ブロック紙・北海道新聞の本社社屋(札幌市中央区)で3月上旬、同社の契約社員が不審死とみられる状況で亡くなったことが疑われている。死亡事案が起きたとされる日時に同本社へ救急と警察の車輌が出動していたことがわかっているが、社内に訃報が周知されたのはその4日後のことだった。死因などの詳細は明かされず、その後も社員らの腑に落ちる説明がないため、内部では社への不信が拡がっているという。
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筆者が入手した公文書(*下の画像)によると、札幌市消防の救急車輌が北海道新聞本社ビルに臨場したのは3月9日午前8時23分。出動は重傷者への対応を前提とした「救急隊支援出動」扱いで、札幌市内2カ所の消防署出張所から救急隊が駈けつけていた。

その救急隊は結果として傷病者の「不搬送」を決め、およそ20分後に各出張所へ引き返すこととなる。いわゆる「のり弁当」状態の文書からその理由を読み取るのは困難だが、一般的に考えて傷病者を医療機関などへ搬送する必要がなかった状況、つまり「手遅れ」だった可能性が高い。
医療機関ではない場所で人が亡くなったのであれば、警察が不審死事案として検視などを行なっているはずだ。筆者は北海道警察に公文書の開示を請求し、同日時の警察対応の記録の開示を求めた。だがこれを受けた道警の判断は「存否応答拒否」(*下の画像)。記録の有無をあきらかにせずに文書の開示を拒否する、という決定だった。決定書によると、おもな理由はプライバシーの保護。記録があるかどうかを明かすだけで特定の個人情報を侵害することになるため、その存否を答えられないのだという。

捜査機関が明答を拒んだ事実は、しかしながら消防の記録であっさり裏づけられていた。先述の「のり」の隙間に、こんな文言が記されていたのだ(*一部伏字は札幌市消防局。前掲画像参照)。
《臨場した警察官(中央警察署刑事一課■■警部補他5名)に傷病者を引継ぎ》
救急が「不搬送」を決め、警察に引き継いだ――。現場は新聞社の社内で、時間は月曜日の始業前。これでなお不審死事案はなかったと解釈するのは、むしろ無理があるだろう。
出動騒ぎの翌日、3月10日の午後には、外部の筆者にも「道新でまた社員死亡」との情報が届いた。「また」というのは、本サイトでも報告した過去の死亡事案(既報)を引き合いに出しての枕詞。1年間に2人の編集幹部が急逝した2023年には現場の士気が大きく低下し、幹部2人のいずれも自殺とみられる状況で亡くなっていたことで関係者らは暗然となった。
今回の事案でも不審死が強く疑われ、にもかかわらず社内では充分な事実説明がなされていないという。筆者に一報が届いた時点ですでに「箝口令」を疑う声が上がっており、さらに「自殺」の可能性を指摘する向きもあった。会社がようやく公式に訃報を周知したのは、4日を経た3月13日のことだった。
社員に届いた『おくやみ』文(*下の画像)によると、亡くなったのは本社に秘書として勤務する契約社員の女性(50歳代)。死因はあきらかにされず、葬儀の案内欄には「終了済」とのみ記された。

本社勤務の記者らによると、当該女性は役員らのサポートをする業務に就いていた。ほがらかな人柄で、同僚からの信頼が厚かったという。3年間の契約が今春で終了し、新年度からは系列のFM局へ移ることになっていたという。
社員らが疑う「箝口令」「自殺」などは事実なのか。筆者が道新へ確認取材を申し入れたところ、同社は「当社のスタッフのご逝去に際し、心より哀悼の意を表します」とコメントした上で、自殺疑いについては「個人のプライバシーに関わる」として否定も肯定もせず、また箝口令の事実については「ご逝去について社内に周知しており、そうした事実はございません」とした。訃報の社内周知までに4日の時間を要した理由を尋ねる問いには「お答えすることはありません」と明答を避けた。
救急出動の翌日に噂レベルで訃報を知ったという内勤社員の1人は「社員の間で不安が拡がっている」と話す。「具体的な説明が何もなく、危機管理としては最悪。自殺だから説明できないんじゃないかと勘繰ってしまう」と、社への不信を募らせているところだ。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |















