべきだ」』との見出しで、“私見”という表現が使われているが、これは“私だけの意見”ではなく、“国民の多くの意見”だと思う》の書き込みには、7万以上の「いいね」が付く状況となっている。

池田容疑者の立件額である「4,800万円」が特捜部の線引きになっている模様だが、3,000万円や2,000万円の裏金を収支報告書の訂正だけで逃がすとしたら言語道断だ。安倍晋三元首相は消費税を10%にアップさせ、インボイス制度の導入を決定するなど国民に税負担を強要してきた。一方で、安倍派は裏金をたんまり貯め込んで、税金は払っていない。こんな理不尽を許してはいけない。

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