鹿児島県医師会、職員わいせつ事件で「人権無視」の記者会見|県への報告に食い違い|「合意があった」を既成事実化

新型コロナウイルス感染者の療養施設で、鹿児島県医師会(池田琢哉会長)の男性職員が女性スタッフに対し強制性交の疑いが持たれる行為に及んでいた問題で、同医師会は先月27日、塩田康一知事に内部調査の結果をまとめた報告書を提出。直後に記者会見を開き、男性職員を「停職3か月」の懲戒処分にしたことを公表した。会見冒頭で池田会長が、“形ばかりの謝罪”を行っている。

処分の前提となったのは、会見で示された「合意に基づく性行為だった」とする医師会の調査結果。わいせつ事件発覚直後から続く池田会長らの一方的な主張に沿った形で幕引きを図った形だが、鹿児島県への情報公開請求で入手した資料から、会見での説明が県に提出された報告書の記述と整合性を欠く、「人権無視」の内容だったことが明らかとなった。

■県への報告は「蓋然性が高いと思料される」だった

下は、鹿児島県への情報公開請求で入手した9月27日に県医師会が県知事あてに提出した「報告書」。11ページに及ぶA4判の報告書には、調査経過と調査の末に下した処分内容、処分理由などが記されている。

 その中の『第6 職員の処分』で医師会は、男性職員の性行為について「合意の上である蓋然性は高いと思料される」とする見解を前置きし、外部からは確認することのできない同職員の職務上の功績や評判を列挙。さらに「一定の社会的な制裁を受けた」などと勝手に決めつけ、「情状酌量の上、停職3か月の懲戒処分」を下したとしている。(*下が問題の記述があるページ。文書中の赤いアンダーラインはハンター編集部)

蓋然性」とは、ある事柄が真実として認められる確実性の度合いのこと。つまり県医師会は、「合意があった可能性は高いが……」という意味の断定を避けた表現で、県への報告書を作成していた。

しかし、報告書提出直後に開いた会見で県医師会の顧問弁護士・新倉哲朗氏(和田久法律事務所)は、男性職員の行為について、県への報告との整合性を欠く形となる「合意に基づく性行為だった」と断言。たった1回聴き取りを行っただけの“被害女性” の人権を、人の命を守るのが使命の医師と、いかなる相手であろうと「人権」を守るべき立場の弁護士が、なんの躊躇もなく踏みにじった。

■捜査の素人が刑事事件に“判決” ― 「合意あった」を既成事実化

被害を訴えている女性は今年1月、鹿児島県警に告訴状を提出しており、捜査の素人である民間団体の県医師会が、警察や検察の動きを無視して犯罪の疑いがある行為に白黒をつけた形。池田氏や新倉弁護士がどれほど偉いのか知らないが、捜査機関の結論を待たずに、彼らが刑事告訴事案の“判決”を出すのは間違いだろう。県医師会は、“鹿児島県には警察も検察も裁判所もいらない”と言ったも同然。こんな無法が許されていいはずがない。

県への報告書にある「蓋然性が高いと思料される」と、会見での「合意があった」という断定は明らかに食い違う。これが意図的に行われたものであることも明白だ。県医師会は、確たる証拠がない“推定”を断定的に公表することで、「合意があった」の既成事実化を狙ったとしか思えない。

卑劣なたくらみが功を奏したのは確かだ。医師会の会見内容を伝えた鹿児島メディアの報道内容を確認したが、NHKを除いて「合意があった」に疑問を呈した報道機関はなかった。医師会の公表内容に何の疑問も抱かず、言われたままをタレ流す輩に、「人権」について語る資格はあるまい。

■聞いて呆れる「社会的制裁」

もう一点、県医師会の報告書には看過できない記述がある。実は、ハンターの配信記事も含めて、わいせつ行為を行った医師会男性職員の名前がメディアの報道の中で公表されたことは一度もない。県医師会は「(男性職員が)一定の社会的制裁を受けたものと考えます」と勝手に決めつけ、「情状酌量」の理由の一つにしているが、顔も名前も知られていない男性職員が「社会的制裁」を受けているとは思えない。

そもそも県医師会は、わいせつ事件を起こした男性職員が所属する組織。その医師会が、自分のところの不祥事に第三者的評価を下すことなど許されるわけがない。まさにお手盛り。医師会の調査結果は、本当に弁護士が3人も関わっていたのか、疑いたくなるお粗末さだ。

