「二枚舌」で選挙応援|“コロナ対応”のはずの吉村大阪府知事が池田市で街宣

サウナ市長・冨田裕樹氏の辞職・再選出馬で注目を集めていた大阪府池田市の市長選挙は、8月29日に投開票が行われ、ローカルパーティー「大阪維新の会」公認の前市議・滝沢智子氏が初当選を果たした。

この選挙で最も熱い視線を浴びたのは、冨田氏でも滝沢氏でもなく大阪維新の会代表の吉村洋文大阪府知事の動向だった。

■最終日、街宣カーから「大阪府知事の吉村です」

吉村氏は冨田氏のサウナ問題などが発覚した直後、「冨田氏の公私混同を池田市民にお詫びしたい。大阪維新の会が公認した責任がある」と述べ冨田氏を非難。国政政党「日本維新の会」代表を務める松井一郎大阪市長も、「(池田市長選には)関与しません」と発言していた。

維新は一転して池田市議だった滝沢氏を“大阪維新の会公認”として擁立したものの、新型コロナウイルスの新規感染者が連日2,000人を超え、重症者数も200人を上回るといった状況の中、吉村知事は「コロナ対応で池田市長選の応援には入れない」(維新関係者)とされていた。

しかし世間にとっての非常識である「二枚舌」は、維新の常識。投開票日前日の8月28日、池田市の街中に吉村知事の声が響き渡った。

「滝沢智子さんをよろしくお願いします」――大阪維新の街宣車に乗って遊説をはじめた吉村氏は、郊外の住宅街から阪急池田駅前、石橋駅前の繁華街まで2時間以上もかけて滝沢氏の支援を訴えた。

「吉村さん、頑張って」と手を振りながら、家から飛び出してくる住民。笑顔で応える吉村氏。さかんに「大阪府知事の吉村です」と訴える。「大阪維新の会の吉村です」と話すべきところを、公職である「知事」を強調するのは、地位利用ととられても仕方があるまい。

吉村氏は2年前、池田市長選で「冨田さんを市長にお願いします」と叫んでいたはず。ところが街宣中、サウナ市長の「製造責任」について、謝罪も反省もなかった。

これまでの維新の選挙手法によれば、吉村氏ら党のトップクラスが選挙区に入るときは、ツイッターなどで「前打ち」するなど、PRに余念がなかった。7月の兵庫県知事選でも、日本維新の会として斎藤元彦氏の応援に入った吉村氏はその際も、<兵庫県知事選挙、明日7月4日(日)、さいとうさんの応援に行きます>とツイートしていた。

神戸市の繫華街では、大勢の聴衆が詰めかけまさに三密に。しかし、池田市長選では吉村氏本人だけではなく、大阪維新の会からも事前PRは一切なかった。その理由について、ある大阪維新の会の地方議員がこう解説する。
「不祥事を起こしたウナ市長を誕生させたことについては、大阪維新の会に責任があることを認めています。コロナ禍で市長選をやらねばならないことも問題です。吉村氏も一度は行きませんと宣言していましたからね。緊急事態宣言の中、池田市に入るのはちょっとという思いがあって事前の前打ちは控えたのでしょう」――これこそが、本サイトでたびたび指摘している維新の「二枚舌政治」だ。

投票日前日、選挙戦は滝沢氏優勢、追うのが保守系無所属の渡辺ちよし氏とみられていた。ある報道機関は、1,500票ほど滝沢氏がリードと分析していたが、蓋を開けてみれば、滝沢氏が約3,600票差をつけての勝利。渡辺陣営は、「滝沢氏の背中が見えたと思ったら吉村氏の登場で1,000から1,500票、滝沢氏の票が上積みされた」と悔しがる。

冨田氏の市長退任後、緊急事態宣言であるにもかかわらず、約1か月市長不在だった池田市。市長選にかかった費用は約4,000万円というが、あらゆる意味で維新の「罪」は重い。

この記事をSNSでシェアする

関連記事

注目したい記事

  1.  鹿児島県警による事件隠ぺい疑惑を受けて今月19日に開かれた県議会の総務警察委員会で、県警側があたか…
  2. 7月19日、兵庫県議会では斎藤元彦知事の内部告発にかかる「文書問題調査特別委員会」(百条委員会)が開…
  3.  警察組織によるもみ消しや証拠隠滅の疑いが出ている、2023年2月に鹿児島県霧島市で起きたクリーニン…
  4. 鹿児島県警察が職員の非違事案(懲戒処分などがあった事案)の捜査記録の開示を拒んでいる問題で、開示請求…
  5. 19日、鹿児島県議会の総務警察委員会が開かれ、野川明輝本部長ら県警幹部が県議らの質問に答えた。わかっ…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る