今月20日、2022年7月に安倍晋三元首相が銃撃された事件で逮捕・起訴された山上徹也被告の被告人質問がはじまった。「私は、45歳まで生きているべきではなかったと思います。なぜなら、このような結果になってしまい、大変迷惑をおかけしている」と語り始めた山上被告。公判にはすでに被告の母親と妹も出廷しており、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)や自民党との関わりについて証言していた。
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犯行動機は、旧統一教会にのめり込んだ母親が、1億円を超す献金をしたことで家庭崩壊を招き、その恨みを晴らすために教会と深い関係があったとみられる安倍氏を銃撃したというものだ。
すでに法廷で証言している山上被告の母親は、弁護士から「息子、徹也さんのこのようなこと(銃撃事件)をどんなふうに考えるのか」と問われると、「原因は私が加害者だと思います」「(家族に多額な)献金をごまかしてやってきた。非常にひどいことをやってきた」と証言。山上被告が銃撃事件に及んだ責任は、Aさん自身が旧統一教会へ多額の献金をするなどして、家庭崩壊に追い込んだことだと認めていた。
「お金がなくても心が豊かになるのが本来の宗教。(多額の献金をすることで旧統一教会から)チヤホヤされていた。私がはき違えていた」と旧統一教会の“カネ集め”を批判した。
夫である山上被告の父親が死亡した保険金6,000万円を献金。その後、自身の父、山上被告の祖父が死亡すると、会社や住んでいた自宅まで売り払って4,000万円を寄付。それ以外のものを含めると総額1億円以上の献金を行っていた。
山上被告の妹はさらに詳しく証言した。「私がお年玉などをためていた口座もゼロになった。消費者金融からもよく電話がかかってきた」。母親が山上被告の祖父の遺産を処分し、旧統一教会に献金したことで住む家がなくなり奈良県内の小さなアパートに引っ越したが、その後、高額献金が原因で自己破産したという。
献金のせいで山上被告は大学に進学できず、自衛隊に入隊。自ら生命保険に加入し、自殺を図る。妹は、「母は韓国に行き、旧統一教会の修練会に40日間出ていた。兄が自殺したと連絡をしたが、帰ってこなかった」「兄がいろいろと母に言ってくれ、私は大学進学ができた。しかし、母は韓国に行くカネがいる『30万円貸してくれ』などと無心してきた」「母から『家賃を滞納している。3か月分まとめて振り込んでくれ』とせびられました。断ると私の腕にしがみついて、50mくらいひきずって歩いたこともあった。恥ずかしかった。母が連絡してくるのはカネの無心の時だけで鬼の形相だった」などと旧統一教会の“カネ集め”を批判した。
そして、母親が自民党を熱心に支援していたことも次のように証言している。母親は親族の一人を旧統一教会に誘い、入信させたといい「(家には)旧統一教会の壺とか自民党関連のものなどが置いてあった。自民党を褒め讃えていたのも聞いていた。母が勧誘した親族も、選挙では自民党に入れてほしいと私に言い、動画を見てほしいとURLが送られてきた」
この動画こそ、山上被告が安倍元首相の銃撃に駆り立てたきっかけの一つ。安倍氏が2021年9月、旧統一教会の友好団体とされるUPF(天宙平和連合)へ寄せたビデオメッセージのことだ。母親も「ビデオで(安倍元首相がメッセージを寄せていることは)知っていた」「有名な方がメッセージをくれてよいことだと思った」と認めている。山上被告の動機とつながる内容だった。
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自民党には旧統一教会から支援を受けて当選したことがはっきりしている生稲晃子、井上義行両参議院議員など関係する現職の議員が複数いる。生稲氏は、石破政権時代に外務政務官となり今年9月の自民党総裁選では高市早苗首相の推薦人となった。ある自民党幹部は、山上被告の裁判が、高市早苗政権や自民党に大きな影響を与えるのではないかと危惧する。
「今後、裁判の中で出るであろう旧統一教会と自民党についての証言などが、高市総理ご自身や我が党に影響を及ぼす可能性もある。山上被告やその家族は奈良県在住。母親が自民党を応援していたということは、奈良2区が地元の高市総理を支援し、1票を投じていたという流れになる可能性もある。旧統一教会の不法行為に厳罰を下さず、ごまかし続けてきたツケがここにきてまわってきた。裁判所が解散命令を下したからといって、過去に旧統一教会が自民党を支援してきたことは消すことができない汚点だ」
山上被告の被告人質問は、合計5回の予定。今後の公判で事件の背景となっている旧統一教会と自民党の関係が、より明確になってくるはずだ。















