今月19日、東京地検特捜部が東京都千代田区の「トライベイキャピタル」(三浦清志社長)という投資会社や同社の社長宅に家宅捜索を行った。決してメジャーとはいえない会社だが、関係者の間では“悪い意味で”知られており、ハンターでは2021年8月と12月に、同社絡みの疑惑について報じていた(⇒「ざわつく女性政治学者の周辺|訴えられた夫の会社 」・「裁判と刑事告訴で揺れる政治学者・三浦瑠璃氏の夫の会社」)。そこで登場していたT社こそ、トライベイキャピタルのことだ。
■疑惑の社長の妻は三浦瑠璃氏
三浦清志社長の妻である三浦瑠麗氏は、才色兼備の政治学者としてメディアや永田町で知られる存在。瑠麗氏の会社「山猫総合研究所」もトライベイキャピタルと同じビルに入居している。
特捜部の捜索があった翌日、瑠麗氏は自社のホームページに《今般、私の夫である三浦清志の会社が東京地方検察庁による捜索を受けたという一部報道は事実です。私としてはまったく夫の会社経営には関与しておらず、一切知り得ないことではございますが、捜査に全面的に協力する所存です。また、家族としましては、夫を支えながら推移を見守りたいと思います》と特捜部の「ガサ」を認めるコメントを出している。
一昨年、ハンターで疑惑を報じた時は警視庁がトライベイキャピタルを狙っている様子だった。しかし、今回動いたのは泣く子も黙る東京地検特捜部。“何もありませんでした”で済むはずがない。
■各地で金銭トラブル
トライベイキャピタルの主な業務は太陽光発電システムなどへの投資事業だ。しかし、これまで全国各地でいくつものトラブルを抱えていたことが分かっている。
兵庫県福崎町での太陽光発電システム建設にあたっては、京都市の会社と工事代金などの支払いで民事訴訟に。同じ太陽光発電システムを巡って、元ソニー会長兼CEOの出井伸之氏(故人)が取締役だった「META Capital」(本社・東京都港区)とその関連の「マーキス」(本社・東京都千代田区)との間で民事訴訟になっている。
また、META Capitalの裁判資料には《麻布警察署長宛に詐欺罪で告訴状を提出することを検討》との記述もあり、今回のガサは、META Capital関連の詐欺容疑ではないのかともみられる。
ハンターが入手した京都市の建設業者X社やMETA Capitalとの民事訴訟の資料などから、トライベイキャピタルは、「STC3」という合同会社を設立して進めていた兵庫県福崎町の太陽光発電システムの建設が、X社とのトラブルで進まないにもかかわらず、META Capitalやマーキスから10億円を出資させたことが捜査ターゲットになっているのではないかという見立てだ。
トライベイキャピタルとMETA Capital&マーキスの裁判資料によれば、《太陽光発電の事業開発の大前提となる事業用地の売買契約が解除され、第三者に移転登記がされている重大なトラブルが生じていた。にもかかわらず(トライベイキャピタルは)このことを認識しながら事実を秘匿し、相手方を誤信させて10億円もの太陽光事業への投資を実施させた》、《本事業の開発が順調に進んでいると虚偽の説明をし、未だ事業権利の取得すら完了されていない》などとして、トライベイキャピタルの問題点が追及されていた。
疑惑を裏付ける材料もある。現在、太陽光発電システムの開発には近隣住民の同意が必要となっているケースが大半だが、X社とトライベイキャピタルとの訴訟記録には《(トライベイキャピタルは)何一つ近隣住民の同意及び行政からの許可の取得を行うことができませんでした。(トライベイキャピタルの)能力不足にほかなりません》と厳しい言葉が記されている。
トライベイキャピタルが信頼度に欠けるのは、その名称や会社所在地の不透明さからだ。X社との民事裁判では、兵庫県福崎町の土地と太陽光発電システムの事業権利(ID)の契約書にあるトライベイキャピタルの住所は東京都港区虎ノ門。しかし、地元の自治会に配布された書面には、東京都千代田区永田町の住所となっていた。ちなみに捜索されたのは千代田区の方である。
係争になっている福崎町にある予定地の登記簿謄本を取得すると、所有権は現在、名古屋市の会社。トライベイキャピタル、STC3は「処分禁止仮処分」を設定しているだけで、自社のものではなく、META Capitalなどから出資を受けていたことは明確だ。
META Capitalとマーキスが東京地裁に出した書面には《(META Capitalの)出資金が口座にほとんど残っていない》ともあり、トライベイキャピタル・清志氏への疑惑は益々深まる。
あるトライベイキャピタルの関係者は、次のように話している。
「清志氏は、奥さんの瑠麗さんが有名であることを利用し、相手を信じ込ませ事業を拡大してきた。瑠麗さんを訪ねて著名な政治家がよくやってくるので、それも信用をつける道具の一つとしてうまく利用してきた。清志氏は、確かに英語が堪能で、ドイツの大手企業と合弁をやっていた。だが、経営者としての手腕には疑問符がつく程度の能力なので、トラブルが絶えなった。事件となれば政治家の名前も浮上するかもしれません」
今後どう捜査が展開するのか注目だ。