返ってきた「告訴・告発事件処理簿一覧表」|問われる鹿児島県警によるデータ削除の正当性

ハンターへの内部告発を「情報漏洩」だと指弾し、告発によってもたらされた文書=「告訴・告発事件処理簿一覧表」(以下、「処理簿一覧表」のデータを削除した鹿児島県警。一方、同じ方向性で事件捜査にあたったはずの鹿児島地検は、プリントアウトされた10数枚の処理簿一覧表をそのまま返却してきた。任意であることを告知しなかった県警によるデータ削除の正当性が問われている。

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今年4月8日、地方公務委員法違反事件の関係先としてハンターの事務所に家宅捜索(ガサ入れ)を行った鹿児島県警は、いったん押収したパソコンを返却する際、問題となった処理簿一覧表のデータを削除した。

データ削除の理由は「流出すると大変なことになりますから」。削除に応じるか否かが「任意」であるとの説明はなく、有無を言わさずの対応だった。この時、県警は、自分たちにとって不都合な文書――特に再審請求や国賠訴訟で、警察組織にとってプラスにならない文書――の廃棄などを促した「刑事企画課だより」の画像も削除している。

ガサ入れ当時に押収された12点の物品の中にあったのが、たまたま残していた10数枚の処理簿一覧表の写し。原因となった事件の裁判が終わっても未返却のままだったのが、この処理簿一覧表の写しを綴じた「鹿児島県警流出文書」とタイトルを付けたファイルとハンターの記者の名刺の2点だった。

県警が「流出すると大変なことになる」と言ってパソコン内のデータをすべて消した以上、同じ捜査を行った検察も当然ファイルの中身を廃棄するものと思っていた。ところが8月22日、鹿児島地検の事務官から電話。事件が終わったので、2点の押収品を返却するという。

県警の強引なデータ削除を考えると、検察も「処理簿一覧表は処分します」と宣言するのかと思いきや、「検察官としましては、事件に関係したものですので、中願寺さんの方が、もういいですよとおっしゃっていただければ、こちらのほうで処分させていただきたいと考えているんですけども……」。さすがに警察とは違う対応だったが、記者が「処分」を断ったのは言うまでもない。取材過程で得た裏付け資料を、「捨てて下さい」と言うバカな記者はいないだろう。後日、戻ってこないだろうと諦めていた処理簿一覧表のファイルが郵送されてきた。それが下の写真である。

 

処理簿一覧表の処理について、検察は一応こちらの意向を確かめた。しかし何度も報じてきた通り、鹿児島県警は「よろしいですね」と、あたかも公式に認められているかのような言い方で記者の同意を取り付け、ほとんど強制的にパソコンのデータを削除した。この際県警は、同意しなかった刑事企画課だよりも強引に削除した。データ削除の一連の過程で、応じるか否かが任意であることを告知していなかったのは確かで、行為の正当性を疑わざるを得ない状況だ。県警は削除、検察は返却――どう説明するのか?

<中願寺純則>

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