永原譲二大任町長「し尿処理行政」私物化の実態(2)|業者許可、一方的に不許可・取消し
- 2024/5/31
- 社会
- し尿処理, 大任町長, 永原譲二, 田川地区クリーンセンター, 田川地区広域環境衛生施設組合, 田川市, 田川郡
し尿処理施設「田川地区クリーンセンター」の管理・運営を行うため田川市・郡の1市7町村で構成されている一部事務組合「田川地区広域環境衛生施設組合」の不当行為に対し、批判が広がっている。組合長は、日常的な「強要」や「強弁」といった暴力的な姿勢で周辺地域の支配者として君臨してきた永原譲二大任町長。永原氏は、処理場の管理・監督権を盾にして、住民はもちろん関系自治体にも相談せぬまま、一方的にし尿処理業者の受け持ち区域を変更、さらに複数の業者の業務許可まで取り消していた。なぜこうした無法が許されるのか、根拠とされる法令について調べてみたところ……。
■問われる「条例」と「規約」の整合性
田川地区クリーンセンターの管理・運営を行うため、同施設の稼動に合わせて設立されたのが田川地区広域環境衛生施設組合だ。設立は2021年。組合設立に伴い、「田川地区広域環境衛生施設組合廃棄物の処理及び清掃に関する条例」「田川地区広域環境衛生施設組合規約」「田川地区広域環境衛生施設組合廃棄物の処理及び清掃に関する条例施行規則」が、参加自治体の同意を得る形で制定されていた。
一方、し尿処理行政の根拠となる法律は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)と「浄化槽法」。一部事務組合を設立した場合の参加自治体の首長権限などについて規定しているのが「地方自治法」である。
暴走する永原氏側は「これらの法令に則っている」と主張するはずだが、一連の法令について精査していくと、整合性に欠ける部分が次々にみつかる。
まず、業者の許可権限についてだが、永原氏が業者の浄化槽清掃業許可を不許可にしたり、一般廃棄物収集運搬業の許可を取り消した際の根拠法は、浄化槽法と廃棄物処理法。不許可・取消しの理由となった両法の該当条文はまったく同じ文言で「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」というものだ。確認してみたが、許可取り消しを通知した段階では、「業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由」は明示されていなかった。しかも、前触れなしでの不許可・取消し通知。従業員を抱える企業の生き死ににかかわる処置なのに、乱暴極まりないやり方だと言うしかない。法律違反による不許可・取消し――。田川地区広域環境衛生施設組合の組合長だからといって、永原氏にそれほど大きな権限があるのだろうか?
そもそも、廃棄物処理法と浄化槽法は、それぞれ《一般廃棄物の収集、運搬又は処分を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を. 管轄する市町村長の許可を受けなければならない》(廃棄物法第7条)、《浄化槽清掃業を営もうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村長の許可を受けなければなない》(浄化槽法第35条)と規定しており、許可権限を有しているのは市町村長だ。本来なら、永原氏に許可権限はない。
永原氏は、地方自治法の《一部事務組合内の地方公共団体につきその執行機関の権限に属する事項がなくなつたときは、その執行機関は、一部事務組合の成立と同時に消滅する》(284条)に依拠して、「市町村長には許可権限が消滅しており、田川地区広域環境衛生施設組合廃棄物の処理及び清掃に関する条例によって組合長たる自分が許可の可否を決める」と言うのだろうが、同条例と「田川地区広域環境衛生施設組合規約」を検討すると、大きな矛盾が生じる。
2021年4月に施行された条例は、まさに、し尿処理行政における永原独裁を実現させるため制定された内容としか思えない。廃棄物処理計画から業者の許可・更新に至るまで、すべて「組合長は・・・」として権限を集中させているのだ。他県の同様の条例などを調べてみたが、ここまで「組合長」に権限を持たせたものはほとんどなかった。
永原氏が浄化槽清掃業許可を不許可にしたり、一般廃棄物収集運搬業の許可を取り消した際に依拠したのは、この条例の第11条《組合長は、一般廃棄物収集運搬業者が法又は条例に違反したときは、その許可を取り消し、又は期間を定めて、その事業の全部若しくは一部の停止を若しくは組合の施設への搬入の停止を命じることができる》と第16条《組合長は、浄化槽清掃業者が浄化槽法に違反する行為をしたときは、その許可を取り消し、又は期間を定めて、その事業の全部若しくは一部の停止を若しくは組合の施設への搬入の停止を命じることができる》の規定だ(*下の画像参照。赤い囲みはハンター編集部)。たしかに条例上は、永原氏に許可権限があることになっている。
しかし、ここで大きな矛盾が生じる。組合の運営は「田川地区広域環境衛生施設組合規約」に従って行わなければならないが、同規約では『共同処理する事務』として次のように規定しているのだ。
第3条 組合は,次の各号に掲げる事務を共同処理する。
(1) し尿処理施設の管理運営に関する事務
(2) し尿処理施設の総合調整に関する事務
組合に執行権があるのは「し尿処理施設の管理運営に関する事務」と「し尿処理施設の総合調整に関する事務」のみ。つまり永原氏は、組合の憲法ともいうべき「規約」にない、“業者の許可・不許可”という行為を行っているということだ。永原氏は「条例に従って許可、不許可をおこなっている」と強弁するに違いないが、規約にないことを条例化したこと自体が間違いだったのだ。
条例を制定した当時、田川市の市長は永原氏の義弟である二場公人氏。二場市政に、永原氏の意向が強く反映されていたことは多くの関係者の知るところだ。現在もそうだが、他の自治体の首長や大半の議員も永原氏の言いなり。条例と規約に整合性がないことを問題にするべきだったが、たいした議論もせぬまま、永原氏が企んでいた“し尿処理行政の私物化”を許すことになる条例や規約、さらには後述する「規則」の制定を許していた。各自治体の議員や首長は猛省し、し尿処理に関する条例、規約等の見直しに着手すべきだろう。それが住民のためだ。
永原氏による「規約」を無視した行為は、まだある。田川市・郡に混乱をもたらしている、「平準化」と称する、し尿処理業者の区割り変更である。次稿で、その点について詳述する。