和歌山知事選候補者選びで存在感示した二階元幹事長

10月4日、自民党本部に岸田文雄首相を訪ねたのは7月まで国民民主党の衆議院議員だった岸本周平氏。11月27日投開票の和歌山県知事選に立候補するため、議員辞職したばかりだ。

この日、岸本氏は岸田首相から知事選への「推薦状」を受け取り記念撮影。岸本氏と並んで、二階俊博元幹事長や世耕弘成参議院議員の姿があった。政権政党の自民党がなぜか野党・国民民主党の岸本氏を推薦という不可解な構図。裏では、ハンターでも報じてきた二階氏と世耕氏の激しい〝暗闘“が展開されていた。(参照記事⇒《野党議員も政争の「駒」|二階氏が支配する和歌山県政界の裏事情

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「県連として二階氏が推す岸本氏に乗るか、それとも独自候補で行くか、ずっとまとまらなかった。そこへ、世耕氏の援軍があり一度は独自候補擁立が決まったのですが、やはり二階先生には勝てまへん」と苦笑するのは、自民党の和歌山県議。自民党県連は9月、世耕氏の勧めもあり、和歌山県出身の総務官僚で現在は青森県総務部長の小谷知也氏を擁立する方針を決めた。

小谷氏と親しいある総務省のキャリア官僚は「世耕氏が安倍政権の官房副長官時代に小谷氏とのご縁があったそうです。小谷氏、世耕氏と自民党県連が推してくれるなら、故郷でぜひとやる気満々だった」と話す。だが、小谷氏擁立にを決めた県連の会合で、浮かない顔をしていたのが二階氏だった。マスコミに囲まれても無言で「予定があるから」とその場を立ち去っている。

和歌山県連が小谷氏を擁立したことで、岸本VS小谷という構図二なることがほぼ確実視されたが、最長の幹事長在任期間を誇る二階氏だけに簡単にはあきらめなかった。

岸本氏は野党議員だったが、「隠れ二階派」と呼ばれるほど二階元幹事長と昵懇。二階氏は、「野党だが、岸本君はなかなかのものだ」と、これまでそう語ってきたという。

小谷氏が出馬準備にとりかかる中、ついに、世耕氏が二階氏の壁を打ち破ったかにみえた。しかし、10日ほどして突然、その世耕氏が「状況が変わった」として小谷氏擁立を断念する。前出の自民党の県議が、短く解説する。
「県連が一本でまとまらなかったことが大きな理由。というか、まとまらせなかったのですよ、二階先生が」

小谷氏の名前が浮上すると、さっそく二階氏は裏で動いた。来年4月は統一地方選がある。自民党の和歌山県議にとっては、地元の市町村議員や首長への「団体」による支援が必須だ。それを見越した二階氏は、和歌山県の『町村会』に手を突っ込んだ。二階氏は、町村会所属の町長や村長らに、岸本氏への「推薦状」を働きかけたというのだ。

「和歌山県内にある21町村のうち17は二階氏の地盤である衆議院和歌山3区。人口は少ないが、数では優勢な町村会が岸本氏に推薦状を出すことが分かり、これまで威勢よく『独自候補』と叫んでいた県議らがしゅんとなってしまった。来年4月は統一地方選ですからね。“県連で決定できない時は、市町村の支部にも相談すべきだ”と、ずっと二階先生は言っていた。最初から、こうなることを見透かしていたのでしょう」(前出・自民党の県議)

その後、二階氏は自民党本部で何度も茂木敏允幹事長と会談。岸本氏を党本部まで招いて、茂木氏と会談させるという「地ならし」も怠らなかった。ある自民党幹部が、次のように打ち明ける。
「茂木さんは当然、幹事長の次を狙う立場。二階氏と事を荒立てることはできません。また、二階氏を蹴落としてでも衆議院に転出したい世耕氏はある意味ライバル。おまけに、安倍派ですから、できれば参議院議員のままで衆議院に転出しないでほしい。そこで、自民党本部では、茂木-二階ラインがガッチリできあがっていた。それが読み切れていなかった世耕氏は、白旗をあげるしかなかった」

岸本氏と共産党候補、総務省の元職員と三つ巴になる和歌山県知事選だが、よほどのことがない限り大勢は決まったものとみられている。

次の衆議院選挙は「10増10減」で和歌山県は1減。二階氏の3区と2区が1つの選挙区となるような区割り案が有力視されている。世耕氏は、二階氏との激突を恐れず、そこに割って入ることができるのか。

「安倍派に所属する世耕氏のライバルとみられていた山口県の林芳正外相が衆議院に転出した。彼は、安倍元首相が亡くなった後、派閥がまとまらない中で、なんとか安倍元首相の後継として衆議院に転出したい。だが知事選の対応で、老かいな二階氏とは役者が1枚も2枚も違うことがはっきりした。次期衆議院選挙での転出は、とてもじゃないが無理ではないか」(自民党幹部)

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