福岡県田川市の異常事態|情報公開審査請求に前代未聞の「弁明書取り下げ」

異常事態である。福岡県田川市(二場公人市長)で百条委員会の対象となっている業者選定プロポーザルに関する情報公開を巡り、福岡県田川市がルールを無視した制度運用で、でたらめぶりを露呈した。

■前代未聞!市長名の「弁明書」を取り下げ

先月中旬、田川市が11月10日付で、下に示す文書を郵送してきた。田川市情報公開条例の規定に従ってハンターの記者が提出していた、非開示決定への「審査請求」に対して、同市がいったん発出した「弁明書」を取り下げ、新たな弁明書を再送付するという内容。行政機関が決裁を経た上で文書化した非開示決定についての理由を、一方的に破棄するというのだ。長年行政機関への情報公開請求を行ってきた記者が、初めて見る非常識なやり口だった。

問題となった非開示情報とは、昨年からハンターが追及してきた「田川市 一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」業者選定プロポーザルで事業者に選ばれた「早雲商事」と「クリーン北部九州」の『業務提案書』である。

田川市は昨年6月、ハンターの記者が求めた業者選定プロポーザルに関する文書の情報公開請求に対し、実際に契約した「早雲商事」と「クリーン北部九州」の社名や、両社が提出した業務提案書、審査委員会の構成、審査の際に審査委員が点数を付けた「評価票(個票)」などを非開示にして隠ぺい。その後、契約業者名の非開示決定を不服として審査請求したところ、弁明書(市側発出)と反論書(記者提出)のやり取りを経て、「田川市情報公開・個人情報保護審議会」が今年3月に「開示すべき」と答申し、市は同月10日付けで非開示処分を取り消す裁決を下していた。田川市が、間違いを犯していたということだ。

この時点で、残る非開示文書のうち業務提案書と審査委員会の構成及び審査個票は隠されたままの状態だったが、審査請求を行うことのできる期間(3ヵ月)が過ぎていたため、記者は今年4月、業務提案書に絞って再度開示請求。すると、昨年黒塗り文書さえ出さずに全面非開示にした田川市が、何故か部分的に開示するという不可解な対応をとってきたため、不十分だとして審査請求していた。

請求に対する市側の「弁明書」が送られてきたのは6月中旬。記者は代理人弁護士をたてて反論書を提出し、審議会の答申結果を待っていた。

ところが、前掲「弁明書の送付について」が送られてきた先はハンターの記者。これでは代理人の意味がない。しかも、行政機関が責任をもって決裁し、作成されたはずの文書を「取り下げる」という、役所の自己否定ともいえる内容だった。

■機能不全の田川市役所

弁明書取り下げ文書が記者のもとに届いた数日後、今度は代理人弁護士の事務所に、下の「審議会諮問通知書」が郵送されてくる。

 記者の審査請求を受けた市が、11月22日に田川市情報公開・個人情報保護審議会に「諮問」したことを報告する文書だ。弁明書取り下げというルール無視の通知は直接記者に送っておきながら、規定通りにやってますと言わんばかりに諮問したことだけを弁護士事務所に知らせるという姑息さ。非常識な対応に、記者の代理人弁護士が質問事項を記した通知書を送ったのは言うまでもない。

通知書では、“審査請求人としては、代理人に依頼をしていたにも関わらず、直接本件書面が送付されてきたことに困惑しているところであり、代理人としても、貴庁の対応は俄かには理解しがたいものであると思料するとともに、本件書面についての法的な位置付けを検討しなけれぱならない”とした上で、次の2点についての回答を求めた。
① 従前提出されていた弁明書を取り下げて新たに弁明書を提出するという行為について、どのような法的根拠に基づいて行われたものか?
② 審査請求人の代理人ではなく審査請求人本人に直接ご送付されたことについて、どのような法的根拠に基づいて行われたものか?

この代理人弁護士の質問に対する田川市の回答は、①に対して「行政不服審査法に基づき弁明書を送った」、②に対しては「法的根拠はない」という、ふざけたもの。開き直ってまともな回答を拒否した格好だ。役所として説明責任を果たす意思がないのだろう。前後して市が弁護士事務所に送ってきたのが、下の文書である。

代理人をすっ飛ばして都合の悪い文書だけ当事者に送るという手続きの瑕疵を指摘された田川市が、11月10日付で記者宛てに送付した内容と同じものを、改めて代理人に送ったということだ。反論書提出期限は、当然ながら11月24日から12月13日へと変更されていた。自分たちで決めたルールや決定事項を、平然と変える神経は理解できない。市長の指示なのか、役人がバカなのか分からないが、いずれにしてもこの行政機関の言うことはデタラメばかりだと考えた方がいい。

情報非開示などに対する審査請求は、当該非開示決定を行った行政機関が請求者に対して「弁明書」を作成・発出し、請求者が「反論書」を提出。これを受けた行政機関が審査会(田川市の場合は「田川市情報公開・個人情報保護審議会」)に諮問し、審議会の答申を経て最終的な処分が決まるという仕組みだ。今回のように、事情が変わるたびに「弁明書」を取り下げて作り直すという恣意的運用がまかり通れば、審査はエンドレスの状態になってしまう。こんな無法が許されていいわけがない。

そもそも、自分たちが決めた開示内容を何度も変更したり、弁明書を取り下げて時間稼ぎするなど他の自治体ではあり得ない話。田川市の行政組織が、機能不全に陥っている証左だろう。責任はもちろん、田川市のトップである二場市長にある。

特定業者への便宜供与や、関連文書の隠蔽が確実視される「田川市 一般廃棄物(ごみ)収集運搬業務委託」業者選定プロポーザルについては、市議会に百条委員会が設置され議論が続いている状況だ。悪行が露見するのを恐れる二場市政は、業務提案書や審査委員会の構成、審査個票といった重要証拠を、最後まで隠すとみられている。公表すれば、それらの情報によって、入札妨害や贈収賄などの“事件”に発展する可能性があるからに他ならない。市側が百条委の記録提出を頑なに拒む本当の理由を、多くの市民はまだ知らない。

 

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