極右の杉田水脈と歪んだ歴史観の西田昌司を公認|自民党の現在地
安倍晋三政権以来、自民党から「中庸」の精神が失われた。日本の戦争責任を否定し、少数民族や沖縄を軽んずる姿勢こそが「保守」だという考え方がまん延する状況だ。旧安部派を中心とする右寄りの政治家たちは、口で「人権」を尊重すると言いながら、実際には平気で少数派を誹謗中傷する。代表的なのが西田昌司参議院議員と杉田水脈元氏。自民党は、この二人を夏の参議院議員選挙で公認することを決めた。
■沖縄の歴史をねじ曲げる西田昌司
今年改選を迎える自民党の西田昌司参議院議員(京都選挙区)が、沖縄戦で犠牲になった「ひめゆり学徒隊」の慰霊碑『ひめゆりの塔」の展示内容を巡り、次のように発言して世論の反発を買った。
批判を受けて謝罪に追い込まれたが、「歴史を書き換えた展示内容」とする自説については「事実は事実」として撤回を拒んだ。歴史を書き換えようとしているのは西田氏自身。いわゆる“歴史修正主義者”である同氏の謝罪は口だけだったということだ。旧安部派の沖縄蔑視は今に始まったことではないが、この歴史修正主義者を自民党は公認する。沖縄は23日、戦後80年の節目となる「慰霊の日」を迎えた。
■良識疑う杉田氏の言動
もう一人、歴史修正主義者が今夏の参院選に自民党公認で出馬する予定だ。杉田水脈氏である。
杉田水脈とは一体何者なのか――。彼女の経歴をさらってみた。2012年の総選挙で日本維新の会から出馬し、比例近畿ブロックで復活当選。次世代の党に移った2014年の選挙では落選し、自民党公認を得た2017年の総選挙において比例中国ブロックから出馬し、2期目の当選を果たしている。
これまでの発言や主張を確認してみたが、所属してきた政党の色そのもの。「南京大虐殺も従軍慰安婦も嘘」「憲法改正に賛成」「国防軍創設」「保育所増設に反対」「総理の靖国参拝賛成」などなど、ウルトラ右翼としか言いようのないものばかりだった。「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」という過激な発言もある。なぜこうした“狂気を宿した人物”が国会議員のバッジをつけているのか分からないが、自民党そのものが、杉田氏の暴論を容認する組織に成り下がったということだろう。これは多様化ではなく、安倍政権以降に顕在化した“歪み”とみるべきだ。
杉田氏は2016年、スイスで開催された国連女性差別撤廃委員会に参加したアイヌや在日コリアンの人たちについて、「アイヌの民族衣装のコスプレおばさん」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」とブログで発信。これが2023年に法務局から「人権侵犯」が認定された。
しかし同氏の中傷は止まず、X(旧ツイッター)の投稿で、「日本に存在しない差別を話す人たち」と追い打ち。人権意識が欠如しているとしか思えない杉田氏は同年、アイヌ文化振興事業の関係者が補助金を受けていることについて「公金チューチュー」と誹謗中傷し問題になった。
その後、自身が安倍派政治資金パーティーの裏金1,564万円を得ていたことが発覚。SNS上では「裏金チューチュー」などと大炎上した。
このとんでもない人物が、世に知られるようになったのは2018年。月刊誌「新潮45」への投稿だった。
*2018年、月刊誌「新潮45」への寄稿文で
同じ年に海外の番組に出演した杉田氏は、元TBS記者の山口敬之氏に伊藤詩織さんが性被害を受けたことについて、次のように言及している。
*2018年、英国BBCの番組の中で
2020年には、自民党の部会で以下の通り発言していた。
*2020年9月25日、自民党の部会で
女性でありながら“女性の立場”の視点ではなく、人として信じられない発言を繰り返す杉田氏。自民党がこの人を公認するのは、いわゆる「右派」への配慮なのだという。するとこの国の「右派」とは、歪んだ歴史観を持ち、人権を軽んずる人々の集まりということになる。こんなことを書くハンターは、「左翼」と呼ばれるのだろう。
政治不信が高まるのに反比例して、自民党だけでなく、多くの政党から「中庸」の精神が失われていく。
(中願寺純則)