自民系出馬予定者に「政治とカネ」|今村寿人元田川市議側に公選法違反の疑い|「事務所費」巡り禁止された寄附の可能性

活動実態を隠して政治資金収支報告書に収入と支出を「0」と記載していた今村寿人元田川市議の支援団体「いまむら寿人後援会」が先月30日、リーフレット印刷費を主な支出とし、それに見合う収入を記載する形で報告書を訂正していた。自民党の地域支部から推薦を受けた今村氏が県議会議員田川市選挙区の補欠選挙に出馬することを表明したのは5月13日。直前の報告書訂正は、政治資金規正法に違反する行為(虚偽記載)をごまかすためとみられてもおかしくないタイミングだ。田川市内に頒布されたリーフレットの支出とそれを賄った収入を表に出したものの、活動に使用されたことが明らかな「事務所費」などは未計上。報告書自体、政治資金規正法上の「虚偽記載」が疑われる状態が続いている。

問題なのは「事務所費」の扱い。ここに来て、後援会の事務所費を賄うため、今村氏自身が禁止された後援団体への寄附を行っていたことが判明、公選法違反が強く疑われる事態となった。

■依然として政治資金規正法違反の状態

前項で示したように、確認されている今村陣営の印刷物はリーフレットと名刺。リーフレットの印刷費103,125円は、先月30日に加筆修正する形で報告書に記載されたが、事務所費についての支出は一切計上されていない。名刺の印刷費については「その他の支出」として記載のある「81,860円」に含めたようだが、他にも記載すべき支出があった可能性が否定できない。下は、2023年に行われた田川市議会議員選挙の時の、今村陣営関係者によるSNS投稿の画面である(読者提供。画像の修正はハンター編集部)。

揃いの陣営ジャンパーを着ているのは、ウグイス嬢をはじめとする今村陣営の選挙スタッフだ。これらの人たちの人件費や活動費は、何故か一切計上されていない。下は政治活動中の今村氏がフェイスブックに投稿した写真だが、画像にあるのぼり旗の費用も支出された形跡がない。

■「後援会事務所」は賃借物件

だが、最大の問題は「事務所費」である。訂正された政治資金収支報告書でも、後援会の事務所費は「0」のままで、1円も計上されていない。(*下の画像参照)

届出上の主たる事務所が今村氏の自宅であるため、通常なら事務所費が「0」でも構わない。だが、いまむら後援会は一昨年の市議選の前後、今村氏の自宅にある届出上の事務所とは別の場所に、実質的な活動拠点となる「後援会事務所」を設置していた。

前回の配信記事で示した通り、市議選当時の印刷物やフェイスブック上への投稿画像に明記されているのは「いまむら寿人後援会事務所」。事務所を設けていたことは明らかで、後援会が作成した大量の印刷物が頒布されたのも事実だ。

当然、「いまむら寿人後援会」の政治資金収支報告書にはそうした活動実態を示す収入と支出の記載がなければならない。ところが、同団体が当初県選管に提出した令和5年分(2023年分)の収支報告書では、収入も支出も「0」。後援会事務所を借りたことを証明する記載はなかった。“先月30日に訂正された政治資金収支報告書”にも後援会の事務所費は計上されていない。

ちなみに、後援会事務所の住所について登記簿などを調べてみたが、土地も建物も今村氏の所有ではない。つまり、賃借したとみるのが普通。では、後援会事務所の家賃は、どのような形で支払われたのかだろう?

答えは一昨年の市議選で今村氏側が田川市選管に提出した選挙運動費用収支報告書の記載と添付された領収書にあった。下が報告書の該当ページと領収書の写しだ。

今村氏に土地と建物を貸したのは福岡県直方市の企業で、領収書の記載が事実なら、「今村氏個人」が令和5年4月11日に「354,000円」を支払っていたことになる。金額から推定して、これは2023年4月16日告示、23日投開票の8日間という短い日程で行われた市議選期間中だけの賃料とは思えない。告示日以前からの物件賃料とみなすのが妥当だろう。

ハンターが市議選当時に確認していた当該事務所を使った「いまむら後援会」の活動時期は、2023年1月頃から5月初旬までの間。少なくとも5ヵ月分の後援会事務所家賃が支払われていなければならない。

今村氏が選管に提出した「選挙事務所設置届」の住所と、リーフレットや名刺に記載されていた住所は同一だ。これは、事前の後援会活動の時期から投開票日まで、同じ物件が使用されていたことを示している。政治資金収支報告書に後援会事務所の支出が記載されていない以上、当該支出に見合うのは選挙運動費用として計上されていた「354,000円」ということになる。後援会の事務所費を選挙運動費用として計上するという、“噓の報告”をした可能性が出てくるのは言うまでもない。

証拠はまだある。下は選挙運動費用収支報告書に添付された領収書の写し。今村氏が『水道代 950円』を支払った先は、田川広域水道企業団ではなく「いまむら寿人後援会」だったことが認められる。いまむら後援会が、今村氏本人から「後援会事務所」を借りていたことの証しだ。

実はここで違法性が問われることになる。

今村氏個人が借りた物件を後援会にまた貸ししたとする。すると賃料分は今村氏から後援会への『無償提供=寄附』とみなされる。後援会の収支報告書に家賃支出に関する記載がない以上、この見立ては揺るがない。

公職選挙法は、市町村会議員の任期満了日から遡って90日前の時点から当該選挙の期日まで、政治家が自身の後援団体に寄附することを禁じている(公選法199条5)。前回市議選を迎えた市議らの任期満了日は2023年5月1日。35万4,000円が支払われたのは4月11日となっており、後援会への寄附は違法だったことになる。違法性が認められれば、寄付者本人が50万円以下の罰金となる。

26日、福岡県選挙管理委員会はハンターの記者に対し、「一般論」と断った上で「通常、対価を支払うことが相当であるようなものを無償で提供することは、法が禁止する寄附にあたる可能性がある」と話している。

“違法看板”を多数設置したり(既報1)、解散状態の政治団体を名乗って活動を行う(既報2)など法令無視の姿勢が顕著な今村氏。政治資金規正法違反(虚偽記載)に加え、公選法違反まで疑われる実態を知った関係者が、刑事告発するとの情報がある。

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