北海道猟友会、1年間で会員増279人 定時総会では鳥獣法改定後の課題指摘も

北海道内の狩猟免許所持者が参加する一般社団法人 北海道猟友会が昨年度の1年間で会員を279人増やしていたことがわかった。ライフルや散弾銃などを扱うことができる「第一種銃猟免許」を持つ会員が230人増となったほか、同免許を含む女性会員の増加も顕著で、全国的にも珍しい動きという。報告があった定時総会では、会長挨拶で鳥獣保護法改定後のヒグマ駆除問題に「検討すべき課題が多い」との指摘があり、会員の不利益にならない制度づくりの必要性が訴えられた。

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6月16日午後に札幌市内で開かれた定時総会での報告によると、道猟友会では昨年度319人の退会者があったが、新入会員はそれを上回る598人に上り、全道の会員総数は差し引き279人増の計5,749人となった(前年度比 +5.1%)。

 このうち女性会員が前年度から42人増の363人を占めるほか、若い会員の増加で平均年齢も8カ月ほど下がって55.6歳に若返ったといい、挨拶に立った堀江篤会長は「北海道が全国に誇れる成果」と喜んだ。

「これも各支部の勧誘活動などの尽力のおかげ。新入会員の技術指導などを早急に実施し、安全を優先する優秀な会員を育成したい。これからは若い会員が中心となって組織を育てていく必要がある」

会員増を報告した専務理事は「マスコミはよく猟友会の会員減少や高齢化を話題にするが、少なくとも北海道猟友会にはそれは当てはまらない」と指摘、とくにライフルなどの銃猟を認められる「第一種」免許所持者が230人増となった結果について「こんな都府県はほかにない」と話す。

「第一種が増えている都道府県は北海道を含めて3カ所ほどしかなく、増加の幅も他県では数人ほどに留まっている。200人以上増やしたのは道猟友会だけで、現在4994人いる第一種所持者のうち306人が女性というのも全国的に珍しいこと。会長が言うように、誇れる状況と言っていい」

一方、ヒグマなどの有害鳥獣の駆除をめぐって鳥獣保護法が改定され、夜間や住宅街での発砲が可能になる状況について、堀江会長は「検討すべき課題が多く潜在している」と指摘。「会員の安全を確保し、不利益を蒙ることがないよう、制度に対する考え方を整理していく」と話した。総会後の取材に対しては、改めて「国民の安全を守るのは誰なのか」との疑問を呈した。

「改定後の鳥獣法に基づく駆除が無事に終わればいいですが、万が一何かがあった時、たとえば跳弾で人や建物が危険な状況になった、あるいは怪我をしたといった時の、警察や行政の対応を危惧しています。いくら鳥獣法が改まっても、現場では警察官職務執行法に基づく警察の指示がないと発砲できないのが現実。その現場では、もともとボランティアの立場で駆除に参加するハンターが最前線に出て、警察はその後ろから指示を出している。それで何か事故が起きたら、発砲したハンターが責任をとるんですか、ということです。国民の安全を守るのはボランティアの猟友会ではなく、警察や行政といった役所のはず。現場では警察が我々の前に出て指示を出すべきで、鳥獣法だけでなく警職法や銃刀法、刑法、民法との関連も明確にし、ハンターが不利益を蒙らないような体制をつくる必要があります」

本サイトで繰り返し報告している通り、北海道では実際にヒグマを駆除したハンターが公安委員会に銃を取り上げられる事件が起きている。これを不服とした当事者が公安委を訴えた裁判では、一審の札幌地裁がハンターの主張を全面的に認めて銃所持許可取り消し処分の撤回を命じる判決を言い渡したが、二審の札幌高裁がこれを覆す逆転判決を出したため、原告が最高裁に上告を申し立てているところだ(既報)。高裁判決からまもなく8カ月が過ぎる中、未だ最高裁の判断は伝わっておらず、現時点で判決は確定していない。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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