福岡県大任町永原譲二町長「入札結果公表」の実態|隠蔽必至の不都合な真実

 入札結果非公表を国土交通省や総務省から「入札契約適正化法違反」と指摘され、改善指導を受けても方針を変えようとしなかった福岡県大任町の永原譲二町長が、先月14日に会見を開き、4月1日から公表を再開すると発表した。

 指定暴力団「太州会」の幹部が逮捕されたことで「状況が改善した」というのが方針転換の理由だというが、とんだ茶番。永原氏がどうしても隠蔽したい入札結果が公開される可能性は皆無に等しい。

■口先だけの「入札結果公開」

 「ヤクザが、落札業者に1,000円のそうめんを1万円で売りつけた」、「町民を守るため入札結果の非公開を続ける」などと強弁し、違法行為を正当化してきた永原氏。会見を開いて4月から入札結果を公表すると述べたが、同氏の発言内容を確認したところ、もっとも重要な、永原支配体制の下で繰り返されてきた公共工事の不正を示す情報は、依然として非開示状態になる可能性が高いことが分かった。

 大任町役場に確認した永原氏の発言内容を整理するとこうなる。

・今年4月からの入札結果を公表する。公表文書は役場玄関口にある掲示板に貼り出す。

・2021年7月から今年3月までの入札情報を公開するが、関係する16の業者に「開示・非開示」の是非を確認してからということになる。

・それ以前の入札結果については役場玄関口にあるの掲示板に貼り出していたため、違法性は問われていない。開示請求があれば検討する。

 結論から述べるが、これ口先だけの巧妙な隠蔽。永原氏が一番隠したかったダミー会社を使った業界支配の実態は表に出ない。

 永原氏が何としても隠したいのは、ハンターが同町に開示請求して不開示決定が出される以前――つまり2021年6月までに執行された町発注工事の情報だ。この事案の隠蔽に走った理由は一つしかない。

■「2021年7月から非公表」は真っ赤なウソ

 大任町は、町発注工事の入札結果や契約書、積算書、施工体系図など他の自治体ではあたりまえに開示される情報を「非開示」にしてきた。ほとんどの場合、非開示理由は「公にすると、人の生命、健康、生活、財産または社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施期間が認めることにつき相当の理由がある」(大任町情報公開条例 第7条第1項第3号)というもの。しかし、「1,000円のそうめんが1万円」というあやふやな話以外に具体的な事例が示されているわけではなく、法律で公開を義務付けられた入札結果や施工体系図まで非開示にする理由としては妥当性に乏しいものだった。

 町発注工事の実態のうち、露骨な隠蔽の対象となっていたのが業者の落札状況。どの自治体でも担当課の窓口に置いてある「入札結果表」を、大任町は一切公表していなかった。一昨年6月に同町の総務企画財政課に入札結果非公開の理由について確認した時、課長はこう説明していた。

 過去のことはあれなんですが、どうも、過去にそういった情報を基に、町内の業者の方に、反社会的勢力の方が、どうも圧力をかけたという事例がどうもあるみたいで、こういう法律のことをお話しいただいたのはその通りなんですが……」(同課課長)

 つまり、入札情報を非公開にしたのは、昨年6月よりはるか以前。永原氏は非公開にした時期を「2021年7月から」としてきたが、この主張自体が真っ赤なウソなのだ《*参照記事⇒福岡県大任町が違法行為|驚きの「入札結果非公開》。組織ぐるみで公共工事の情報を隠蔽しているのは確かだろう。汚れまくっても永原町政が表に出せない情報とは、ダミー業者や町長側近を使った町発注事業の実態だ。

■ペーパー業者、6年間で約19億円受注

 下が、つい最近まで実際に存在した大任町発注工事の構図である。

 まず、町が発注する工事を町内に本社を置いた形の「ぺーパー業者」に「元請」として受注させる。昨年5月の段階でペーパー業者として確認できていたのは、8業者(既に複数が廃業)。法人登記していない業者もいて、5業者はいわゆる“一人親方”の形態だった。代表者がまったく別の業種の仕事をしており、実際の建設工事に従事していないケースもある。下が、8業者の経営実態である。

 ダミー業者が落札すると、実際の仕事は町長のコントロール下にある複数の建設業者に丸投げする。3次下請けあたりに町長の息子が代表を務める会社が入る場合もあるというが、同社は表面上は出てこない。なお、ぺーパー8業者のうち、法人1社を含む複数の業者が、大任町に関するハンターの取材・報道が始まった後に廃業したことも分かっている。

 「スコップ1本持たず、下請けに丸投げする」(町内の業界関係者)と言われてきた各業者が県に提出した工事経歴書の中から、「大任町発注」の工事分だけを抜き出したものが下の表である。

 平成27年頃から令和3年までに、ダミー8業者が計117件もの工事を独占的に受注し、受注総額は約19億円に上っていた。工事経歴書にはすべての受注実績が記載されているわけではなく、実際の受注件数や契約額は増える可能性がある。

■側近企業4社、5年間で21億円受注

 ぺーパー業者ではないが、ペーパー業者が丸投げした仕事を請負ってきた永原町長と近いとされる業者が、大任町から別に多くの工事を受注していることも分かった。下が、工事経歴書から確認できた各社の実績。平成28年から令和3年までの5年間に4社で91件、契約額で21億円を超える町発注工事を受注していた。

 大任町では、平成27年から令和3年にかけて、たった12の業者が208件もの工事を受注。契約額は約40億円以上に達していた。永原町長及びその周辺に従順な関係者だけが、税金を原資とする公共事業を独占している形だ。そして、永原町政が「役場の玄関口にある掲示板に貼り出していた」と主張している“2021年6月までに執行された町発注工事の入札情報”こそ、ダミー業者や町長の側近企業が公共工事の独占を行っていた時期のもの。開示したとたん、工事経歴書に記載されていなかった受注記録も明らかになるため、実態を隠したい永原氏は、この期間の情報開示については「検討する」などとあやふやな説明で逃げている。

 ところで、町側が4月から入札結果を貼り出しているという「掲示板」だが、下が先週の現場写真。重ねたままであったり、折れ曲がっていたりでいずれも何の文書か分からない。しかもガラス扉には鍵がかかっており、内容を確認することさえできない。まともな役所なら、これを「公表」とは恥ずかしくて言えないだろう。

 いずれ詳しく報じるが、福岡県警は、こうした異常な実態を知りながら永原町政にメスを入れることを避けてきた。避けるだけならまだしも、永原氏や地元国会議員の手先としての仕事をやっているフシがある。町議会も、一人を除いて、恐怖支配の追認者ばかりというのが実情だ。警察や議会が過ちを正す責任を放棄したことで、狂気の町政がいまも続いている。食い物にされているのは、町民なのだが……。

(中願寺純則)

 

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