「まさにドタバタ劇のお手本。こんな党が政権をとるぞと言っていること自体が滑稽だ。不倫ばかりの政党が政権なんてとれるわけない」――そう苦々しく話すのは、ある国民民主党の国会議員。手にしているのは、国民民主党から「公認内定」を外された山尾志桜里氏の「反論文」だ。「103万円の壁」で急上昇した支持率が下げ止まらない同党の関係者に取材した。
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6月13日、東京都議選がスタートした。つい1か月前まで支持率上昇で勢いのあった国民民主党は、一気に20人の候補者を擁立。前回2021年都議選での当選者ゼロから大躍進することが確実視されていた。ある情勢調査では、「12人が当選圏内」という結果さえ出ていた。
しかし参院選の公認を巡る“山尾劇場”が始まると支持率は急落。同党の都議選候補者からは「以前、駅前でチラシを配っていると10人のうち7人から8人は受け取ってくれた。それが山尾劇場のおかげで、見向きもされなくなっている」と嘆く。
5月14日、国民民主党は山尾氏や日本維新の会に所属していた足立康史元衆議院議員、須藤元気元参院議員らを公認候補として全国比例で擁立することを発表。その直後から、SNS上なので批判の嵐が吹き荒れた。最も炎上したのが、不倫疑惑でいったん政界を引退したとみられていた山尾氏だった。
今月10日会見を開いた山尾氏は冒頭、不倫騒動、高額のガソリン代計上、JRパスの私的利用を謝罪。参加者からの質問の大半は不倫騒動に費やされた。
「私生活についての報道は、私の未熟さで申し訳なく思う」と何度も頭を下げた山尾氏。不倫騒動があった8年前に記者会見した際の「不倫ではない」という主張も変えなかった。
さらに突っ込んで聞かれると「新たな主張をすることは、ご容赦いただきたい」と詳しい説明し説明を拒む山尾氏。不倫相手とされた男性の妻が自死していると報道されたことについて「(男性の)お子さんは遺児となっている。お子さんのことを考えたことがあるのか」、「そういう対応の人が人にやさしい国作りと声をあげているが誰が信じるのか」と厳しい質問が続いたが、山尾氏は対応を変えようとしなかった。
2時間半の記者会見中、1時間ほどが不倫についての質疑という異例のもの。「政治家ではなく、芸能人のスキャンダル会見のようになってしまった。どこが出馬会見なんだと後援会の幹部からもきつく叱られました」と前出の同党議員は顔を曇らせる。
翌日6月11日、国民民主党は両院議員総会を開催。唐突に山尾氏の「公認内定」を取り消した。
「“山尾氏の公認を取り消して”という声があるが、弁明の機会も必要だとなり記者会見をやらせたが、疑惑は払しょくできないままだった」――榛葉賀津也幹事長は公認内定取り消しの理由をそう説明した。
すると12日、山尾氏は声明を発表し反論する。
《玉木雄一郎代表より、国民民主党からの国政復帰のお誘いを頂戴していました。出馬要請を受け、ご要請をお受けする決断をしました》と国民民主党からの誘いであったことを強調。出馬については、4月23日に「公認が決定した」と連絡がきたが「記者会見は見送る」と説明されていたことを明記。《代表・幹事長同席を希望しましたが、(出馬)辞退会見であれば同席するとのお答えは大変残念でした。ただ、私には辞退の意思はありませんでしたし、会見するというのは自分の言葉を守る責任があったので単独で臨んだ》として会見前から、玉木氏らが山尾氏に出馬辞退を働きかけていたことを暴露した。
「山尾さんの声明文を読んで呆れました。玉木氏ら党幹部は、出馬させたくないと考えるようになっていた山尾さんに、わざわざ記者会見させたというのです。会見の態度からも分かるように、山尾さんが自分の選挙のマイナスになる“不倫”を認め、説明するなんてことはまずありません。山尾さんも、党にきちんと連絡もせず事務所開きをしたり、記者会見前に産経新聞だけのインタビューに応じて“提灯記事”と思われるようなものを出させるなど問題行動は少なくありませんでした。それを理由にして、記者会見前に公認内定を取り消せばよかったんです。問題を先延ばしにしてことで国民民主党全体が大きな被害をこうむる結果になっています。玉木代表がしっかり先を見据えて決断していれば、山尾氏もここまで炎上することはなかった」(前出の同党議員)
公認内定を取り消された山尾氏は国民民主党に離党届を提出。玉木氏は自身のXに《有権者はじめ、党内外からの理解と信頼を十分に得られているとはいいがたく、最終的に正式な公認への移行を見送った》と投稿した。だが、昨年11月に不倫が発覚して謝罪に追い込まれた玉木氏についても厳しい視線が向けられている。
「山尾さんに対する理解、信頼がどうのという前に、玉木代表自身が自らの不倫についてきちんと説明すべき。でも、やっていない。お相手の女性はどうなったのか?山尾さんのことばかり言うなという声も党内ではある」(前出・国民民主の議員)
山尾氏は声明文で《信頼が得られないとのことですが、公認取消という公党の判断理由として有権者に説得力を持つものなのか疑問もあります》《党の都合で排除されてしまう政党では、志ある方も今後立候補に躊躇してしまう》と反論。さらに、《(私は)国家のために力を尽くす》として、国民民主党の公認がなくとも国政選挙への出馬を模索するような文言を連ねた。
都議選の初日、前出の同党候補者は「不倫の党、不倫政党とやじられました。私は何も知らないし、わからないのに」と肩を落とす。ある自民党の大臣経験者がこう突き放した。
「党首の他にも不倫が噂される幹部が複数いる。国民民主党は不倫政党のまま参議院選挙まで走ってほしい。そうすれば離れかけていた保守票が国民からうちに流れてくる。山尾劇場での自爆で、うちはボロ負けが回避できそうだ」