新型コロナウイルスのクラスターが発生し、19日までに57人の感染者が出ている鹿児島県指宿市が、所有する複数の温浴移設を開いておきながら市民の利用を制限し、市外からの客だけを迎え入れる方針にしたことで内外から戸惑いの声が上がる状況となっている。
■温浴移設の玄関に……
下は、指宿市が所有し、指定管理者に運営を委託している「山川ヘルシーランド」(指宿市山川福元)と「レジャーセンターかいもん」(指宿市開聞川尻)。いずれも同市の貴重な資源である温泉を利用した温浴施設で、普段から市民の利用が多い。
19日、両施設の玄関ガラスに、同じ文面の大きな告知が貼り出された(下の写真)。
それぞれの施設を訪れた人たちが驚いたのは、「感染拡大防止のため、指宿市民の方は、当面の間、施設の利用をお控えください」の一文。施設は営業しているにもかかわらず、“市民はNO”。しかし、この文面だと“市外客ならOK”ということになる。
■取材に困惑する市の担当課
新型コロナのクラスターが発生したばかりの状況でもあり、利用制限がかかるのは仕方がない。だが指宿市民の税金が投入されている公的施設で、市民を締め出し市外の客を入れるというのでは筋が通らない。市外からの客を入れてしまえば、感染防止も不十分になるだけではなく、市外からコロナウイルスが持ち込まれ、施設の従業員から市民へと感染が広がる可能性もある。どう見ても、不適切な感染対策だ。
問題はまだある。指宿市は18日から、市公共施設の休館や利用自粛をホームページ上で公表しており、下の画像でも分かるように40施設以上がその対象になっているのだ。「山川ヘルシーランド」と「レジャーセンターかいもん」で市外の客を入れてしまえば、主要な施設の利用を制限した意味がなくなる。
ちぐはぐな対応は“混乱”の裏返しなのだが、念のため、市の担当課に「山川ヘルシーランド」と「レジャーセンターかいもん」が「市外はOK、市民はNO」になった理由を尋ねた。
担当課の職員によれば、「市外客OK、市民はNO」を認めた上で、決めたのは「専門家は入っていない市内部の会議」で、詳しい経緯は分からないという。つまり、“その程度”なのだが、納税者である市民は納得しないはず。コロナの感染対策としても不十分と言えそうだ。
山川ヘルシーランドを訪れ、貼り紙を見て利用をあきらめたという指宿市在住のある主婦は、次のように話している。
「市外の客は入っていいが、市民は利用するなということで驚きました。ここは指宿市民の税金で成り立っている施設なのに、おかしな話ですよ。市外の人だって、こんな貼り紙みたら気持ち悪くて入れないでしょう。いっそ、休館にするべき。市は、何を考えているの分からない。コロナ対策でも大したことはやっていないし、感染防止にも失敗している。市長は何をやっているでしょうか」