北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で、在学中に自殺した学生の遺族が北海道を相手どり損害賠償請求訴訟を起こすことがわかった。遺族の代理人があきらかにしたもので、提訴は9月18日午後の予定。
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ハラスメントへの損害賠償を求めて函館地方裁判所へ訴えを起こすのは、江差看護学院在学中の2019年9月に自殺した男子学生(当時22)の母親(48)。自殺問題をめぐっては遺族と道との間で示談交渉が進められていたが、事実調査を手がけた第三者委員会の報告を受けて遺族に謝罪した道がその後、第三者委が認定したはずのハラスメントと自殺との「相当因果関係」を否定する姿勢を見せ始め、遺族側の不信感が増していたところだった。
昨年の謝罪の真意を道に尋ねた遺族は本年4月、同謝罪が「調査結果を重く受け止めた」ものに過ぎず、ハラスメントと自殺との因果関係を認めたわけではないとの回答を道から得るに到り(既報)、やむを得ず提訴を検討することになったという。もともと遺族には裁判提起の考えが一切なく、第三者委が認定した因果関係を道が認めさえすれば部分和解などの形で終わらせてもよい考えだったが、道がそうした譲歩提案すらも拒否したため、争いを法廷に持ち込まざるを得なくなった形だ。
提訴予定日の9月18日は、亡くなった学生の5回目の命日にあたる。遺族代理人の植松直弁護士(函館弁護士会)は「道の思惑を事前に知っていたら昨年の謝罪は受け入れていなかった。遺族からすれば『道に提訴を強制された』思いだ」と、改めて行政の不誠実な対応を批判している。
(小笠原淳)
【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |