徳島市・史上最年少女性市長、子育て支援見直しに「リコール」の声

ツイッター世論が政権を揺さぶり、検察庁法改正案が見送られた。「民意」が政治を動かす可能性を示した出来事だったが、ある地方自治体で、市長の政策判断の撤回を求める市民の呼びかけが広まっている。

騒ぎが起きているのは、今年4月の市長選で市政トップが交代したばかりの徳島市。人口約26万人の同市では、2期目を目指した遠藤彰良前市長を破った新人の内藤佐和子氏(36)が、史上最年少の女性市長として注目を集めていた。

市民から大きな期待が寄せられていたはずの内藤市長が、就任早々の唐突な行動で、徳島を揺るがせている。

■新市長が保育関連予算を唐突に見直し

6月3日、内藤市長は記者会見で、市が待機児童解消のために2020年度の当初予算に盛り込まれていた民間の認定こども園や保育園の施設整備に対する補助事業を見直す方針であることを発表する。

理由として挙げたのは財政圧迫と供給過剰。市長は、「未来の子供たちに借金を背負わせてはならない」という。これにより、2021年度に約500名の受け皿ができる計画が白紙になった。

唐突な方針転換に、子育て世帯を中心に市民の反発が強まったのは言うまでもない。事業予算は約16億円だが、国や県の補助もあり、実質的な市の負担は2億円程度。前市長時代の決定事項とはいえ、市議会の承認を得ており、公募により事業者も決定していた。

4月の市長選では、内藤氏自身が“子育て支援の充実”を公約に掲げて当選した経緯もある。事業見直し発表後、驚いた保育事業者らが市に抗議文を提出したが、内藤市長が「公務」を理由に対話に応じなかったことから反発は大きくなった。

■方針撤回求め広がる署名活動

この状況を看過できないと立ち上がった市民ら5名が発起人となり、6月9日から署名を呼び掛けるオンラインサイト(https://www.change.org)などで活動を開始。補助事業見直しの早期撤回と整備の即時開始を求めた呼びかけに対し、6月17日正午現在で500名を超える賛同者が集まる状況となっている。署名活動はネット上以外に、所定の用紙への直筆での書入れも行われている。

呼びかけ人の篠村孝明さんは「予想以上に反響が大きく、驚いている。直筆署名がオンラインよりも多く集まっており、数千単位になると思う。民意を市長に直接伝えたい」と話す。呼びかけ人らは、市議会6月定例会開催中の6月23日に、市長に署名を手渡す予定で、署名活動の締め切りは6月20日(土)午後6時としている。

■就任から2か月で「リーコール」の声も

内藤市政に対しては、TwitterなどSNSでも事業見直しの撤回を求めるコメントが並ぶ。

「少子化は進んでも、共働き家庭は増える。子育ての大変さを知る市長だと思っていたのに」
「見直し理由の説明が不十分」
「対話を重視するという公約に違反している。許せない」

内藤市長への期待が大きかっただけに、風当たりはより強くなる。

署名活動に参加したという市内在住の女性(50代)は次のように話す。
「子育て事業を見直したり、市民との対話に応じないなど、ずいぶん言っていたことと違う。公約が守られていない。子育て中のお母さんたちの多くが内藤さんに期待して投票したのに、裏切られた気持ちでいっぱいだろう。署名してくれた若いお母さん方は多い。市長は、早く方針を撤回してほしい」

内藤市長に対しては、取材した市民から「リコール(解職請求)」の声さえ上がる始末で、市内在住の40代男性も呆れ顔だ。
「徳島に長年住んでいるが、就任2か月でリコールの話が出る市長なんて聞いたことがない」

市長選出馬表明後の今年2月、内藤氏は自身のツイッターで、「友人が保育園落ちた」と前置きし、子育て環境の実情についてこうコメントしていた。「(保育ニーズ把握と保育士の配置適正化が)できないないならできないなりの、市民が納得できる理由の開示が必要だと思う」――市長となった今、内藤市長本人に求められている内容である。(下、参照)

(東城洋平)

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