鹿児島県公安委員会の機能不全

 鹿児島県警は昨年9月、2021年に起きた鹿児島県医師会の男性職員による強制性交事件に関するハンターの質問取材に回答を拒否した。同様の質問を行った他のメディアには回答しており、県警の腐敗を厳しく追及してきた本サイトだけを不当な扱いで排除した形となっていた。同年11月、県警の方針を不当とみて県公安委員会に抗議文を送付し見解を求めていたが、5カ月経った現在も連絡さえない。鹿児島の公安委員会は機能不全に陥っている。

■強制性交事件に関する県警の取材拒否

 鹿児島県警察本部総務課広報係あてに送ったのは、2021年秋に発生した鹿児島県医師会の男性職員(22年10月に退職。以下「男性職員」)による強制性交事件に関する質問書だった。質問の概要は以下の通りだ。

・鹿児島県警中央警察署が、被害女性の告訴状提出を事実上の門前払いにしたのは事実か?

・男性職員が、県警の元警部補だった父親と中央警察署を訪れ、当該事件について相談したのは事実か?また、その際、父親の元警部補は同席していたか?

・男性職員が被害女性の雇用主を訴えた件の取調べで、男性職員の父親が同席したことはあるか?

・鹿児島県医師会の幹部(当時)が、当該強制性交事件について鹿児島県警の警察官より「刑事事件には該当しない」、「暴行と恐喝で負けることはない」などと申し向けられた旨を発言しているが、県警側がこうした発言を行った事実はあるか?

 質問取材の目的は、これまでハンターが報じてきた県医師会の男性職員による強制性交事件を巡り、捜査を担当した鹿児島中央署が、告訴状提出に出向いた被害女性を門前払いにしたことや、男性職員と元警察官の父親が事件発覚前に同署に相談していたか否かの確認だ。もう一点、県医師会の池田琢哉前会長や大西浩之副会長(前・常任理事)が男性職員から聞いたとしていた県警の見立て――「刑事事件には該当しない」、「暴行と恐喝で負けることはない」――が実際に警察側から発せられたものかどうかを確かめる必要があった。

 これに対し県警は、「組織として回答しないことを決めた」という訳の分からない理由で取材拒否。しかし質問内容は、県警が県議会総務警察委員会における質疑の中で認めたものばかりで、事件性がないとの県警の見解については、県医師会の弁護士が会見で「男性職員からそう報告を受け、(池田)会長に伝えた」などと明言していた。

 ハンターが質問書を送付した当時、週刊金曜日のウェブ版が『鹿児島県警、強制性交事件もみ消し疑い 元警察官の父親が相談後、警察署が女性の告訴状受理拒否』という見出しで、強制性交事件に関する記事を配信しており、ハンターの質問対象となった事項が開示された情報であることは明らかだった。

 不当な取材拒否を受けてハンターは、昨年11月に鹿児島県公安委員会に対して「苦情申し立て」を郵送。公安委員会としての見解を求めていた。申し立てに記した「抗議の趣旨」を以下に示す。

【抗議の趣旨】

 質問内容は、何らかの形で事実であることが明らかになったものばかりで、県警はすでに県議会総務警察委員会での質疑の中で「門前払い」を「受け渋り」という言葉で認めていました。また、男性職員と元警察官の父親が、2021年の12月に中央署に行って事前の相談を行っていたことも、8月6日の県議会質疑で県警側が認めています。

 事前相談とその時の「事件性なし」という結果については、県医師会が6月27日に開いた記者会見の席上、同会の顧問弁護士である新倉哲朗弁護士が「男性職員からそう報告を受け、(池田)会長に伝えた」などと明言しており、県警が、門前払いや事前相談の実態を隠さなければならない理由は見当たりません。

 そもそも、ハンターが質問書を送付した8月27日、週刊金曜日のウェブ版が「鹿児島県警、強制性交事件もみ消し疑い 元警察官の父親が相談後、警察署が女性の告訴状受理拒否」という見出しで、強制性交事件に関する記事をウェブ上で記事を配信。その記事は、2021年12月に男性職員が相談のため中央署に出向いた際、同席者が元警察官の父親と弁護士だったことを県警が初めて認めたと報じるものでした。元警察官の父親が同席したという事実が、開示された情報だったことは明らかです。

 さらに県警は、同様の質問を行った新聞社にも回答しており、具体的な理由も述べずに、「組織の判断」などという曖昧な表現をもって、弊社の質問取材にのみ取材拒否をすることは、著しく公平性を欠くものと思料いたします。

 また、当然に説明責任を果たすべき事案について報道機関ごとに対応姿勢を変えることは、形を変えた不当な言論弾圧だと言っても過言ではないと考えます。

 以上の点について苦情を申し立てると同時に、県公安委員会の見解をおうかがい致します。

 質問書の日付は令和6年11月10日。5か月ほど経った現在も連絡さえない。今月初め、どのような扱いになっているか尋ねたが、「やっています」程度の返答だった。機能不全ということだ。

■県警の追認機関

 同委員会が県警の追認機関となっていることは証明済みだ。2023年2月に鹿児島県霧島市で起きたクリーニング店で働く20代の女性に対するストーカー事件を巡っては、ハンターの取材や県議会質疑などから、事件捜査の初動を担うはずだった霧島署が「苦情・相談等事案処理票」のデータを消去したり、犯人が映っているはずの防犯カメラ映像を隠滅するという手口で、事実上の事件もみ消しを図っていたことが分かっている。しかし、県公安委員会は、この件についての被害女性からの「苦情申し立て」に対し、不当捜査の実態を隠した虚偽ともとれる県警の言い分を、疑うこともなく容認し、被害女性に通知していた(*既報)。鹿児島の公安委員会はまるで県警の追認機関。この組織に、警察を管理する能力があるとは思えない。

 ちなみに、霧島ストーカー事件における苦情申し立てに対する回答にかかったのは、わずか24日間。前述したように、ハンターの苦情申し立てに対する回答は5カ月経ってもない。理由は何か?

(中願寺純則)

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

最近の記事一覧

  1.  警官不祥事のもみ消しを指示した疑いがある鹿児島県警の前本部長野川明輝氏。その野川氏が、保身のため犯…
  2.  鹿児島県警や北海道警における警官不祥事を追及してきたが、島根県警でも“ブラック警官”の存在が明らか…
  3. 2015年に全国3例目になる訪庁者手荷物検査を始めた福岡高等・地方・家庭・簡易裁判所が、丸10年が経…
  4.  森友学園では幼稚園児に毎朝、君が代を歌わせ、戦前の教育勅語を復唱させていた。安倍晋三首相の昭恵夫人…
  5. ある自民党の幹部が、「うちもいつか、文春砲でやられますね」と暗いトーンでつぶやいた。手にしていたのは…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る