「新幹線発言」で問われる久留米商工会議所会頭の資格|会社破綻させ国民に7億円超の損害を与えた過去

佐賀県の反対で膠着状態となっている西九州新幹線長崎ルートについて、佐賀空港寄りの新たなルート案に関する提言を行い、物議を醸すことになった久留米商工会議所の本村康人会頭。唐突に打ち上げられたアドバルーンに対し、福岡県知事、JR九州社長、地元久留米の市長がそろって否定的な見解を示すという事態となった。

仮に新ルートが採用された場合、国、福岡県、JR九州が分割して受け持つことになる整備費は2,000億円をはるかに超える額。地方都市の商工会議所会頭が推進を表明した程度で、簡単に通る話ではない。そもそも、本村氏にこれだけ巨額な国民負担を強いる計画にものを言う資格があるとは思えない。

■経営者失格

2022年11月、福岡県の久留米商工会議所で会頭選挙が実施され、現職の本村康人氏が6選を決めた。3人の候補者によって争われた会頭選挙は、一回目の投票で過半数を制する候補がなく、筑邦銀行の頭取と本村氏による決選投票に――。3回目まで同数という異例の展開をみせた末、最後に5票差でようやく決着がつくという緊迫した状況だった。

会頭選挙で投票権を持つのは、会議所の議員が所属する市内の企業計100社で構成される「議員総会」のメンバー。つまり半数の議員は、本村氏の再選を望まなかったということだ。地元福岡6区の鳩山二郎衆院議員の後援会幹部として政治力にものをいわせてきた本村氏が落選寸前まで追い詰められたのは、同氏の会頭としての資質、資格に疑問符が付けられたからに他ならない。本村氏は経営者失格である上に、県民に多大の損害を与えた人物だからだ。

かつて本村氏が経営していたのは、久留米市内の酒類卸として3代続いた「本村商店」。2013年(平成25年)12月まで代表取締役社長を務めていた。同社は2013年頃から経営難に陥り、数年で事実上の倒産。2017年(平成29年)8月に酒類食品卸大手「イズミック」(本社:愛知県名古屋市)に買収され子会社となった。現在ある「本村イズミック」は、まったくの別会社だ。

当時の状況を知る複数の関係者が証言によれば、身売りするまでの間、本村商店が粉飾決算を行っていたことも分かっている。13年10月頃、経営危機が表面化したことで経営実態を調べていた金融機関によって、内部管理体制の不備、つまり「粉飾決算」が発覚。過大な債務を背負った中小企業などの事業再生を支援する「地域経済活性化支援機構(REVIC)」のスキームを利用した計画に沿って、イズミックへの事業譲渡が行われたという。

本村商店の代表取締役社長として実権を握っていた本村氏は、放漫経営の責任をとる形で2013年12月に退任。翌年6月には取締役も辞任していた。

粉飾決算は犯罪だ。刑事事件に発展してもおかしくない事例だったが、本村氏が久留米商工会議所の会頭を務めていたため、地場経済への影響を考えた関係者の配慮で、15年12月頃まで登記上の役員資格を有せず何の権限もない「会長」という肩書だけを残したという。

本村氏は、15年12月に実態不明の「久留米業務サービス」(本社:久留米市)の取締役に就任(2018年3月から代表取締役)。図々しくも、同社を代表する形で久留米商工会議所の会頭を続けている。

ちなみに、本村氏が代表を務める久留米業務サービスはホームページもなく、いつ行っても無人。2年間通って誰とも会うことができない状況が続いていたが、先月、初めて人がいる場面に出くわした。久留米業務サービスの者だという男性は、「会計処理をする時にだけ来ているから、普段は誰もいない」と言う。主な業務は何か尋ねたところ、「酒の小売り」という答えが返ってきた。ホームページもなく、本社でありながらいつも無人で実態不明の会社の代表が、30万都市の商工会議所の会頭――。呆れるのは記者だけではあるまい。

■会議所の政治利用

本村氏の非常識さは、別の分野でも発揮されてきた。久留米市長選挙が行われた2022年、ハンターの取材で、久留米商工会議所(本村康人会頭)が政治団体「日本商工連盟」の活動を装って会議所の組織や運営について定めた「商工会議所法」の規定に反する行為を行っていたことが判明。福岡県が同会議所の調査に入り、厳しい改善指導を実施する事態となる。会議所の政治利用を主導したのは、本村氏だった。

ハンターが問題視したのは、久留米市長選で元県議会副議長を推薦した同会議所の政治組織「日本商工連盟久留米地区」が、選挙向けの文書に久留米商工会議所の代表電話やFAXの番号を使っていたこと。会議所側は「使用料をとっている」と釈明したが、会議所が政治団体に便宜供与していることに変わりはなく、《商工会議所等は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行つてはならない》《商工会議所等は、これを特定の政党のために利用してはならない》と定めた商工会議所法の規定に反するものだとして厳しく批判する記事を配信した。

法令違反の疑いがあることを重視した県は、2度にわたって久留米商工会議所に立ち入り調査し、報道内容の確認を行って処分を決めていた。この折、辞任して当然の本村氏は会頭職に居座り、何の責任もとっていない。

■国民に与えた7億円超の損害

経営していた本村商店がつぶれようと、会議所を政治利用して県から厳しい指導をうけようと、本村氏はどこ吹く風で会頭職にしがみついてきた。しかし、同氏は、経営破綻させた本村商店の整理にあたって、銀行の預金者、銀行の株主、そして福岡県民に多大な損害を与えていたことが明らかとなっている。

ハンターは、旧・本村商店がかつて所有していた土地などの登記を1年かけて調査。2015年12月に関係者が事業再生計画に着手した時点での、金融機関及び福岡県信用保証協会への債務残高が約12億5,000万円に上っていたことをつきとめていた(⇒『久留米商工会議所本村会頭、放漫経営の実態|債権放棄で消えた7億円超|福岡県民が尻拭い』)。

旧・本村商店が所有していた物件は、旧本社、東櫛原町の土地、通町の土地、浮羽の倉庫などで、これらの登記内容などから判明した債権額と金融機関の債権放棄額は、およそ以下のとおりだった(*数字は四捨五入したもの)。

 本村氏の放漫経営によって消えたカネは約7億1,700万円。つまり、預金者と各金融機関の株主の資金に加え福岡県民の血税で本村氏の尻拭いをしたということだ。

最大の問題は、県信用保証協会が1億円もの損失を出したことで、何の関係もない福岡県民にまで迷惑をかけたという点だろう。国民に7億円以上の損害を与えた人物が、地域経済のリーダーの座に居座り続けているというのだから開いた口が塞がらない。

放漫経営と粉飾決算、事実上の倒産で県民に与えた多額の損害、商工会議所の政治利用――。一連の不適切行為を主導したのは他ならぬ本村氏だ。そのような人物が、2,000億円をはるかに超えるといわれる西九州新幹線の久留米経由新ルートの推進を公表したのだから、関係機関が相手にするわけがない。唐突かつ自分勝手なパフォーマンスに激怒する佐賀県の経済人が「だいたい、本村さんに新幹線整備について発言する資格があるのか疑問」とまで述べたのは、本村氏の所業を知っているからに他ならない。

実は、その本村氏を巡って地元久留米である情報が拡散、「怪しい動きだ」「カネの動きがおかしくないか」「倒産したくせに隠し金でも持ってたんじゃないか」などと詮索する人が増えている。詳細は次稿で。

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