任期満了に伴う鹿児島市長選挙は29日に投開票が行われ、新人で元鹿児島県議会議員の下鶴隆央氏(40)が、自民党推薦で元鹿児島市議会議員の上門秀彦氏(66)、元鹿児島市副市長の松永範芳氏(62)、共産党鹿児島地区委員会の副委員長・桂田美智子氏(67)ら3人を破って初当選を確実にした。
下鶴氏は、鹿児島市谷山出身の40歳。町工場(自動車修理工場)の長男として生まれ、ラ・サール中学・高校から東大法学部に進学。卒業して民間企業に務めた後、2012年の県議選から3期連続で当選を重ねていた。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、40歳という若さを前面に押し出した下鶴氏は、『動け!鹿児島市。このままよりもこれからを!』のキャッチコピーを掲げ活発な街頭活動を展開。最重要課題として位置付けたコロナ対策の財源にするため市長給与を50%カットすることなどを記した100項目のマニフェストを発表し、支持を伸ばした。
県議時代から無所属を通してきた同氏の支持基盤は出身地の谷山が中心。政党や労組などの推薦を求めず、草の根の市民活動に支えられての選挙戦だった。陣営には、今夏の鹿児島県知事選で伊藤祐一郎元知事を支援した関係者や塩田康一知事の選対幹部らが垣根を越えて集結し、票の上積みが実現。鹿児島に新しい風を起こした形となった。
10月末の段階では現職市長の後継として出馬表明した松永元副市長が優位に立っていたが、日を追うごとに下鶴支持の声が拡大。今月14日から15日にかけてハンターが実施した電話による情勢調査では、下鶴氏が元副市長を逆転して5ポイントほどリードする情勢となっていた。
自民党の推薦を得た元市議の上門氏は、選挙戦終盤になって猛追し松永氏との差を詰めたが及ばなかった。自民党は、知事選に続いて県都・鹿児島市の市長選でも推薦候補を落選させる結果となっている。
下鶴氏勝利の背景にあるのは、7月の知事選から続く“流れ”。市長選の情勢を探るための取材で市民から返ってきた答えで一番多かったのは、「若い人がいい」という選択理由で、これは知事選で候補者が乱立する中、最年少だった塩田氏に一票を投じた人が最も多く口にした言葉だった。
下鶴氏と塩田知事は、ともにラ・サールから東大に進んだ先輩・後輩。無所属・無党派で勝ち抜いた若い2人の連携に、県民の期待が高まりそうだ。
11月21日現在の鹿児島市の選挙人名簿登録者数(有権者数)は498,752人(男227,402人、女271,350人)。午後8時現在の開票率は0%。