ヤジ排除・国賠原告2人が経過報告|苫小牧市で言論の自由考える市民集会

 一昨年7月に札幌市で起きた首相演説ヤジ排除事件で18日、地元警察を相手どる国家賠償請求訴訟の原告2人が苫小牧市での市民集会に招かれ、約60人の参加者を前に事件の経緯などを報告した。国賠原告が揃って公の場で排除問題を語るのは、訴訟の報告集会を除いては今回が初めて。

◇  ◇  ◇

集会を主催したのは、苫小牧で活動する「戦争に反対する市民行動・苫小牧会議」(川上一代表)。同会はこれまでも年に数回の頻度で人権問題などを考えるつどいを設けてきたが、昨年からのウイルス禍を機に集会などの自粛を余儀なくされ、今回の企画は1年10カ月ぶりの開催となった。報道などでヤジ排除問題を知った関係者が「重大な人権問題」と事件に関心を寄せ、国賠原告の大杉雅栄さん(33)・桃井希生さん(26)に声をかけて集会が実現した。

当日は地元民放・北海道放送(HBC)が制作したドキュメンタリー番組の一部を上映しながら、大杉さんらが排除事件の事実関係などを解説、公権力が表現の自由に介入したことの問題点を改めて指摘した。

「ネットなどにはヤジを『迷惑』とする意見も出ていますが、そもそも現場は公道上で、アイドルのコンサートのような私的な空間ではありません。百歩譲って、与党支持者から排除されるのならまだわかる。排除したのが警察だったのが問題なんです」(大杉さん)

「私が『増税反対』と叫んだ時、与党側にもそれなりの意見があったはずです。それを聴くことができたら、彼らと議論できた可能性もわずかながらあったんじゃないか。議論は民主主義の根幹で、それを警察に潰されたことへの憤りがあります」(桃井さん)

報告後の質疑応答では、安保法制違憲訴訟の原告団に参加しているという男性から「司法の反動化は甚だしく、ヤジ排除訴訟も必ず敗けると思う」と意見が上がった。これを受けた大杉さんは「裁判長が『立証責任は道警側にある』と言っていた」と報告、必ずしも裁判の行方に絶望はしていないとの思いを明かし、その上で「究極的には裁判所が何を言おうとヤジを飛ばす権利はあると言い続けたい」と表明した。

主催代表の川上一さん(69)は「当事者のお話は貴重で生々しく、いろいろな議論を喚起できた」と手応えを話し、国賠訴訟について「このような企画が少しでも支援に繋がればと思っている。激励と連帯の意を述べたい」と2人にエールを贈った。

札幌地裁で審理が続くヤジ排除訴訟は今月24日の第13回口頭弁論で結審、本年度内にも一審判決言い渡しに到ることになる。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

 

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