癒着の証明|福岡市環境局、道路清掃業務実態調査で業者に手心 

税金を使った役所の仕事を委託された業者が不適切な業務を行っていたとすれば、被害を被るのは市民である。不適切業務の実態が明らかになれば、不良業者は一定期間「指名停止」などの処分を受け、「入札」や「見積り合せ」から外される。

この当たり前のルールを福岡市が破り、厳しい処分を受けて当然の“手抜き”が確認された業者を逃がしていた。あろうことか、不良業者に業務の再委託まで行っており、「癒着」が疑われる事態となっている。

市環境局発注の道路清掃業務を巡る疑惑について、検証結果を報じる3回目。ハンターが市への情報公開請求で入手した文書には、信じられない手抜き仕事の実態が記されていた。(*市から道路清掃業務を請負っているのは2社。不適切な業務を行っていた会社をA社、他方の会社をB社と表記する)

■残されていた「不正の証」

前稿(「福岡市、道路清掃業務委託で業者と癒着か」)で示した市の内部文書「道路清掃業務委託 受託業者の業務の履行状況及び評価について」によれば、環境局はA社の仕事ぶりについて「良好とは評価しない」としながら「業務の不履行等は認められない」と矛盾する結論を出し、わざわざ「次年度の見積合わせへの参加は可能とする」という一文を加えていた。

結論を導いた『散水車やダンプ車の作業時間が概ね3時間程度であり、中には作業時間が極端に短い場合が散見される状況であった』という調査内容のうち、「3時間程度」が必ずしも正確な作業実態を表すものではなく、実働が2時間程度だった可能性が高いことも、詳述した。しかし、手抜きの実態は、そんなものではなかった。

下の文書は今年1月に起案・決済された「道路清掃業務委託 実態調査結果について」と題するA42枚の報告書(*赤と青の書き込みはハンター編集部)。赤く囲んだ「仕様書上、夜間の作業について、21時~5時の間に作業を行うように記載しているが、散水車が0時前に帰社している」という指摘を行ったのは、ハンターである。市はハンターの指摘を受けて、A・B両社の帳簿などを調べて、清掃業務に従事した車両の出庫及び帰社時間を確認していた。

「調査結果」の記述は衝撃的だ。『(A社)は、全体の約4割程度散水車及びダンプが作業開始時刻後3時間以内に帰社していた』――。調査対象となったのは、昨年8月から10月末までの3カ月間の業務。月曜から土曜まで毎日出動しての仕事のうち、4割が、いわゆる早帰り=手抜き仕事だった。表に示された数字で、散水車が39.4%、ダンプは41.7%「で不正な業務を行っていたことが分かる。

酷いもので、夜間21時から早朝5時までの作業時間でありながら、22時15分に帰社していたケースがみつかっており、車庫と現場の行き来に必要な30分~1時間を引くと、実働は1時間に満たなかった可能性が高い。B社の稼働時間が、すべてのケースで作業開始後6時間以上だったという調査結果とは雲泥の差だ。

市の調査報告には続きがあり、年間の中でも道路上のゴミが多いとされる10月の作業状況だけを抜きだしている。それが、下。落ち葉などが増える10月だというのに、A社の平均帰社時刻は散水車が午前0時2分、ダンプは0時7分という結果だった。B社の平均帰社時刻はすべて午前3時以降。コースが違うとはいえ、こなさなければならない作業量には差がなく、ほぼ毎日3時間未満の働きしかしていないA社の不正行為は明らかだ。これが、「業務の不履行等は認められない」という評価結果になるはずがない。

■課長どまりだった「決裁」

不可解な点がもう一つ。これまで述べてきた調査結果は、環境局循環型社会推進部収集管理課が作成したものだ。結果については局内で共有されたものと考えていたが、職員が起案した決裁は係長と課長のみで済まされていた(下の決裁文書参照)。

本稿で示した詳しい調査報告は、部長や局長に提出されることなく、昨日報じた「道路清掃業務委託 受託業者の業務の履行状況及び評価について」だけが、説明用文書として共有された可能性がある。ここでもう一度、「~評価について」の問題の部分を再掲する。

環境局収集管理課は、読めば子供でも分かる不適切業務の証を隠し、「業務の不履行等は認められない」という結論だけを市上層部に示した疑いがある。業者の不正に役人の不正が重なった形だが、それが「次年度の見積合わせへの参加は可能とする」という最終結論を残すための、組織ぐるみの不正だったとしたら、背景にあるのは役所と業者の癒着ということになる。実際にA社は、今年3月に行われた「見積り合せ」に参加し、道路清掃業務を受託している。

■「住民監査請求」の声も

市と業者の癒着が強く疑われる事態に、市民オンブズマン福岡の児嶋研二代表幹事は、次のように話している。
「市は、1日の業務を8時間と見積り、その分の業務委託費を支払っている。原資は市民の税金だ。それが、わずか数時間しか稼働していないかったとしたら、明らかな契約違反。民間の仕事できちんと業務をこなしていなければ、即刻契約解除になるはずだ。市が発注した業務だからこそ、もっと厳しく対処すべきで、『業務の不履行等は認められない』などという評価は、到底認められるものではない。市と業者の間に癒着があると疑われてもおかしくない」

事情を知った別の市民団体のメンバーからは、「住民監査請求を求めるべき」との声も上がっている。

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