任期満了に伴い29日に投開票が行われた鹿児島市長選で、元副市長や自民党推薦の元市議らを破って勝利を収めたのは、40歳の元県議会議員・下鶴隆央氏だった(参照記事⇒『鹿児島市長に40歳・下鶴隆央氏|自民推薦の元市議ら破り初当選』)。無所属・無党派の立場でコロナ禍の激戦を戦い抜いた同氏は、連日の街頭演説で声がガラガラ。万歳三唱の余韻が残る事務所の中から、リモートでハンターの単独インタビューに答えた。
――初当選、おめでとうございます。ズバリ、勝因は?
下鶴:コロナ禍と急速に進む人口減少、これまでに経験しなかった事態に鹿児島市が直面する中で、市民の皆様が、「このまま」よりも「これから」の新しい鹿児島市づくりに期待して下さった結果だと思います。――いま、市民に伝えたいことは?
下鶴:本日で選挙は終わりました。ぜひ「ノーサイド」の精神で、市民の皆様と一丸となって、このコロナ禍の難局を乗り切りましょう。上門さん、桂田さんは地方議員の大先輩ですし、松永さんは地方行政の大先輩です。今回、各候補者が鹿児島市の未来ビジョンを市民の皆様に示したわけですが、ぞれぞれの候補が示した政策の中で取り入れるべきものは取り入れ、またすべての市民の皆様の声にしっかりと耳を傾け、市民とともに新しい鹿児島市をつくっていきたいと思います。――県庁・県議会から市役所に舞台を移し、鹿児島市の舵取りを担うことになったわけですが、短期、中期、長期で、それぞれ最重要と考えている政策課題は何ですか?
下鶴:短期的にはまずは新型コロナ対策です。「安心」できる感染対策、医療体制をしっかりと整備し、合わせて「安心」できる経済対策、そして中長期的な経済ビジョンの策定を行いと考えています。中期的には子育て支援です。人口減少に少しでも歯止めをかけるとともに、テレワークなどUIターンの促進を行う上では必要不可欠です。真っ先に全国ワースト6位の保育所等待機児童の解消を図り、あわせて放課後児童クラブの待機児童解消、病児保育の充実、相談体制の充実、児童相談所の設置など関連する施策を着実に前に進めてまいります。
長期的には稼げる仕事をつくるということです。特に鹿児島の有する魅力を生かした観光関連産業、そして地理的不利性を克服し世界とつながるIT関連産業を中心に鹿児島市外から「外貨」を稼ぐ産業を伸ばし、特に若年層の雇用確保、所得向上を図り、県外流出の防止と今後必要な高齢者福祉、子育て支援、教育などの財源確保を行い、「責任ある」「持続可能な」鹿児島市をつくります。
――三反園県政下では県と県都である鹿児島市がうまくかみ合わず、「停滞」をもたらしました。塩田康一知事とはラ・サール、東大の先輩後輩ですが、どう連携しますか?
下鶴:塩田知事はラ・サール中高、東京大学法学部と同じ道を歩んだ15年先輩であり、その豊かな行政経験もあわせて尊敬する先輩です。ぜひとも県体育館、本港区エリアまちづくり、海を生かした観光振興など県と市の連携が重要な諸課題について、緊密な連携をとっていきたいと考えています。また県議会時代からも塩田知事のデジタルなど新しい技術を積極的に取り入れる新しい感性には共感、共鳴しているところです。この点もともに連携していけるのではないかと思っています。そして自分自身も、県議としての経験も、県の考える方向性を理解・把握しているという意味で生かしていけると考えています。
――鹿児島市の郡山地区は川内原発から30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)です。県はこの先、原発の運転の20年延長を認めるかどうかの判断を迫られますが、その点についてはどうお考えですか?
下鶴:鹿児島市も郡山地域の一部が30Km圏内に含まれており、市民の命を守るという観点から当事者意識を持って臨みたいと考えています。まずは電力事業者の申請状況、そして塩田知事は県民投票についても言及していらっしゃるので、実施の際の有権者の範囲など、鹿児島市民に対する影響を注視していきたいと考えています。――コロナ対策は待ったなしです。まず最初に何をやりますか?
下鶴:これから冬に向けて「第三波」の到来、季節性インフルエンザとの重複流行などに備えて、「安心」できる感染対策・医療体制の整備が重要です。新しい生活様式の徹底など「コロナにかかりにくい」環境整備とともに、万一クラスターが複数同時に発生した場合でも対応できるPCR検査体制の確保、病床の確保とともに、病床逼迫時に備えた軽症者・無症状者向けホテルの確保の検討など、市民の皆様が「安心」できる仕組みづくりを、国、県や各関連団体と連携を取りながら進めてまいります。――お疲れのところ、ありがとうございました。