全国注視の違法町政・永原譲二大任町長の“ヤクザ頼み”|「町民の命を守る」の欺瞞

入札結果の非開示を国土交通省や総務省から「違法」だと指摘され、改善指導を受けている福岡県大任町の永原譲二町長が今月5日、町議会の一般質問で答弁し、「町民を守るため」だとして違法状態を続けていくことを宣言。町議会副議長と永原氏のやり取りを、RKB毎日放送と西日本新聞が詳しく報じた。

町発注工事を落札した業者に、「ヤクザが1,000円でそうめんを仕入れて、業者に1万円で売りつけた」「業者が情報を公開せんでくれと言ってきた」というのが非開示の理由だというが、これは“ヤクザ”をダシにしたずる賢い議論のすり替え。“入札結果を公開すれば、お前たちの命が危なくなるぞ。それでもいいのか”という、形を変えた町民への脅しに過ぎない。ヤクザが云々という主張も、建設行政を巡る不正を隠すための便法だとみられている。

そもそも、暴力被害を防ぐために警察組織があり、本県には全国に先駆けて制定された「福岡県暴力団排除条例」がある。自治体が、警察を差し置いてまで法律違反を犯す必要など一切ない。

■企業舎弟だった永原氏、支離滅裂の議会答弁

永原町長は議会で、「町民の方からそれはおかしい、法令を守っていくのが先で、町民の命はどうでもいいということであれば、町民の方々から私は退場させられる」と発言したという。嘘と暴力で支配してきた町政の歪みの責任を、町民のせいにしたも同然の暴論である。三代目太州会の企業舎弟だった永原氏にとっては、“困った時のヤクザ頼み”。しかし、永原氏の保身のためにダシにされた“ヤクザ”はたまったものではなかろう。

5日の議会での発言は迷走する一方だったらしく、一般質問でこの問題について聞かれた永原氏は当初、「先週行われた委員会で説明した」として事実上の答弁拒否。質問者の次谷隆澄副議長から厳しく追及され、ようやく答えたが、「町民の生命と財産を守るため」と強弁し、入札結果非公表を継続する方針であることを明言した。

町民うけを狙っての主張だが、これにはもちろん法的根拠がない。住民の安心・安全を守るのは行政機関として当然の務めだが、それと入札結果非公開は別の話。警察への通報を怠っている永原町政の現状は、逆に町民の生命財産を脅かす結果を招く可能性が高い。

本サイトで何度か報じてきたが、入札結果非開示について行ったハンターの審査請求に対し、大任町が公式に作成した『弁明書』には、次のように非開示理由が記されている。

4 本件処分の内容及び理由
(1) 本件処分の内容
情報公開請求に係る情報非公開決定処分(添付資料「情報非公開決定通知書」記載のとおり)

(2) 本件処分の理由
審査請求人からの公開請求に係る文書については、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(平成12年法律第127号)(以下、「公共工事適正化法」という。)第8条の規定により、公表しなければならないとなっている。

しかしながら、本町においては、過去公開したことにより、反社会的勢力が知るところとなり、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)(以下「暴力団対策法」という。)第9条各号で規定されている禁止行為を、この勢力が落札業者に行うといった事案が発生した

なお、このような不当な要求に対しては、福岡県暴力団排除条例(平成21年福岡県条例第59号)第17条の2の規定により、福岡県へ通報することとなっているところであるが、小規模な自治体においては、地縁関係が強く、実行に至っていない

また、令和2年には田川地区において、警察署を含めた安全・安心なまちづくり協定の締結により、公共工事における暴力団排除の連携も確認し合ったところであるが、上記の事案以降、本町においては、業者からの依頼もあり、暴力団対策法第32条第4項に規定される、「事業者等が安心して暴力排除活動の実施に取り組むことができるよう、その安全の確保に配慮しなければならない。」との規定を優先し、入札情報、落札情報の公開を控えてきたところである

審査請求人と反社会的勢力との関係性は定かではないが、条例第4条において、適正に使用しなければならないとなっているところであり、公開することにより、反社会的勢力の知るところとなることは完全には否定できず、暴力団対策法第32条第4項、条例第7条第3号の規定により今回非公開としたものである。

なお、当然にこのような事情(状況)が明確に排除された場合は、開示することに何らかの問題もないものである。

暴対法9条が禁止してるのは、指定暴力団の構成員などが組織の威力を示して行う27項目の不当な行為。永原氏の主張は、入札結果を公表したため反社会的勢力が落札業者を知り、「1,000円で仕入れたそうめんを、業者に1万円で売りつけた」というものだ。

しかしこれまで、いつ、誰が、誰に対して、何を行ったのかは全く明らかにされておらず、そのような事実があったことを確認することさえできていない。反社勢力=ヤクザにすべての責任を負わせているが、こうした出来事があったという証拠は示されていないのだ。でっち上げを疑われても仕方があるまい。

