「極めて不適切」|わいせつ職員擁護の鹿児島県医師会に県議会からも厳しい批判

 新型コロナウイルス感染者の療養施設に派遣されていた鹿児島県医師会の男性職員が強制性交の疑いが持たれる行為に及んでいた問題について尋ねたハンターのアンケート取材に対し、9割以上の鹿児島県議会議員が、「極めて不適切」「県側の憤りは当然」などと回答。医師会の対応を激しく批判してきた塩田康一知事と県議会の足並みがそろう形となった。

 男性職員の言い分だけを取り上げ「強姦といえるのか疑問」「(警察からは)事件には該当しないと言われている」などと非常識な言動を繰り返していたことが明らかとなった池田琢哉会長ら県医師会上層部の姿勢に、懸念や批判の声が相次いでいる。

■被害女性の訴え、一方的に否定した県医師会長

 “事件”は、新型コロナウイルス感染者の療養施設となっている鹿児島市内のホテル内で起きた。鹿児島県医師会の男性職員が、コロナ患者そっちのけで、女性スタッフに複数回のわいせつ行為を行ったというもの。女性スタッフは「合意はなかった」として強制性交等罪で県警に刑事告訴している。

 県医師会の池田琢哉会長は今年2月10日、県のくらし保健福祉部を訪問。応対した部長らに「(性行為が)複数回」「強姦といえるのか」などと申し向けた上で、事件発覚が医師会長選挙絡みの陰謀であるかのような発言まで行っていた。(*下の文書参照)

 池田氏は、同月22日に開かれた県医師会の郡市医師会長連絡協議会でも事件の経緯を説明。その中で、次のように発言していたことが分かっている。

本人(医師会職員)によりますと、昨年8月下旬から9月上旬にかけて当該医療機関と宿泊療養施設内で複数回、行為を行った。そのうち、性交渉が5回で、すべて合意のもとであった

まあ、ちなみに本事案は短時間の間になされて数回性交渉が行われていることは双方の代理人弁護士の主張からも明らかで、強姦とは言い難いと思います

今日あったこういう情報をですね、ある程度かみ砕いて伝えていただければ、現状はこうなんだよということをですね、伝えていただければありがたいなと思います」

 前後して県医師会の常務理事も「会長が先ほどお話された通り」として池田氏に同調。もう一人の幹部は「降って湧いたようなこと」「そういうことはよくあること」「人騒がせ」などと暴言を連発していた。

 県のコロナ対策に不信を招きかねない愚行を許しながら、“ハレンチ職員擁護論”で議論のすり替えを図ろうとする池田氏らの姿勢に、県側の怒りが爆発。地元テレビ局の取材に、温厚な塩田康一知事が憤りをあらわに県医師会を批判するという事態になっている。

■県議会の9割以上が医師会批判

 では、県議会はどのように見ているのか――。ハンターは先週、コロナ患者の命を守るという重要な使命を負った事業の現場で患者そっちのけで性行為に及んだ医師会職員と、「合意」云々を喧伝し管理監督責任について一切言及しない池田医師会長らの姿勢を厳しく批判する記事を配信してきた立場から、現職の鹿児島県議会議員49人(定員51 欠員2)に対し質問書を送付。以下の内容を問うた。

質問1 今回の事案の問題点はどこにあると思うか?
質問2 テレビのニュース番組で、一連の池田県医師会長の対応に、塩田康一鹿児島県知事が怒りをにじませ「憤ってますよ」と答えていた。「合意があった」との説を喧伝することは、問題のすり替えに過ぎないと思料するが、どう思うか?
質問3 池田県医師会長の、「複数回の性行為があったから合意があった」という女性の人権を無視した一方的な見解について、どう思うか?
質問4 その他、本件についての考えがあるか?

 期限の4月15日までに送られてきたのは、会派として一括での見解を示した自民党県議団(37人)、公明党県議団(3人)、県民連合(5人)と日本共産党(1人)の県議による回答。3人の無所属議員からは回答がなかった。

 詳細は明日の配信記事に掲載するが、コロナ療養施設でのわいせつ行為について、ほとんどの会派・議員が「極めて不適切」「憤っているとの県側発言は当然」「より厳しく対応する必要がある」などと断罪。県議会全体で、県医師会を厳しく批判した形となっている。

 また、卑劣な行為に走った男性職員を庇い、被害を訴えている女性の立場や気持ちを踏みにじった池田氏らの言動については、さらに厳しい声が寄せられている。

「池田会長による『合意があった』との発言は、立場の弱い被害者の置かれた状況を(心理的状況を含む)一切無視し、身内である加害者を擁護するためだけのものです。そしてこの発言は、被害者をさらに苦しめる結果につながることから、極めて問題のある発言」
「池田医師会長らは、その犯罪行為を直視することなく、加害者擁護に終始し、結論ありきの内部調査でお茶を濁すことによって、この問題に蓋をしようとしていることから、県医師会全体のコンプライアンスが厳しく問われる問題」
「(池田)医師会長の『強姦といえるのか、疑問』等の発言は、被害を訴えている女性への拝領は微塵もなく、信じがたいもの」

 県知事、県議会、県庁内部がそろって鹿児島県医師会の姿勢を咎める展開となったことを受け、ある県議会関係者は次のように話している。
「人権やジェンダーの問題に敏感な世の中になったというのに、鹿児島医師会の会長や役員が『性交渉が複数回あったから強姦ではない』などという主張を行っているなんて、信じられなかった。ハンターが報じた録音データを聞いて、『これは酷い』と愕然となりました。医師会上層部の神経を疑う。選挙で医師会の世話になっている政治家は少なくないから(政治家は)批判しずらいだろうが、被害女性の傷口に塩を塗るようなこの連中の言い分を擁護しようもんなら、女性票はすっ飛んでいくことになるでしょうね。もし医師会上層部の肩を持とうという政治家がいるなら、自分のホームページやSNSに、医師会長の言い分をそっくりそのまま掲載してみるといい。次の選挙で寄ってくる女性はいなくなりますよ。

 そもそも、コロナ患者がいる療養施設で、医師会の職員が性行為に及ぶなんて、ちょっと考えられない。普通の民間企業なら即刻クビでしょう。医師会内部で調査するというが、一体なにを調査しようというのか?もしかして『合意のある、なし』に白黒つけるとでもいうのかな?警察沙汰になっているのに、そんな馬鹿な話はない。合意のある・なしは、捜査機関が判断することで、医師会の身内同士でああだ、こうだということじゃない。医師免許持ってるんだから、コロナ患者や被害を訴えている女性と、きちんと向き合うべきです。できないのなら、医者の看板を下ろすべきじゃないですか」

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