自・公・維「3党合意」の裏

2月25日、自民党・公明党の連立与党と日本維新の会は、2025年度政府予算で「教育無償化」「社会保険料引き下げ」を実現することで合意。維新は衆議院での予算案採決に賛成した。参議院は自公で過半数を得ているため年度内成立が確実となりつつある。

◆   ◆   ◆

当初、国民民主党が打ち出す「103万円の壁」に歩み寄っていた自民党。だが、自民党が小出しにした「123万円」や「所得制限」などに維新が反発。間隙をぬって交渉が本格化したのが第2野党である維新との協議だっただった。

維新の掲げる主要政策「教育無償化」が取り入れられたこともあって3党合意の調印には、維新の代表を務める吉村洋文大阪府知事が急遽参加。「これまでと違い、所得制限のない高校授業料の無償化の実現など公約を実行し、社会を変えていくのが維新」と胸を張った。

だが、3党合意を飲むか蹴るかで維新内部は直前まで紛糾していた。合意前に開催された維新の両院議員総会では、「安易に予算案への合意はすべきではない」「こんな時期、タイミングで合意したら、最初から自民党と裏で手を組んでいたのかと国民に思われてしまいます」などと反対意見が続出。この日は国会で委員会が開催されており、出席しなければならない議員がいたことから、両院議員総会は休憩をはさんで2度行うという異例の形となった。

前のめりに3党合意を目指したのは吉村代表と前原誠司共同代表のグループ。激しい意見を出したのは前代表の馬場伸幸ら旧執行部グループだった。

「最後は党内合意をとりつけたが、吉村代表側と対立する馬場氏側の溝がより深くなった。終わった後、同僚議員が『どう思います、うちもそう長くない?』『割れるのかな』と声をかけてきた。『同感ですね』と返事をしました。本来なら政府予算ですから全会一致が当然。しかし柳ケ瀬裕文前総務会長は最後まで反対でした」とある維新の国会議員が打ち明ける。

ハンターが入手した3党合意の文案には25日の17:32:46というプロパティが残っている。だが、再度更新され最終的には18:49:23となっている。前出の維新議員は「一度は作成され、完成した合意文書。しかし、細かなところで異論が出て、ギリギリまで修正を重ねていた証拠ですね。そのプロパティは」と話す。

3党合意の文書に《合意後も引き続き、自由民主党、公明党、日本維新の会の3党の枠組みで、合意事項の実現に責任と誠意をもって取り組む》とされたことで、にわかに注目されるのが維新の連立与党入りだ。吉村代表はテレビ番組に出演。「野党でもできる法案を通した」と自画自賛しながらも、「自民党に当然入るつもりもないし、連立には入りません。僕が代表である限りは0%です」と連立与党入りを否定した。

しかし、自民党の幹部A氏はほくそ笑む。
「予算案への賛成は大歓迎だ。維新は野党第2党なので、数は十分そろいますから。それに、賛成、反対で維新の内部対立がより鮮明化している。自民党としては、与党系無所属を誘って入れてもまだ過半数に足りない。今回の維新の対立で『こっちにこいよ』と誘いやすい状況になった。それに、維新の本拠地である大阪には、もともと自民党にいた地方議員が多い。親和性は十分にある。また、大阪組ではない議員も、今回の方針には反発したようです。維新側からの情報だと吉村代表側と馬場氏側、さらにそれ以外と3つに割れる可能性があるらしい。吉村代表は、自民党入りはないとしているので彼らのグループの連立入りは無理でしょう。しかし、馬場氏側やその他のグループについては分裂して新党となった場合、連立与党入りもあるのではないか。自民党としては、予算は通る、維新の対立は深くなるということで一石二鳥だ」

3党合意で意気軒高の吉村代表。しかし同じ日、兵庫維新の会の面々は沈痛な面持ちだった。昨年11月に行われた斎藤元彦知事の兵庫県知事選で、兵庫維新の会の岸口実県議と増山誠県議が、NHK党の立花孝志氏に非公開の録音や誹謗中傷の文書を極秘に提供したことで処分内容が審議されていたのだ。今回以外の問題も抱えている岸口氏は「離党勧告」、百条委員会の録音をLINEで立花氏に送信した増山氏は「除名」だったという。しかし、発表では岸口氏が「除名」で増山氏が「離党勧告」。処分の決定権があるのは兵庫維新の会だ。しかし、兵庫維新の会の地方議員B氏が実情を語る。

「吉村代表が『厳しい処分を』とメディアを使ってさかんに話した。そこに維新の創業者である橋下徹氏が2月25日朝、SNSで《逆、逆。報道の自由と暴露内容をしっかりと考えれば、岸口さんの方が悪質性が高い。表面的には100条委員会秘密会の内容を漏らした増山さんの方が悪質性が高いように見えるけど、違うんだよなー》と投稿したことも「処分に影響したように感じる」

最後は、維新の県議団団長で百条委員会の副委員長という立場にありながら情報を立花氏に渡した岸口氏の方こそ重い処分が必要という意見が多くを占めた。増山氏はすでに離党届を出しており、離党勧告を出しても意味がない。

維新は出馬時に「誓約書」の提出を義務付けている。《今後いかなる理由があろうとも、日本維新の会から除名処分を受けた場合は、議員又は首長の公職を辞職します》という内容だ。しかし、岸口氏は「無所属で県議を続ける」と辞職に応じない考えを示している。反省する気持などないということだ。政治家である前に、人としてどうなのかというレベルの問題だ。

「3党合意という大きな手柄は大きく報じられるので、維新の大不祥事報道は影に隠れると読んだのでしょう。しかし、処分発表は1日違いの26日。結局、3党合意より不祥事の方が目立ってしまった。政策的なことより不祥事や分裂危機が目立ってしまうのが今の維新なのかな…」(前出の維新議員)

これまで、花火のように次々と新しい話題を提供し続けてきた維新。化けの皮が剝がれてしまい、崖っぷちの様相だ。

 

この記事をSNSでシェアする

関連記事

最近の記事一覧

  1.  今月6日、田川市議会定例会一般質問において、公明党の山野義人市議が、一部事務組合「田川地区広域環境…
  2. 今月10日、自民党の岸田文雄前首相、麻生太郎最高顧問、茂木敏充前幹事長の3人が東京都内の日本料理店で…
  3. 3月13日深夜、石破茂首相が急遽記者会見。政治とカネについての釈明に追われた。問題になったのは、3月…
  4.  今月10日に開かれた田川市議会の総務文教委員会で、公明党の山野義人市議が、村上卓哉市長と不適切な関…
  5. 北海道警察で昨年最後の四半期(10~12月)に処分などがあった不祥事の中に、警察官の性犯罪を懲戒処分…




LINEの友達追加で、簡単に情報提供を行なっていただけるようになります。

ページ上部へ戻る