衆・参補選、現実味帯びる「2勝3敗」

全国で統一地方選の前半戦がスタートした。後半には岸田政権の真価が問われる衆・参五つの補欠選挙も行われるが、「2勝3敗」が現実味を帯びる展開となっている。

■有田氏出馬で注目の山口4区

ある自民党の大臣経験者は、「岸田総理は、前半戦の結果が気になって仕方がないそうです。後半に控える衆議院と参議院の補欠選挙の結果いかんで解散総選挙も視野に入ってきますからね」と述べた上で、「補選を2勝3敗で負け越せば、岸田降ろしがはじまりますよ」と不気味な予想を口にする。

衆議院の補選が行われるのは安倍晋三元首相の死去に伴う山口4区、引退した岸信夫前防衛相の山口2区、政治とカネの問題で議員辞職した薗浦健太郎氏の千葉5区、現職が知事に転身した和歌山1区の4つ。これに現職議員の安達澄氏が知事選出馬のため辞職した参議院大分選挙区が加わる。

まず、自民党に衝撃を与えたのが、前参院議員のジャーナリスト・有田芳生氏の出馬表明。立憲民主党公認で同氏が立候補するのは、安倍元首相の地元山口4区なのだ。出馬会見で有田氏は「保守王国の山口、それも安倍元首相の地元となればなおさらです。しかし、野党候補がいなければ選挙になりません。争点は戦後最長の安倍政権の検証と旧統一教会です。旧統一教会は救済法が国会でできたから終わったという世論もあるがそんなことでは終わりません。ここ山口4区、安倍元首相の地元では旧統一教会(現在の世界平和統一家庭連合)のことを語るのは、タブーと聞きます。それを黙ってみているわけにはいかない。黙することなく戦います」と決意を語り、旧統一教会と安倍元首相の関係、さらには安倍政権の検証を争点に戦うことを宣言した。いずれも、自民党が最も触れられたくない課題だ。

旧統一教会を巡っては、現在、文化庁が質問権を行使して宗教法人審議会で「解散」についての審議が行われている最中。そして、安倍政権の検証となれば、森友学園、加計学園、桜を見る会などの安倍スキャンダルが含まれることになる。倍派の国会議員が硬い表情でこう話す。
「安倍元総理のホームグラウンドということで補選の中では一番注目を浴びるのが山口4区。本来、無風のはずが知名度ある有田氏にガンガンやられると、旧統一教会との関係を始めとする安倍スキャンダルが全国的に広がりかねない。これは、やばい。今、確実に勝てるのは、岸さんの地元の山口2区だけではないか。山口4区も安倍元総理の威光で勝てる公算は大ではあるが、他の3つは危ない。補選は2勝3敗で負け越すのではないか、という危機感が広がっている」

■苦戦必至の千葉5区

千葉5区は、自民党の元外務副大臣・薗浦健太郎氏の地盤だった。薗浦氏を巡っては、政治資金パーティーのカネを収支報告書に計上しない「闇パーティー」を開催していたことが発覚。東京地検特捜部が捜査に乗り出して罰金刑と公民権停止が言い渡され、議員辞職に追い込まれた。後継には、昨年の参議院選挙にも立候補した英利アルフィヤ氏を擁立した。

野党は、立憲民主、日本維新、国民民主、共産の各党が候補者を立てたことで大激戦となりそうで、石井氏に近い県議が内情を打ち明ける。
「『自民党は薗浦氏の政治とカネの問題を反省し、候補者擁立を見送るべきだ』との声があったのは事実です。令和のハマコーと言われている石井準一参議院議員も候補擁立に消極的でしたが、麻生派のごり押しで英利氏に決まったという経緯があります。野党が乱立しそうなので、自民党が普通にやれば勝てますが、地元はしらけています。ダメじゃないかな」

■二階氏が恐れる維新に勝機

和歌山1区は、国民民主党の岸本周平氏が県知事に転出したことを受けての選挙。自民党は、閣僚経験のある鶴保庸介参議院議員の擁立を決めるとみられていたが、二階俊博元幹事長と対立し、衆議院転出を狙う世耕弘成参議院議員が「待った」をかけ、元職の門博氏に逆転決着した。

「二階氏が鶴保氏を推していたのは、日本維新を恐れたからです。門では勢いのある維新の候補に負ける可能性がある」と話すのは地元の県議。告示を前に、どうやらそれが現実になりつつあるという。

維新が公認した和歌山市議の林ゆみ氏は、昨年の市議補選で自民党候補の得票数を上回って当選。世論調査の数字でも、門氏と林氏の差は「2~3ポイント以内」と伝えられる。

「和歌山1区の補選は、大阪府知事選のあとではじまります。要するに、人気抜群の大阪府の吉村洋文知事が、おそらく圧勝してその勢いで応援にくる。そうなると、和歌山1区は都市部である和歌山市だけが選挙区なので、あっという間に維新旋風が吹き荒れる。自民党の世論調査では鶴保氏がダントツ1番で、かなりの差がついて門、維新候補の順だった。鶴保さんでも門でも勝てそうだということで門に落ち着いたが、その選択は間違いだったかもしれない」(前出・県議)

■参院大分は野党優位か

参議院で唯一の補選が行われる大分は、旧社会党の党首から首相になった村山富市氏の地元。伝統的に野党系が強いことでも知られる。昨年の参院選では自民党の候補が勝ったが、2019年は野党の安達澄氏(大分知事選に挑戦するため参院議員を辞職)が当選。2021年の総選挙でも、3つの小選挙区のうち、自民党が2、野党が1と拮抗している。

補選で、自民党は東京でクラブを経営する白坂亜紀氏を、立憲民主党は吉田忠智参議院議員を擁立した。吉田氏は社民党の元党首で現在は立憲民主党所属のベテランだ。自民党のある地方議員が本音を漏らす。
「全国的にはそれほどでもないが、吉田さんは大分では非常に知名度があります。普段は東京で高級クラブを経営している白坂氏は、出身が大分というだけで、どうも市民目線から見るとピントがずれている感がある。話を聞いていても、政治評論家のような語り口調に違和感を覚えるという有権者が目立つ。勝つのは厳しいのではという声が多い」

まさかの「2勝3敗」となった場合、岸田文雄首相が苦境に追い込まれることは確実。そして、自民党にとっては最悪の予測が現実となる可能性は否定できない。

「2021年の総選挙に続き昨年の参議院選挙で勝利し、黄金の3年となるはずだった岸田総理だが、補選で負け越しとなれば周辺は騒がしくなる。ウクライナ訪問で支持率もアップすると思っていたが、それほど反映されていない。公職選挙法の改正で10増10減となる次の衆議院選挙の調整もあって、ますます逆風となるはず。責任論が噴出すれば解散総選挙に打って出ざるを得ないだろう。総理自身も危機感を持っており、世論調査の数字ばかり気にしている」(自民党幹部)

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