ハンターの取材によれば、医師会が設置した調査委員会のメンバーは、医師会役員が4名、事務局から5名、医師会側の弁護士が2名、中立の立場の弁護士が1名の計12名。最後に決まった弁護士は中立の立場とされているが、推薦したのは医師会側の弁護士だという。池田会長の息がかかった委員が過半数を占めており、著しく公平性を欠く構成だった。やはり「お手盛り調査」との批判は免れまい。

調査委員会は少なくとも5回以上開かれた模様で、その結果を受けた同医師会の懲罰委員会が決めたのが、「3か月間の停職」という軽い処分。本来なら医師会の内規にある「諭旨退職・懲戒解雇事由」にあたるはずの事案を、「社会的制裁」「合意があった」などと一方的な理屈をこねて「情状酌量の上」に決めたというのだから、身内と組織を庇うための身勝手さには呆れるしかない。

■「結論ありき」の卑劣な調査結果

事情を知った県関係者の間からも、厳しい批判の声が上がる。
「“合意があった”という結論ありきで始まった話だ。処分は当然、軽いものになるだろうと踏んでいた。ここまで引っ張ったのは、ただの時間稼ぎ。池田会長ら幹部は、調査委員会のスタート前に“合意があった”と言いふらした手前、いまさら“強制性交だった”という結論を出すわけにはいかなかった。合意がなかったとすれば、女性の人権を踏みにじった池田さんは会長を辞めざるを得ないのだから、はじめからこうなることは分かっていた」

確かに、池田体制下の県医師会で、いまさら「合意はなかった」という結論が出せるはずはない。コロナ療養施設内でのわいせつ行為について取材を始めていた報道機関の動きを知った池田会長は今年2月10日、新型コロナ対策を所管する県くらし保健福祉部に出向き、『強姦といえるのか、疑問』、『複数回』、『(警察からは)事件には該当しないと言われている』などと被害を訴えている女性の人権を無視した発言を連発。さらに、同月22日に開かれた「郡市医師会長連絡協議会」でも、「本人(わいせつ行為を行った男性職員)によりますと、昨年8月下旬から9月上旬にかけて当該医療機関と宿泊療養施設内で複数回、行為を行った。そのうち、性交渉が5回で、すべて合意のもとであった」、「まあ、ちなみに本事案は短時間の間になされて数回性交渉が行われていることは双方の代理人弁護士の主張からも明らかで、強姦とは言い難いと思います」、「今日あったこういう情報をですね、ある程度かみ砕いて(関係者に)伝えていただければ、現状はこうなんだよということをですね、伝えていただければありがたいなと思います」などと述べていた。

一連の池田発言は、鹿児島県への開示請求で入手した記録文書や、ハンターが入手した郡市医師会長連絡協議会での発言データによって明らかになっている。(以下、県が開示した文書と録音データ)

本人(医師会職員)によりますと、昨年8月下旬から9月上旬にかけて当該医療機関と宿泊療養施設内で複数回、行為を行った。そのうち、性交渉が5回で、すべて合意のもとであった」(池田会長)

 

まあ、ちなみに本事案は、短期間の間に重ねて数回性交渉が行われていることは双方の代理人弁護士の主張からも明らかで、強姦とは言い難いと思います」(池田会長)

 

調査委員会設置前の池田医師会長による「合意があった」との決めつけ発言は、被害を訴えている女性から聞き取りを行う、はるか以前のもの。もちろん、鹿児島県警が受理した告訴状の内容さえ確認していない段階で発信された暴言だった。しかも、県が開示した上掲の「県医師会池田会長の来庁結果について」にあるとおり、「警察は動かない」という事前の虚偽情報まで流して“もみ消し”を図った形跡があり、塩田知事の周辺や県議会からも厳しい批判の声が上がっていた。

被害を訴えている女性が刑事告発に踏み切ったのは今年1月。現在も県警の捜査が続いており、結論は出ていない。池田会長らの「合意」発言に引っ張られ、警察や検察の判断を無視して犯罪行為に白黒をつけた形の県医師会は、捜査結果が「合意はなかった」あるいは「真偽不明」となった場合、どう責任をとるのだろうか。

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