永原譲二大任町長「100%起訴されない」に重大疑義|言葉を濁す顧問弁護士|問われる訴訟の正当性

 個人的な違法行為が原因で刑事告訴、告発された自治体トップが公費を使って反訴した「前提」が崩れる可能性が出てきた。

 田川郡内にある8市町村で構成する「田川郡東部環境衛生施設組合」(組合長:永原譲二大任町長)が整備を進める“ごみ処理施設”に関連する文書の情報公開を巡り、強要未遂があったとして田川市と複数の田川市議からそれぞれ告訴、告発された永原譲二大任町長が、虚偽告訴及び名誉棄損で反訴した問題に重大な疑義が生じた。

■「100起訴されない」で公費訴訟

 昨年6月23日、田川郡東部環境衛生施設組合が整備を進める“ごみ処理施設”に関連する文書の情報公開を巡って、田川市役所を訪ねた永原譲二大任町長が村上卓哉田川市長に「開示しないよう」強要。“言うことを聞かなければ両自治体の連携を止める”、“田川市のごみは受け入れない”、“あんた、4年間もたんよ”などと「脅迫」とみられる行為に及んでいた(既報)。

 指定暴力団の企業舎弟から首長に成り上がった永原氏による行為は、田川市民の暮らしを揺るがす卑劣極まりない「強要」「脅迫」。田川市議会の有志は強要未遂の疑いで刑事告発し、直接的な被害を受けた市は同じ容疑で告訴に踏み切った。

 これに対し永原大任町長は、2件の訴えが虚偽告訴及び名誉棄損だとして県警に反訴することを決定。“大任町として”公費を使って訴えたと主張し、大任町議会や田川郡東部環境衛生施設組合の議会で、経緯を説明していた。

 その主張の際、永原氏が依拠したのは町の顧問弁護士の「見解」。永原氏は、度々顧問弁護士が言ったという見解を披露し、公費を使った反訴の理由にあてていた。

 昨年9月29日に開かれた大任町議会全員協議会で永原氏は、「うちの弁護士の見解」と断った上で次のように述べていた。

 同年12月6日の大任町議会定例会最終目の一般質問では、反訴の件について「(10月23日に開催された東部環境衛生施設組合第4回臨時会において)永原町長は、弁護士が100%勝てると言っていると言われましたが、その根拠はどこにあるのか」と質した次谷隆澄町議会議員に、こう答弁した。

■顧問弁護士「勝たせますよっていうことは言ってない」

 町の顧問弁護士が「100%勝ちますよ」「100%町長は起訴されることはありません」と永原氏に申し向けて反訴の代理人を受任したのは事実か――?ハンターが注目したのはその点だった。

 事実なら、《弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない》《弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない》《弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない》と定めた『弁護士職務基本規程』の29条に抵触し、場合によっては懲戒請求の対象となるからだ。

 一方、「100%勝つ」あるいは「100%起訴されない」が事実でないとすれば、私的な行為で訴えられた永原町長が、公費を使って反訴した理由の根拠が崩れることになる。ハンターは今月2日、大任町の顧問弁護士を務めている加藤哲夫弁護士に事実関係を確認した。以下、記者と同弁護士のやり取りの概要である。

――ちょっと確認したい。
加藤弁護士:答えられる範囲でお答えしましょう。

――昨年9月29日の大任町の全員協議会の中で「弁護士は100%勝ちますよ、というような見解ですから」ということを述べられている。
加藤弁護士:ええ。

――次に12月6日の大任町議会定例会最終日。加藤弁護士が『100%町長は起訴されるということはありません』とおっしゃったことになっている。これは事実か?
加藤弁護士:ええと、100%……。いや、要するにあれでしょ。あのー、向こうの田川、田川市か、田川市が告訴した件のことを言ってるんでしょ?

――そうだ。
加藤弁護士:それは向こうの要求は無理ですよっていうことは言ってます。

――100%起訴されないと言ったのかどうか。
加藤弁護士:100%?