仮に落札業者に対する何らかの働きかけがあったとしても、“落札業者を公開したこと”と、“禁止行為が行われたこと”の間に因果関係があったことも確認できない。

「町民の生命と財産を守る」と格好のいいことを言う永原氏だが、彼に、本当に町民を守ろうとする意志があったとは思えない。自らの『弁明書』で、町民を守るために当然やらなければならない県や警察への通報義務を、「実行に至っていない」と明らかにしているからだ。

「なお、このような不当な要求に対しては、福岡県暴力団排除条例(平成21年福岡県条例第59号)第17条の2の規定により、福岡県へ通報することとなっているところであるが、小規模な自治体においては、地縁関係が強く、実行に至っていない

福岡県へ通報することとなっているところであるが、小規模な自治体においては、地縁関係が強く、実行に至っていない」――つまり、大任町として暴力団被害を警察や県に届け出ていないという訳だ。

一方、5日の議会で永原町長は、「関係機関に相談している」と答弁した。ハンターの審査請求に対する弁明書は今年の3月31日付。この時点で、県や県警に通報も相談もしていなかったことは、弁明書の記述からも明らかだ。町は、昨年7月から情報非開示にしていると説明してきたが、弁明書の日付から推測すれば、相談したとしても今年の4月以降ということになる。

「ヤクザが1,000円のものを10,000円で売りつける」という事案が発生したため情報非開示にしたのであれば、永原町長が「関係機関への相談」を行うまでに、10カ月前後もかかったことになる。それでは町民の生命・財産は守れまい。その場しのぎの嘘やごまかしは、すぐにばれるということだ。

県暴排条例は、《建設工事に関し、暴力団員であること又は暴力団と関係を有することを告げ、又は推知することができるような言動を用いて行われる不当な要求その他の暴力団関係者又は暴力団の威力を利用した者からの不当な要求を受けたときは、県に対し、速やかにその旨を通報しなければならない》として、発注者(地方自治体)に対して速やかな通報義務を課している。だが永原氏は、「小規模な自治体においては、地縁関係が強く、実行に至っていない」などと訳の分からない理屈で通報義務を放棄し、自己の不作為を正当化している。この姿勢のどこに、法を無視してまで町民を守るという強い信念があるというのか?

目の前で暴力事件が起きれば、誰もが110番するだろう。ヤクザが業者を脅したと分かっていれば、警察に通報して町民の安全を図るのが行政としての義務だ。暴排条例だけでなかく、刑事訴訟法も「官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない」(第239条第2項)として公務員の告発義務を定めている。大任町は、暴排条例にも刑訴法にも背いているということになる。

さらに弁明書は、暴力団対策法第32条第4項(の「事業者等が安心して暴力排除活動の実施に取り組むことができるよう、その安全の確保に配慮しなければならない」との規定を優先し、入札情報、落札情報の公開を控えてきたと記す。同条は《国及び地方公共団体は、事業者等が安心して暴力排除活動の実施に取り組むことができるよう、その安全の確保に配慮しなければならない》というものだが、暴対法の立法趣旨に鑑みれば、大任町長として反社会的勢力を排除するためにも毅然と通報をするべきだったと言わざるを得ない。永原町長は、法をまったく理解していない。

一方では落札事業者を守るためと言いつつ、他方で業者が泣かされた禁止行為について通報すらしないというのは、著しく合理性を欠く対応だ。“ヤクザ”の力でのし上がった男が、自己の悪行の責任を“ヤクザ”に押し付けるという卑怯な振る舞い。何度も報じてきたが、永原氏が入札結果をはじめ公共工事に関する情報を隠蔽してきた目的は、自らが築いた建設業界支配の構図が暴かれるのを防ぐためだ。 ペーパー業者や側近の建設業者に対する発注状況が明るみに出た時、永原氏や周辺による税金収奪の構図は崩れ去る。それだけは何としても防ぎたいというのが、永原氏の本音だろう。「町民のため」というのは真っ赤なウソ。違法状態継続を宣言した永原町長に対し、町民の間からは次のような声が上がっている。
「私たちのためだなんて、見え透いたウソだろう。日本中探してみても、国が『違法だから改めろ』と言っているのを無視する自治体なんてない。そもそも、町長の言い分だと『大任は危険な町』と言っているようなもの。町政トップが逆宣伝してどうなるんだ」(大任町・50代男性経営者)

「町長と太州会との関係は、古くからの住民はみな知っている。町の仕事をもらっているのが、町長に近い建設業者ばかりだということも周知の事実だ。工事をやっているのがどこの業者かなんて、住民なら見ただけで分かる。入札結果を非公開にしたからといって、業者名が分からなくなるわけではない。子供だましの屁理屈で、国中の笑いものになっているだけだ」(大任町・60代男性)

「違法を町民のためとは、呆れた。恥ずかしい。私たちの安全が脅かされるのなら警察と連携するべきで、業者を守るためだけに国の指導にも従わないというのは本末転倒でしょう。永原さんはだんだんおかしくなっているんじゃないですか」(大任町・40代主婦)

カネ儲けのために“ヤクザ”の看板を頼った男が、今度は別の意味で“ヤクザ”の威光を逆利用するという身勝手さ――。「違法」の果てに待っているのは「破滅」だと思うが……。

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