鹿児島県知事に塩田氏|現職・三反園氏落選の背景

任期満了に伴う鹿児島県知事選挙は12日、投開票が行われ、無所属新人で前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)=無所属=が現職で2期目を目指した三反園訓氏(62)=自民・公明推薦=や元職の伊藤祐一郎氏(72)=無所属=ら6人を破り、初当選を決めた。開票結果は以下の通り《*投票率49.84%(前回56.77%)当日の選挙人名簿登録者数(有権者数)は1,357,073人(男631,588人、女725,485人)》。

■「若い人」に期待集まる

塩田氏は鹿児島市出身。地元のラ・サール高校から東大法学部に進み、卒業後に通商産業省(現・経済産業相)入省。大蔵省(現・財務省)、自治省(現・総務省)、外務省などに出向してキャリアを重ね、内閣府本府地方創生推進室次長、大臣官房審議官(産業保安担当)などを歴任して平成30年から九州経済産業局長の要職に就いていた。

昨年12月に同省を退職して県知事選への出馬を表明。新型コロナウイルスの感染拡大で活動に制約を受ける中、役人時代から培った人脈などを生かして県内に支持を広げ、選挙中はコロナ後の経済対策や県の浮揚策を訴え、勝利に結びつけた。

最大の勝因は塩田氏の“若さ”。立候補した7人の中で最も若い54歳で、ハンターの記者は取材中、「一番若い人」という表現で塩田氏支持を決めるケースを何度も確認していた。鹿児島市内の会社に勤務する30代女性会社員の話が分かり易い。
「正直、塩田さんのことは、公式サイトやフェイスブックで確認できた範囲のことしか分かりません。どんな人かも分からない。ただ、若いということに期待したい。もちろん、三反園さんのように嘘をつくことはないでしょうし、官僚だったから不祥事は少ないでしょう。1年間はお手並み拝見で、ダメなら次の選挙で変えればいい。実績なら伊藤さんだったでしょうが、今回はとにかく若さにかけました」

若者人口や無党派層が一番多い鹿児島市内では、塩田氏の92,740票に対し三反園氏は48,828票。ここでの約44,000票の差が、塩田氏の勝利を引き寄せたのは確かだ。

■現職が走り続けた「落選への道」

再選を期した三反園氏は、2016年知事選で反原発派と政策合意を結んで当選しながら、その後は自民党に近づいた。「脱原発」の旗印を早々に降ろすという変節ぶりに批判が集まり、人気は低迷。その後も、ブラジル出張中に民間企業の女性添乗員を怒鳴りつけたり、会合の直前ドタキャンを繰り返すなど非常識な行動で物議を醸すケースが目立っていた。

昨年、国内で開かれたラグビーワールドカップの際は、東京都内で行われた「日本対南アフリカ」戦のチケットを大会スポンサー企業に無料で提供させ、私的な観戦を楽しんでいたことがハンターの報道で発覚。県庁の内外から、公私混同を批判する声が高まった。

告示直前には、知事が複数の首長に事業予算を盾に集票を強制した疑いがあることを南日本新聞がスクープし、支持率はさらに下落。選挙中盤に行ったハンターの情勢調査では、追走していた塩田氏から逆にリードされる状況となっていた。4年間、「落選への道」を走り続けた格好だ。

■お粗末自民、党員から責任問う声

一方、手痛い敗北を喫した自民党は、現職知事の不人気と暴走に振り回された。外薗勝蔵県議会議長ら“三反園派”の県議らが中心となって強引に三反園氏の推薦を決めたものの、緊急事態宣言が発出されていた5月9日に、知事の事務所開きに県境越え自粛を無視して自民党県連の森山裕会長ら二人の国会議員が参加。県民から厳しい批判が出る中、今度は自民党県連による所属県議への30万円ばら撒き事件が発覚するなど、失態を重ねた。

終盤になって二階俊博幹事長らが鹿児島入りしてテコ入れを図ったが、支持下落に歯止めをかけることはできなかった。

県議会議長の立場であるにもかかわらず三反園推薦を強行した外薗氏や日髙滋県連幹事長に対しては、早くも党員から「辞任して党員、党友に謝るべきだ」という声が上がっている。

ハンターでも度々紹介してきたが、有名な薩摩武士の郷中(ごじゅう)教育で厳しく教えられたのは「負けるな」「嘘をつくな」「弱い者をいじめるな」の三つ。最も縁遠い存在の三反園氏を推薦して敗れた鹿児島の自民党幹部は、それなりの責任をとるべきだろう。

■経済界から評価高かった伊藤氏の手腕

塩田氏との候補者一本化を望まれていた伊藤元知事は、県政の低迷を嘆く従来からの支持者に促される形で出馬を決断。「コロナ禍を乗り切るには、伊藤さんに再登板してもらうしかない」「鹿児島は伊藤さんにしか救えない」といった堅い支持層の声に支えられ出遅れを挽回しようとしたが、一歩及ばなかった。新型コロナの影響で、従来型の集会を開けなかったことも響いた。

敗れはしたが、経済界では伊藤氏の手腕を評価する声が多く、ある会社経営者は「伊藤さんは鹿児島県にとってかけがえのない人材。これからも指導的な立場で、県の発展に力を貸して下さることを祈っている。選挙で敗れたのは、担いだ私たちの責任。申し訳ない思いでいっぱいだ」と話している。

■新知事に問われる自民党に対する姿勢

二期目の選挙に臨む公職の候補者は、絶対的な強さを発揮するというのが通り相場。三反園氏は自民、公明の推薦を得て盤石の体制を築いたかにみえたが、自らの失策で知事の座を失うことになった。同氏を破り新知事に就任する塩田氏が、敵対した形の自民党県議団や森山裕県連会長とどう向き合うのか――。次に開かれる鹿児島県議会は、これまで以上に注目を集めそうだ。

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