宮路拓馬内閣府政務官の選挙収支に虚偽の疑い

今年10月に行われた衆議院議員総選挙で鹿児島1区から出馬して当選した宮路拓馬内閣政務官の陣営が、県選挙管理委員会に提出した選挙運動費用収支報告書に、告示前の後援会活動とみられる支出を数多く記載していたことが分かった。「選挙運動」と「政治活動」が全く区別されており、公職選挙法が求める報告書の記載内容から逸脱している状況だ。現状では虚偽記載にあたる可能性がある。

宮路氏側に事実関係の確認を求めたところ、内容を文書で送るようにとの指示。言われた通りに宮路氏の国会事務所に質問書を送ったが、回答期限を延ばした挙句、事実上の取材拒否となる短い文面のFAXを送ってくるという不誠実な対応だった。

■後援会活動経費が混在

ハンターが鹿児島県選挙管理委員会に開示請求して入手した宮路陣営の選挙運動費用収支報告書には、「選挙運動費用」ではなく「後援会活動」にかかった支出とみられるものがいくつも計上されていた。

例えば、収支報告書24ページにある広告費のうち8月3日支払いの137,500円(のぼり代:7月28日は契約締結日)、同月11日支払いの69,080円(看板代:8月2日は契約締結日)。総選挙の公示は10月19日、投開票が31日であり、時期的にみて後援会活動か政党活動にかかった費用とみるのが普通だ。
*下が報告書の該当ページ。以下、報告書の赤い書き込みはハンター編集部)

同様に、26ページにある食糧費のうち、9月3日の弁当代4,760円、9月4日の弁当代4,080円も選挙運動とは関係のない、後援会活動か政党活動の支出だった可能性がある。
*下が報告書の該当ページ)

人件費支出にも疑問がある。報告書の4ページにある205,000円、同日付72,000円、同日付72,000円については、領収書の記載に「10月1日~18日分」(*報告書の下が、問題の領収書のコピー)とあり、選挙前の働きに対する報酬だ。公示前でも立候補準備として労務者報酬を支払うことは可能だが、この期間、宮路陣営が後援会活動に注力していたことを考えると支出目的を質さざるを得ない。
*下が報告書の該当ページと領収書の写し)

宮路陣営がツイッター上に投降した画像なども確認してみたが、いずれも活発な「後援会活動」を示すものばかりだった。

■公示3か月前に「事務所開き 初穂料」

公示の3か月以上前に「選挙事務所開き」を行えば違法な「事前運動」となるが、それを疑わせる支出が、下の報告書34ページに出てくる「榊代1,360円」と「初穂料25,000円」だ。

神社が発行した初穂料の領収書を見れば一目瞭然(*下、参照)、但し書きには「事務所開き」と手書きされていた。選挙事務所が開けるのは、公示日、選管に立候補届出をする際に提出する「選挙事務所設置届」が提出された後。それまでに可能なのは後援会の事務所開きしかない。従って、8月の榊代や初穂料は選挙運動費用ではない。

報告書には、その他にも7月から借上げられた事務所の賃料など、活動実態からみて選挙運動費用ではなく、後援会活動もしくは政党活動にかかった費用とみられる支出が散見される。

“報告書の中に選挙運動費用以外の支出が含まれているのではないか?”――宮路氏の事務所に確認を求めたところ、「文書で質問内容を送れ」と指示されたため、永田町にある議員会館の事務所に質問書を送付した。質問事項は以下のとおりである。

1 収支報告書24ページにある広告費のうち、7月28日の137,500円(のぼり代)、8月2日の69,080円(看板代)は、選挙運動費用以外の支出ではありませんか?選挙運動費用以外の支出であれば、後援会活動にかかった費用か、政党活動にかかった費用か、ご回答下さい。

2 同様に、26ページにある食糧費のうち、9月3日の弁当代4,760円、9月4日の弁当代4,080円も選挙運動とは関係のない支出ではありませんか?選挙運動費用以外の支出であれば、後援会活動にかかった費用か、政党活動にかかった費用か、ご回答下さい。

3 4ページにある人件費のうち、10月18日に支出された205,000円、同日付72,000円、同日付72,000円は、領収書の日付によれば選挙前の働きに対する報酬のようです。これは選挙運動以外の支出ではありませんか?選挙運動費用以外の支出であれば、後援会活動にかかった費用か、政党活動にかかった費用か、ご回答下さい。

4 34ページにある榊代1,360円、初穂料25,000円は領収書の記載などから見て、明らかに選挙運動費用ではないものと思料いたします。後援会の活動費ではありませんか?

5 以上指摘させていただいた点以外にも、7月から借上げられた事務所の賃料など選挙運動費用ではなく、後援会活動もしくは政党活動にかかった費用とみられる支出が散見されます。精査された上、選挙運動費用以外の支出が何項目含まれているのか、ご回答下さい。また、間違いであった場合、修正されるか否かもご回答下さい。

「精査に時間がかかるため回答期限を延ばしてもらいたい」という連絡があったため承諾したが、数日後にFAXされてきたのは下の1枚だった。

 「木で鼻を括る」とはこういうことをいう。これは回答ではなく、事実上の取材拒否。精査に時間がかかると言っておいて、質問には答えないというのだから呆れた事務所である。

ちなみに、このFAXが送られてくる前日の12月9日、議員会館のエレベーターで偶然、宮路議員に出会った。名刺を出して「質問書をお送りしています」と挨拶して別れようとしたが、記者を呼び止めた宮路氏は「いつも厳しいご指摘をありがとうございます」と頭を下げた。慇懃無礼が実相であることは、このFAXを見れば明らかだ。

 

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