【森友学園事件】「AKAGI NOTE」他9,000ページの財務省文書が示す隠ぺいの実態
今月11日、安倍晋三元首相の関与も疑われた森友学園の問題で、公文書改ざんを余儀なくされ自ら命を絶った赤木俊夫さんの妻・雅子さんが開示を求めていた財務省の内部文書約9,000ページが開示された。文書の中に含まれていた「AKAGI NOTE 2017.4.17 Fri」という赤木さん直筆のノートには、当初9億円以上の価値だった国有地が8億円に減額になったことを「8億は引き過ぎ」「刑訴法239条 何人も告発できる」と刑事事件になりかねない取引であることに悩む心情が綴られていた。
◆ ◆ ◆
開示された文書には、財務省が「ウソ」を公表するよう命じていたことが分かる記述もある。
2017年3月2日に赤木さんが送信したとみられるメールには、《週刊SS一般向け対応案》という件名が打たれている。森友学園への国有地売買について取材していたある週刊誌が財務省に対し、鳩山邦夫元総務相(故人)の事務所スタッフと財務省職員が面談した際、“口利きがあったのではないか”と質問していることについての対応を記したものだ。
メールには《一般国民からの苦情照会に対する回答案》という文書(*下の画像参照)が添付され、《答 記録がないので、わかりません》《答 森友学園の国有地取得に要望にあたり、政治家や政治家の秘書から口利きを受けたことはありません》と「想定問答」がある。だが、開示された他の資料には、2010年8月に《【来訪】鳩山邦夫衆院議員〇〇秘書、籠池泰典氏 (当方) 近畿財務局第一統括松本統括官》と面談した時の記録が残っている。取材や国民に対して、平然と「ウソ」をつこうとしている財務省の悪辣な姿勢がうかがえる。
2017年3月17日に作成された《応接メモ》には、近藤昭一衆議院議員と財務省とのレクでのやり取りが記されている。近藤氏は《資料要求している売買契約に至るまでの一連の文書の中に、取得要望書があると思うが、森友学園が提出した設立計画書などに「安倍晋三」「安倍昭恵」「〇〇記念学園」などの記載があるのではないか》と問い、籠池氏が安倍元首相らの名前を使って「圧力」をかけた可能性があるのではと聞いている。その後、安倍元首相、昭恵夫人と籠池氏との深い関係が明らかになったのは周知の通りだ。
メモの最後には《(注)(近藤氏の)秘書より地元事務所を通じて近畿財務局に「売買契約に至るまでの一連の文書」の開示請求を既に行っているとの発言あり。その際、議員事務所名を使用していない模様》と注意書きがある。財務省国有財産企画課の担当者は《近藤議員は愛知選挙区ですので、名古屋市または愛知県の住所にて開示請求している者がおりましたら、開示請求書の写しの提供をお願いいたします》と赤木さんや近畿財務局の担当者にメールを送信していた(*下の画像参照)。
国、地方自治体を問わず、同じ役所内であっても他の関係者に情報公開請求者の個人情報を漏らすことはご法度だ。だが財務省の上層部は、出先の近畿財務局などに、請求者の情報を漏えいするよう求めているのである。開いた口が塞がらない。
「AKAGI NOTE」や漏えいを促すメールを見ると、財務省が国民のためではなく、自分たちの保身のために動いていたことが明白だ。赤木さんが「圧力」によって身動きがとれなくなった結果、心神に支障をきたして自ら命を絶つに至った苦境が十分にうかがえる。
その赤木さんや他の担当者の様子を知っていた近畿財務局の幹部は、田村嘉啓国有財産審理室長(当時)に、本省の理不尽な要求によって《統括ラインが倒れかけている》《本日は7時退社、土日の出社はなしということにしたいと考えております》と休暇を懇願している。過酷な勤務状況だったことは、本省から「2017年3月24日午前1時20分」に近畿財務局の赤木さんらにメールが送信され、赤木さんの上司が「午前1時49分と1時52分」に返信したメールの記録からも分かる。異常な時間帯に、仕事をさせていたということだ。
財務省幹部や安倍元首相を守るため、赤木さんらが理不尽な使われ方をしていたことは明白だ。財務省は、今回開示された文書を出すことをずっと拒んできた。裁判所の命令に従うしかなかったのだが、開示が決まって出てきたのは9,000ページという膨大な資料。内容は、隠してきたものの枚数以上に重いものだった。