「政商」水谷建設元代表・水谷功氏逝去

水谷建設の元会長で、平成の「政商」と言われた水谷功氏が12月17日に病死した。

小沢一郎氏の陸山会事件、福島県知事の贈収賄事件など、数々の事件で名前があがった水谷氏は、父親が創業した水谷建設の後を継ぎ、政財界と裏社会との強いつながりを駆使してのし上がってきた人物だった。

■政財界の裏に通じた「ミズケン」

永田町や霞が関での呼び名は「ミズケン」。人脈は幅広かった。元大手ゼネコンの幹部は振り返る。
「中部国際空港の建設など、公共工事にはめっぽう強かった。大手ゼネコンの幹部が、功元会長に日参しては工事の受注、調整を頼みに来ていた。また、大手ゼネコンが抱えた、表に出せないトラブルの相談にも乗っていた。功元社長がタニマチで、支援した政治家は数知れずだ」

政財界の裏で動いていた水谷氏の名前がクローズアップされたのが、2006年に東京地検特捜部が立件した、佐藤栄佐久元福島県知事の贈収賄事件。福島県の発注工事を受注した水谷氏が佐藤氏側の土地を買ったことが、賄賂ではないかとされた。

佐藤氏は知事辞職に追い込まれ、有罪判決が確定。この事件では、水谷氏自身も法人税法違反(脱税)で逮捕され実刑判決を受けている。一方、佐藤元知事の贈収賄事件は、贈賄側の水谷氏が時効になっていたため立件されなかった。

水谷氏が三重刑務所に服役していた時だった。熱心に通ったのが、東京地検特捜部の検事たち。岩手県の胆沢ダム受注の謝礼として、小沢一郎氏に1億円を賄賂として送ったのではないかとの疑惑が浮上し、その端緒をつかむため水谷氏に会いに刑務所にまで来ていた。後の陸山会事件だ。当時は自民党が低迷し、民主党の勢いが増して政権交代が現実になりつつある時期だった。

2010年、小沢氏の秘書が政治資金規正法違反で逮捕され有罪が確定。小沢氏も検察審査会による「強制起訴」で被告人席に座ることとなったが、検察側は水谷建設からの「1億円賄賂」を裁判の中で立証しようとした。

ところが、法廷い登場した水谷氏は「5,000万円を2回、計1億円をもっていくことは社長らに了承した。だが、小沢氏サイドに届いたのかどうか、わからない」と奇妙な証言を繰り返した。

裁判の中で水谷氏は、「裏金を持っていく時は2人で届けろ」「カネは当日の朝、金庫から出すように」などと、独自のルールを決めていたことを明かしたが、数々の修羅場をくぐり抜けてきた同氏ならではの証言だった。

別の脱税事件の時には、裏金から指定暴力団山口組に中部国際空港や関西国際空港の「地元対策費」の名目で、6億円が支出されていたことが判明。国会議員元秘書にも2億円が渡されていた。前出の大手ゼネコン元幹部は、こう振り返る。
「水谷氏のまわりは常にカネと大手ゼネコンだった。大手ゼネコンは、コンプライアンスが厳しくて、地元対策費なんて簡単に出せません。そこで、水谷氏がそこを請け負うかわりに、下請けを受注させる。裏金の部分は、工事費に上乗せすればいい。水谷氏が脱税で逮捕という時は背筋が凍った。大手ゼネコンの裏事情をしゃべられると、完全に終わり。だが、水谷氏はまったくしゃべらなかった。そこで、大手ゼネコンの信頼はますますアップして、水谷建設の受注も増えた」

2011年3月の東日本大震災とそれに伴って起きた福島第一原発事故では、直後から水谷建設や日起建設の車が現場を走っていた。近年では、沖縄の辺野古の埋め立て工事、宮古島の自衛隊関連工事も受注している。

「事業は拡大する一方でした。儲かればいいという水谷氏は自家用ヘリで全国に営業をかけていた。だが、親族や幹部が『時代がかわった、コンプライアンスも大事』と主張しはじめたため、市内の対立が激化していた」(水谷建設関係者)

何度か水谷氏本人に話を聞いたことがある。「陸山会事件の1億円?渡そうとしたが、渡したところは見ていない。だから、わからない。渡せと命じたか?どうだったかな、社長らが動いたから。まぁ、覚えていない」――つかみどころがない言葉で、けむに巻くのがいつものパターンだった。

功罪は別にして、数々の「疑惑」を背負った「政商」がまた一人、世を去った。

(山本吉文)

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