新型コロナ感染拡大「国のせいにしないで」―首相も議員も責任放棄 

自民党の中で騒ぎを起こすのは、決まって2012年の総選挙で初当選した、いわゆる「魔の3回生」。安倍チルドレンとも呼ばれるが、民主党から政権を奪い返した時に粗製乱造で候補者に仕立てたため、極めて質の低い連中ばかりが集まった。魔の3回生が引き起こした“事件”は枚挙に暇がないが、今回は大臣政務官という要職にあるセンセイが、政府の無能さを露呈させる発言で、国民から顰蹙を買う事態となっている。

■またしても「魔の3回生」

自民党の3回生といえば、直近ではIR疑惑で逮捕・起訴された秋元司元国土交通副大臣(東京15区)が記憶に新しい。

その他、「このハゲ―!」で有名になった豊田真由子(埼玉4区)氏、不倫疑惑を報じられた中川俊直氏(広島4区)、育休取得を宣言しながら、妻が妊娠中なのをいいことにタレントと不倫して議員辞職した宮崎謙介(京都3区)氏、金銭トラブルで政界を去った武藤貴也(滋賀4区)氏、暴言が仕事の大西英男(東京16区)、被災地視察の折に“おんぶ”されていた務台俊介(長野2区)氏などなど、非常識としか言いようのない輩ばかり。記録をたどれば、問題児の名前がゾロゾロ出てくる状況だ。

今回、ツイッターへの投稿で政治家としての資質が欠けていることを証明した3回生は、佐々木紀国土交通大臣政務官(石川2区)。新型コロナウイルスの感染拡大で国が揺れる中、今月5日に、自粛要請を無視して外出する人たちのニュースに反応する形で『感染拡大を国のせいにしないでくださいね』と書き込んだ。

政治の責任放棄ともとれるつぶやきは、インターネット上で炎上。批判が相次いだため、佐々木氏は一部を修正。「国のせいにしないでくださいね』を『国だけの責任にしないでくださいね』と書き変えたが、いずれの主張も間違だと断言しておきたい。

■問われる「政治の責任」

感染拡大を止めるのは、間違いなく政治の責任だ。活動自粛に従わない人がいるのは確かだが、水際対策に失敗したのは安倍政権。習近平の来日と東京五輪・パラリンピックにこだわり、入国制限を遅らせた結果が現在の惨状なのである。

春節を迎えていた中国から、多数の新型コロナ感染者が来日するという予測があったなか、それを止めきれなかった政治の責任は重い。広い意味では、野党も含めた国会全体の危機管理能力のなさが、前代未聞の「自粛」を招いたと言えるだろう。

だが、政務官として国の中枢にいる者の責任が、他の政治家より重いということは子供でも分かる話。理解力があれば、『国のせいにしないでくださいね』などと責任転嫁はできないはずだ。残念ながら佐々木氏にはその理解力がなく、つい本音でつぶやいたというのが真相ではないのか。無能・無自覚な人物が、議員バッジをはめていること自体がこの国の不幸だ。

そもそも国会議員や役人は、どれだけ“自粛”が強化されても収入が減ることはなく、暮らしにはまったく困らない。議員歳費の原資は税金、共産党と無所属を除いた国会議員の政党支部に支給される政党交付金の原資も税金である。国民に食べさせてもらっている政治家たちが、感染拡大を防げなかった責任はとらず、国民に負担だけを押し付けている現状は、明らかに不公平だろう。

布製マスクをばら撒くという愚策にかかる466億円も血税で賄うものだし、政府や自治体が支給したり貸し付けたりする現金も、しょせんは国民のカネなのである。政府の自粛要請は、後手に回って感染拡大を許した結果のツケを、国民に払わせようという虫のいい話なのである。

ところが、安倍首相には、失政の責任をとるという覚悟がない。記者会見で一連の新型コロナ対策について“失敗だったらどういうふうに責任をとりますか?”と聞かれた安倍首相は、「これは例えば最悪の事態になった時、私が責任を取ればいいというものではありません」と本音で答え、記者団を呆れさせた。

結果責任を問われるはずの政治家が責任放棄したという意味において、佐々木国交政務官の『感染拡大を国のせいにしないでくださいね』に通底する発言だった。

12日には、 俳優で歌手の星野源さんがインスタグラムに投稿した動画「うちで踊ろう」に、安倍首相が勝手にコラボ。私邸とみられる部屋で、犬を抱いたりカップを手にするなどしてくつろぐ様子をひけらかした。

新型コロナによる自粛要請で、生活や会社経営が苦しくなっている多数の国民の気持ちなど、このボンボン政治家には分からない。親分の首相が非常識なら、子分の政務官も非常識。「魚は頭から腐る」というのは本当のことなのだ。

■政治家失格

それにしても、政治家のレベル低下が酷すぎる。問題を起こした佐々木政務官にしても、政治家としての資質を欠いていることは、最近のツイッターへの投稿が証明している。

3月20日には、「東京五輪は延期すべき」とする元柔道選手でJOC理事の山口香氏の主張に対し『アスリートが言うべきではないし、大事な時期にJOC理事が軽率なことを言うべきではない』(下の画像参照)と批判したが、その後の展開は周知の通り。感染拡大でオリンピックどころではなくなり、東京五輪・パラリンピックは延期された。

3月30日にも、自身の政務官という立場を考えもせず、石破茂元自民党幹事長の「中国からの入国もっと早く止めるべきだった」という発言に、『みんな入国禁止にしたかったけどね…でも、どういう法律的根拠で止めればよかったか教えて下さい。現行法の枠内で最大限の措置だと思うけど…結局野党と同じなん?!』と噛みついていた。

石破氏は国民の誰もが思っていることを口に出しただけで、批判されるような発言内容ではない。水際対策に失敗し、新型コロナの感染拡大を許したのは、前述した通り習近平とオリンピックにこだわった首相の判断が遅れたことが原因なのだ。

政府の一員として失政の責任を感じなければならない政務官が、開き直って『教えて下さい』と自らの無能を露呈させるというお粗末ぶり――。佐々木紀という国会議員は、国民の血税を貪る、ただの“無駄めし食い”ということになる。政治家失格!

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