「麻生自民党」に揺れる永田町

「本当に高市氏が新総裁に選ばれたんだな……」――ある自民党の大臣経験者A氏が天を仰いだ。自民党総裁選で勝利した高市早苗氏はさっそく党役員人事に着手し7日に発表したが、A氏はその顔触れをみて呆然となった。

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高市氏の両脇で写真に納まるのは麻生太郎副総裁と義弟の鈴木俊一幹事長(麻生派)。高市氏の推薦人だった有村治子総務会長(麻生派)、保守的な考えで共通する小林鷹之政調会長(旧二階派)、古屋圭司選対委員長(旧茂木派)が並んだ。総裁以外の幹部5人の内3人が麻生派。「麻生執行部」にしかみえない光景だった。

旧茂木派からは梶山弘志氏が国対委員長、鈴木貴子氏が広報本部長のポストに。さらに、高市支持で動いた旧安倍派5人衆の一人で旧統一教会との関係や裏金問題で知られる萩生田光一氏を幹事長代行に据えるという、論功行賞人事となった。

総裁選で高市氏を当選に導いたのは確かに麻生氏。鈴木氏と有村氏は麻生派幹部だ。また、麻生氏と共同歩調をとった旧茂木派からも二人を登用。党内からも驚きの声が上がったのは、裏金事件を巡り今年8月に政策秘書が罰金刑を受けている萩生田氏の要職への起用だった。民意を無視した人事に、A氏が呆れるのも無理はない。

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この人事と、右翼的な高市氏の政治姿勢に反発しているのが公明党だ。「執行部人事のメンツをみて唖然とした。うちとは連立を組まないという最後通牒ではないのか」――ある公明党の議員が、怒りを露わにそう話す。

7日、高市氏と自民党執行部は公明党の斉藤鉄夫代表らと会談。公明党は高市氏の押し出す保守的な考え、とりわけ「政治とカネ」「靖国神社参拝」「外国人排斥」の3点について懸念を示していたため、注目が集まった。

斉藤氏は「支持者から、大きな不安や懸念があるとの声が率直に申し上げ多くある。連立政権となるには、それを解消しなければならない」と述べたという。

1時間半ほどに及んだ会談の終了後、斉藤氏は記者の質問に「靖国問題、過度な外国人排斥の問題は高市氏から詳細な説明があり、その認識は我々共有することができました」と語る一方で、政治とカネについては「一番時間をかけて話したのが、この問題。まだ全容が解明されていない」として、連立協議の結論が出なかったことを明かした。

自民党と公明党の連立政権は誕生から26年。前述の公明党議員が次のように語る。

「これまでは、新総裁が誕生した直後の会談で連立政権の継続がほぼ決まってきた。今回は、継続だなんて聞いたことがない。正直、党内では『高市さんとの連立は無理』という議員が半数以上だ。『裏金に反省がない』『外国人排斥のような思想は相容れない』と厳しい意見もある。また、私の支持者や創価学会の信者からも『高市とは組まないでほしい』と言われている。連立離脱は十分あり得る。昨今の状況からして、潮時かもしれない」

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念願の自民党総裁になった高市氏は5日夜、玉木雄一郎代表と極秘会談。麻生氏と深い関係にある国民民主党との連立構想に突っ走る。麻生氏は、以前から仲のいい国民民主の榛葉賀津也幹事長と面会している。

公明党とは根本的な理念、政策が一致しない高市氏。さらに、公明党を嫌ってきた麻生氏。新たな連立のターゲットが国民民主党であることは明らかだ。国民民主党の国会議員が苦笑しながらこう話す。

「野党が一丸になって首班指名で玉木を推すという雰囲気はまったくない。立憲は口で言ってるだけ。それをまとめる人物がうちにも他の野党にもいない。それなら、過半数割れの自民党の危機に乗じて、連立に入って与党の一員になったほうが政策実現できる。自民党から『〇〇大臣だ』とささやかれている幹部もいると聞いている。大臣の椅子取りゲームがはじまっているようだ」

今年7月の参議院選挙では自民党と真っ向からぶつかり「減税」を打ち出していた国民民主党。選挙が終わると、自民党も国民民主党も「減税」という言葉を忘れてしまったかのような現状だ。そんな中で国民民主党の連立入り歓迎ムードはまさに「大臣病」というしかない。

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一方、小泉進次郎農相の総裁就任に期待していた日本維新の会の議員たちは意気消沈。代表の吉村洋文大阪府知事も元気がない。

「うちは完全に読み違えてしまった。今、連立構想を再度検討しているが大きく出遅れてしまったのは確か。連立入りは難しいと思う」(維新の国会議員)

自民党は、国民民主党と維新の党内事情を把握済みのようで、前出のA氏のぼやきが続く。

「麻生さんは、かなり以前から国民民主党と組むべきと主張してきた。高市政権のキングメーカーとなったことで、自ら動いている。新総裁も積極財政などの政策が一致する国民民主党を連立に引き入れたいという考えだ。維新は公明党と小選挙区で対峙しているので、国民民主党なら公明党も我慢してくれると思っていたが、どうなるか分からない。国民民主党を取り込む一方で公明党が出て行った場合、衆参の議席数が少し増えるだけで過半数割れは変わらない。信頼関係のある公明党とは丁寧にやらないといけないのに困ったもんだ」

物価高で国民が苦しむ中、永田町の論理ばかりで動く政治家たち。臨時国会の首班指名も最短で15日から20日にずれ込む見通しだ。国民不在。政治は何も変わっていない。

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