――永原町長が公の場でおっしゃっている。
加藤弁護士:あー。

――取材の趣旨をはっきりさせる。100%という加藤弁護士の発言が事実なら、弁護士職務基本規程の29条に抵触するのではないか、その点についての確認。
加藤弁護士:別に請け負ってるわけじゃないですけどね、私は

――「戦いましょう」とおっしゃったことになっている。「『必ず勝てるから戦いましょう』と言われた」と議事録にある。町長は、これを前提に大任町として訴えるということを縷々説明している。
加藤弁護士:だから、向こうのね、田川市の刑事告訴、あれは警察が受けることはないでしょうということ。向こうの要求は無理ですねというそういう話はしています

――「100%起訴されない」とおっしゃったかどうか。
加藤弁護士:100%っていうさ、100%っていう数字を使ったですかね?ちょっとそこら辺は記憶がはっきりしませんね。ただ受け手、私の認識としては、向こうの起訴、こうのなんていうんですかね、刑事告訴ですかね?

――100%っていう言葉を使ったのかどうか。
加藤弁護士:いやーだから、それはだから私の言ったことね、受け取り方じゃないですか?それは

――受け取り方?先生はおっしゃっていないということでよろしいか?
加藤弁護士:数字?どうだったかな?ちょっとそれは昔のこと何か月も前のことなんでね、その色々、まあなんていうかな?打ち合わせの段階でいろんな話するじゃないですか弁護士は。

――とはいえ弁護士職務基本規程29条がある。
加藤弁護士:なんて書いてます?29条。

・・・・・・条文読み上げ・・・・・・

加藤弁護士:だから言ってるじゃないですか。自分は必ずそうしますよとかね、勝たせますよっていうことは言ってないですよ。うん、だから別に私はこの件は向こうの田川のね、刑事告訴っていうのは無理筋ですよと、こういう話はしてますよ。

――私が聞いているのは、100%起訴されないとおっしゃったかどうか。
加藤弁護士:100%って数字は、ちょっと今、にわかに言われても私もわかんないですね。ちょっとそりゃいろんな話はするから、なんつったらいいのかね。受け取り方なんですよ。

――永原さんは100%を何回も公言している。
加藤弁護士:だから、それは永原さんがどう受け取るかっていうことだから。

――いや、これは大事なところだ。もし100%起訴されないという言葉を加藤弁護士が発していないとすれば、永原さんは事実とは違うこと、つまり虚偽を申し立てて公費支出を正当化したということになる。
加藤弁護士:いや、別にあれでしょ。公費支出っていうか、向こうが結局刑事告訴したことに対しては弁護士からやっぱり対応せざるを得ないじゃないですか。だから、100%と言ったからね、100%起訴されないからっていうことで、議会が通したのかっていうそれまた別の問題でしょ?

――「100%起訴されない」「戦いましょう」、言ったのかどうか?
加藤弁護士:うんまあ、戦うのはいいんだけど。向こうが言ってるのが無理筋ですよっていう言い方をしてますよね。だから無理筋っていう言い方を、100%ってことだと数字出したかどうかちょっと私も記憶があんまりはっきりしてないですね。だから、ただ、仮に100%勝てるって言ったって、それを請け負ったことにはならんでしょ100%勝つ、私の力で勝たせますと言ってるわけじゃないわけですから。だから元々そういう事案だと言ってるわけです。

――いや、「戦いましょう」と言ったとなっている。
加藤弁護士:そりゃ戦う。私が戦うよ。

――「100%勝てますよ」と言ったことになっている。議事録を読んでいただいたらわかる。
加藤弁護士:ちょっとね、あなた。だからいつの議事録です?私も聞いてみましょう。12月のいつ?ちょっと日にちを教えて貰えます?

――昨年の12月6日の町議会定例会最終日、9月29日の全員協議会。
加藤弁護士:なるほどね。わかりました。私はちょっともう1回記憶を辿ってみましょう。

――大任町の方に確認されたい。
加藤弁護士:まあ、うちはどうするか考えます。

 あやふやな言葉を並べるばかりで、「100%」という数字について完全否定できない加藤弁護士――。議事録を確認して「記憶を辿る」ということだったが、その後連絡はない。

 100%発言を以て事件を受任したのであれば弁護士職務基本規程違反。加藤弁護士が言う通り永原氏の受け取り方に問題があり、実際には「100%発言」がなかったとすれば、町長の虚偽説明に基づく公費支出の正当化である。いずれであるにせよ、住民を蔑ろにする不適切な経緯であることは確かだろう。

 議会の中で町長が明らかにした弁護士への着手金は110万円。原資は町民の税金だ。個人として暴走した町政トップが、自分の身を守る目的で、欲しいままに町費を使うことが許されていいわけがない。そもそも、田川市や市議らが訴えたのは、永原氏個人であって大任町ではない。

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