裏金問題と向き合えない高市早苗氏の「政治とカネ」

9月9日、高市早苗経済安保担当相が総裁選への出馬を表明した。「サナエあれば、憂いなし。」というスローガンを背景に高市氏は、「私の究極の使命は、国民の皆様の生命と財産を守り抜く、領土領海領空、資源を守り抜くこと。そして、国家の主権と名誉を守り抜くこと」「国会議員はクリーンであること」と威勢よく語った。

2021年10月の総裁選では安倍晋三元首相の全面的な支援もあり、岸田文雄首相、河野太郎デジタル相に続いて3位に食い込んだ高市氏。だが、今回の出馬表明は7番目と出遅れた。

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「もっと早くにできればよかったのは事実。遅くなったのは推薦人20人がなかなか集められなかったからだ。ある意味、他の候補の出馬会見での主張が聞け、それが生かせたからよしとするしかない」と高市陣営のある議員は話す。

他の候補とは違い、会見の始めから1時間ぶっ通しで喋り続けた高市氏。だが、裏金議員について質問が及ぶと「自民党の処分はすでに決まっている。(次の選挙での)非公認含めて党内で議論して、調査、決着している。(他の候補者のような)ちゃぶ台返しはいたしません。ひっくり返す行動はとりません」と見直しなしを強調。裏金議員は“不問”とするという姿勢を鮮明にした。

それもそのはず。高市氏を応援する議員を見ると、問題のある連中が目立つ。「キックバックは文化」ととんでもない“失言”で批判をあびた裏金60万円の鈴木淳司元総務相。裏金2,954万円で党の役職停止処分となった三ツ林裕巳衆議院議員。同じく裏金1,564万円の杉田水脈衆議院議員、560万円の山田宏参議院議員、411万円の西田昌司参議院議員、236万円の佐藤啓参議院議員、188万円の谷川とむ衆議院議員と、安倍派の裏金議員が名を連ねる。裏金議員なくしては推薦人の確保ができなかったということだ。

高市氏同様に「保守」が売り物の小林鷹之経済安保担当相を支援している議員が次のように話す。
「小林さんも裏金議員は処分済みという発言でえらく批判された。どうしても安倍派が頼りになるから後退した発言になりますよ。前回、高市支援だった議員が、かなりこちらに来てくれている。そもそも、高市さん自身がお金にクリーンじゃないから、裏金議員をどうこうなんて言えないでしょう」

確かに、高市氏の「政治とカネ」を巡っては何度も問題になってきた。同氏の政党支部「自民党奈良県第2選挙区支部」(以下、第2選挙区支部)が県選管に提出した2021年分の政治資金収支報告書には、今年6月に奈良県警が恐喝容疑で逮捕した人物の経営する会社から96万円の寄附を受けたとする記載がある。

それだけではない。2017年10月、同支部は警察庁や防衛省と取引のあった企業から30万円の寄附を、2021年10月には当時国の公共事業を受注していた会社から50万円の献金を受けていた。いずれもマスコミで報じられ、返金を余儀なくされている。

2021年には、自民党本部から150万円の政治資金を受領しながら同支部の報告書には不記載だったことも判明して修正。さらに同年、同支部が開いた政治資金パーティーで自民党の奈良県山添村支部がパーティー券22万円分を購入していたにもかかわらず、これも不記載となっていたことが分かっている。

問題は、山添村支部の対応だった。共産党の「赤旗」が山添村支部の問題を報じたとたん、同支部は、購入したパーティー券の金額を22万円から20万円へと報告書を修正したのだ。しかし、同支部は2021年の政治資金収支報告書に22万円と明記してあり、ゆうちょ銀行の送金明細も添付されていた。

21年の山添村支部の支出総額は63万円あまり。22万円といえば3割以上を占める。書き間違いは考えにくい。どう見ても「22万円」のパーティー券購入が真実だった。自民党奈良県連の関係者がこう話す。

「山添村支部は、赤旗をはじめとするメディアに追及されたとたん、政治資金収支報告書を修正しました。高市さん側の言い分そのままの内容です。山添村支部の関係者からは『そうせざるを得なかった』と苦しい胸の内を聞いたことがあります。弱いものに責任をとらせるような高市さんに対する批判は地元の奈良県でも少なくない」

山添村支部の問題で高市氏は、神戸学院大学の上脇博之教授から政治資金規正法違反容疑で刑事告発されている。告発状には《高市事務所の主導のもと行われたに違いない》《「山添村支部」が自ら進んで被告発人高市早苗・衆議院議員側を庇って修正したのか、それとも、被告発人高市早苗衆議院議員側からの何らかの圧力を受けたので修正したのか。(中略)弱い立場につけ込んだ暴挙以外の何ものでもないと言わざるを得ない》と厳しい言葉がつづられている。

高市氏は2008年1月24日の自身のブログに、《1円からの領収書保管》というタイトルで、改正政治資金規正法改正により1円以上の支出について領収書の保管が義務付けられたことについて触れている。《私の事務所も含めて大抵の国会議員の事務所では、数円単位の支出であっても、レシート等に基づいて全て帳簿に記録し、保管していた》とした上で、《政治資金の透明化は必要で、私自身も、常に正確な収支報告をするべく精一杯の努力をしてきたつもりです。もちろん「改正政治資金法」も遵守すべく、スタッフともども対応していきます》と書き込んでいた。だが、山添村支部の問題を見ると、法律遵守どころか弱いものを「悪者」に仕立てて保身を図った可能性さえある。

世論調査では、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相らと競う状況の高市氏。だが「政治とカネ」という視点から見ると、とても総理総裁が務まる人物とは思えない。

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