腐敗組織・鹿児島県警への警鐘

先月22日、不当な捜査指揮で強制性交事件の実相をねじ曲げた鹿児島県警が、数十件分もの捜査資料=『告訴・告発事件処理簿一覧表』を流出させながら公表せず、内々で処理しようとしていることを報じた(既報)。

違法な情報漏洩の実態を把握しながら、隠蔽に走る県警。根底にあるのは、もみ消しに失敗した警察一家の強制性交事件を、「不起訴」に持ち込もうとした幹部警察官の思惑だ。鹿児島県警が守ろうとしているのは、性被害を訴えてきた女性ではなく組織の体面なのである。

その後の取材で、県警が県民への説明責任を放棄し、捜査機関としてのルールを無視してまで「犯人探し」を行っていることが分かった。本稿は、鹿児島県警への警鐘である。

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もみ消しや不当捜査の実態が露見するのを恐れる県警が、情報漏洩の事実を認めるとは思えない。“情報漏洩についての謝罪会見は開かないだろう”――それがハンターの見立てだった。絶対に漏れてはならない捜査資料が流出するに至った理由や背景を問われれば、鹿児島中央警察署絡みの強制性交事件について説明せざるを得なくなるからだ。しかし、前稿で明確に指摘した通り、ハンターが入手した捜査資料に記された事案は数十件分。「なかったこと」にしていいわけがない。

個人情報の取扱いに厳しい規制が行われるようになった現代社会においては、情報漏洩が確認された時点で謝罪会見なり記者発表を行うのが常識。まともな民間企業や自治体なら、漏洩を隠すことはない。それが「信用」「信頼」を担保する道だと理解しているからだ。だが鹿児島県警は、会見を開くどころか沈黙を貫き、犯人探しに血道を上げているというから呆れるしかない。

OBなど関係者の話を総合すれば、県警は不当捜査を担当させられてきた鹿児島中央署の警察官を中心に事情聴取を実施。実行者を特定して内々に始末し、情報漏洩の原因を作ったとみられている井上昌一刑事部長が退任する今年3月まで隠蔽を続ける方針だという。漏洩の事実自体を“なかったこと”にするつもりなのだ。

事情を知る県警内部からは「幹部の保身のためにルールを無視していいのか」、「身内関係者を庇って事件のもみ消しに走ったあげく、今度は身内を疑って犯人探し。恥ずかしい」、「幹部が腐っている。現場は迷惑。不当捜査の指揮を執ったのは署長だった井上刑事部長。さっさと非を認めて辞任すべきだ」、「情報漏洩が問題になるのは当然だが、なぜそうしたことが起きたのかを検証すべき。問題の本質は、強制性交事件を巡る不当捜査にある」などと上層部を批判する声が上がっている。

関係者が特に問題視しているのは、血迷った県警幹部の指示により、本来は重大事件の捜査でしか使えないはずの「Nシステム」を利用していること。情報漏洩について聴取を受けた警察官らの言動をチェックするため、Nシステムのデータを確認しているという。

クルマのナンバーだけでなく運転者や同乗者の顔写真までデータとして残せるNシステムは、“個人情報”の宝庫。厳しい運用指針が求められているのは言うまでもない。それを、身内の警察官の素行チェックに利用しているとすれば明らかなルール違反。指示した県警幹部の責任が問われる事態である。

事件のもみ消し、不当捜査、隠蔽、ルール無視のNシステム利用―― 一連の悪事を認めている鹿児島県警の上層部は悪党の集まりだ。

県警は、これまでにハンターが明らかにした2枚の「告訴・告発事件処理簿一覧表」に記載のある計4件(*うち2件は強制性交事件の関係で、実質的には3件)の関係者に漏洩の事実を告げ、簡単な謝罪で済ませた模様だ。しかし、流出したのは何倍もの捜査資料。記載された民間の関係者数は数十人、法人もかなりの数になる。

残念なことに県警は、どれだけの捜査情報が漏れたのか確認できていないのをいいことに、県民への説明や関係者への謝罪を回避する構えだ。だが、情報漏洩があったという事実を眠らせるわけにはいかない。ハンターは、入手した「告訴・告発事件処理簿一覧表」に記載のある人物や法人を確認し、情報漏洩があったという事実を告げた上で、記載内容の確認を求めていく予定だ。

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