入札疑惑|須崎・市民会館整備事業に批判の声

総事業費200億円を超える福岡市の一大プロジェクトの事業者が、入札参加1グループという、いわゆる「一者入札」によって決まった。市への情報公開請求で入手した文書や公表された関連資料を精査して見えてきたのは、積み上げられた整備方針が、一業者の要請を受けてあっさり変更されたという怪しげな経過。建設業界の関係者からは、市と特定企業グループとの癒着を疑う声が上がっている。

■疑惑の大型事業

老朽化した市民会館の立て替えに合わせ計画された「福岡市拠点文化施設整備及び須崎公園再整備事業」で、疑惑が浮上。ハンターは先月、その詳細を3回にわたって報じた。
・《福岡市大型開発事業に重大疑惑|須崎・市民会館整備で特定業者有利の入札
・《書き変えられた「要求水準書」|須崎・市民会館整備事業で重大疑惑
・《特定業者の提案丸呑み|須崎・市民会館整備事業で疑惑の「一者応札」

市は整備される施設の設計や建設に加え、一定期間の運営や維持管理まで含む「PFI方式」を採用しており、事業者選定は入札価格、設計提案、事業計画の妥当性などを総合的に評価する「総合評価方式」で行われた。

疑惑を招いたのは建物ではなく「駐車場」の整備方針だ。対象エリアは地下水位が高い場所のため、地下工事にコストがかかる。そのため多くの企業グループが「地下に駐車場を設けると、コストが大幅に合わないため、地上を認めてほしい」と要請したが、市は「地下駐車場」に固執し、「原案の通り」と業者側の要請をバッサリ切り捨てていた。

ところが市は、入札が近づいたタイミングで、ある業者の要請をあっさりのみ「事業者が提案できるよう要求水準を修正します」と方針転換。要求水準書を「地上」も可とする記述に書き変えるという行動に出る。

唐突な市側の変節に、入札に参加予定だった複数の業者がついて行けなくなり選定レースから撤退。その結果、入札では不適切とされる「一者応札」となっていた。

■矛盾する市側の回答

ハンターは、取材過程で市にいくいつかの疑問点をぶつけていたが、返ってきた答えは、役所特有の“木で鼻をくくったような”ものだった。

例えば、整備費見積りの妥当性については、何の説明もなく『適切であったと考えています』。要求水準を変更した理由については、『入札参加の意思をお示しいただいた事業者グループとの官民対話において、地下以外でも景観や利便性、安全性に配慮した提案が可能であり、事業者の提案に委ねてほしい旨の意見を複数のグループからいただいたため、市が求める性能を満足する内容であれば提案可能としたものです』と、答えにならない屁理屈で逃げを打つ。

さらに、“「地下」から「地上」へという重大な方針転換が入札間近に実施されており、公平性を欠くのでは”という質問に対しては、『PFI事業では、入札までに、市と事業者の間で質問・回答等を行い、必要に応じて要求水準等を変更することがあります。本事業においては、入札参加資格確認申請後にも質問・回答や官民対話を行うことを入札説明書においてお示ししており、公平性に欠けるとは考えておりません』――。市内部で積み上げた議論や、入札辞退を余儀なくされた業者側との質疑で示された市の主張を全否定したも同然のふざけた回答だった。

ある市の関係者は、呆れ顔でこう話す。
「率直な感想ですが、まじめに福岡市内で頑張っている市民や市内の企業を、福岡市がなめ切っているということです。ハンターの質問と市側の答えを見せてもらいましたが、役所がこんなデタラメをやってはいけない。「地下駐車場」の事業費見積りを適切としながら「地上案」を認めるというのでは、明らかな矛盾。景観や自然環境を重視した「地下駐車場」にした場合の整備費が妥当なら、「地上案」を認める必要はない。それまで、専門家を交えて何年も議論して「地下駐車場」を最適としたのでしょうから、予算面で問題がなければ最後までそれを通すのが普通。多くの業者が「地上案」を認めるよう要請しても、「原案の通り」と突っぱねていたのはその表れでしょう。それを、数日後に、特定業者の要請で突然方針を転換したのですから、不自然極まりない。それをおかしいと思わないのなら、福岡市の感覚は相当狂っている。しかも、「地上案」をのむよう市に要請した企業グループだけが残る形となり、一者応札……。市民をなめているということなんです」

別の建設業界関係者は、市の上層部と特定業者の関係について、次のように話している。
「福岡市役所内の一部の人間、おそらくかなり上層部ですが、特定の企業グループと運命共同体化しているのではないでしょうか。腐った体質と言っても過言ではありません。政令市でありながら、東京や大阪,名古屋などでは見られない、酷い田舎的市政で呆れるしかない。他の自治体に詳しい方々からも、福岡市は腐っていると言われました」

 

 

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