先月7日、情報漏洩があったとしてハンターの記者が大任町と田川市に損害賠償を求めた裁判の和解が成立した。和解は福岡地方裁判所の裁定によるもので、両自治体が情報漏洩を認めたため、所期の目的が達成されたと判断し和解に応じた。事実上の勝訴であり、金銭的な請求は放棄した。
法廷における政治家秘書の証言や和解という結果については新聞、テレビも報道しているが、ハンターへの問い合わせが相次いだため、改めてこれまでの経緯を報じておきたい。なお、和解調書に記された和解内容は以下の通りである。
1 被告らは 、原告に対し、原告が被告大任町及び被告田川市に情報公開請求をした事実が、原告ではなく被告大任町又は被告田川市から本件で問題となっている第三者に伝わった可能性が否定できないことを認める。
2 被告らは 、今後、情報管理を徹底する。
3 原告は、その余の請求をいずれも放棄する。
4 原告、被告大任町及び被告田川市は、本件に関し、原告と被告大任町との間及び原告と被告田川市との間 に、本和解条項に定めるものの他に何らの債権債務がないことを相互に確認する。
5 訴訟費用は、各自の負担とする。
■2021年6月14日に8件の開示請求
発端となったのは2021年6月14日に両自治体に対して行った8件の情報公開請求。「大任や田川に疑惑がある」という読者からの情報提供を受け、軽い気持ちで請求したというのが本当のところだ。ハンターが多くの自治体や国に対し、日常的にやっている開示請求の中の一つだった。14日に行った請求の内容は以下の通りである。(*15日に田川市に対し「公立校で使用するタブレット端末の業者選定に関する全ての文書」を開示請求したが、その後の経緯から、本稿では14日請求分だけを対象とした)

首長選挙における収支報告書は、初めて取材する自治体において必ず取得するのがハンターの決まり。投開票から3年以内なら選管が保有しており、同年3月に5期目の当選を果たしていた永原譲二大任町長と2019年に再選された二場公人田川市長(当時)の選挙運動費用収支報告書は開示請求が可能だった。
残りの6件は、匿名希望の読者が「おかしい」「調べてみるべき」と伝えてきた事案の関連文書を、漏らさず請求したもの。この段階では、不正や違法行為について確かな証言や証拠を得ていたわけではない。しかし、ハンターの記者に「(この件は)あたりだ。不都合な事実を隠そうとしている」と確信させたのは、開示請求翌日の15日11時台に武田良太総務大臣(当時)の秘書S氏から掛かってきた1本の電話だった。
■武田総務大臣秘書から「なかったことに」の電話
武田氏本人もS秘書も、取材を通して以前から付き合いのある相手。ただし、S秘書からの連絡は久しぶりのことだった。電話の冒頭にS秘書が発したのは「ご無沙汰してます」である。そのあとのやり取りの概略は以下の通りである。
S秘書:今日電話したのはですね、中願寺さん、うちの選挙区の大任町とかに情報公開請求してます?
記者:してます。S秘書:なんでですか?
記者:タレコミがあったんで。S秘書:どっからタレコミがあるんですか?田川市と大任町の、いわゆる、だけですよね。
記者:もう連絡がいったんですか?S秘書:そりゃあ、うちの選挙区ですから。
記者:いけませんね。早い。(請求は)昨日ですよ。S秘書:いや、そりゃビビりますよ。こんな情報請求きたら。
記者:大したものはないでしょう。S秘書:町長選挙の収支報告書って、これ相手方(対立候補のこと)には行ってないですよね。永原町長だけですよね。
記者:だけです。もちろん。S秘書:二場市長も、田川市長の方も現職だけですね。
記者:そうです。ただ、うちは他の自治体でも同じようにやっていますから。別に大臣が気にしてるわけじゃないんでしょ?S秘書:気にしてますよ。なんとかこれは、なかったことにしてほしいと。
記者:あっ、そう(笑い)。それは無理ですわ。S秘書:無理?
記者:何があるのか確認しないといけませんから。S秘書:これ、まあ、道の駅は、その業者選定がわかる文書及び本件の施工体系図……。
記者:はい。そうですね。S秘書:ここらへんは、全部しっかりと、情報請求する情報の内容を全部ピンポイントで出さないといけないんですか?
記者:もちろんです。S秘書:例えば、情報公開請求に対して、いわゆる我々のパターンでいくと、いわゆるその適切に処理しているので――みたいな回答ってわけにはいかないんですか?
記者:それは、そうはいきませんね。請求したものが普通に出てこなければ、うちは叩きます。つまらんことしないように言っといて下さい。隠し立てしないように。S秘書:やられても困る。
記者:だから、出てきたものを見て、何もなければいいじゃないですか。大臣のところに(直接)連絡が来たんですか?S秘書:いや、代議士へは私から報告しました。
記者:(大任や田川は)大臣に頼めば(開示請求が)止まると思ってるんじゃないですか。まだうろたえる段階ではないでしょう。S秘書:けっこうな量で……。
記者:どこの自治体にもやってること。まだ記事にするとかいう状態でもないです。役所側からはうちには何も言ってきていないんですよ。S秘書:あ、それはまず(ハンターの記者に)連絡する前に、多分こっち(武田事務所)に来たんですよ。
「うちの選挙区の大任町とかに情報公開請求」、「田川市と大任町」、「そりゃビビりますよ。こんな情報請求きたら」、「町長選挙の収支報告書」、「これ相手方(対立候補のこと)には行ってないですよね。永原町長だけ」、「二場市長も、田川市長の方も現職だけですね」、「道の駅は、その業者選定がわかる文書及び本件の施工体系図」――いずれも、両自治体が武田事務所に請求の事実を伝えなければ出てこない言葉だ。請求当日か翌日という極めて早い時期に、ハンターの記者が大任町と田川市に情報公開請求を行ったことが漏れていた。
永原町長と二場市長(当時)の「選挙の収支報告書」、「道の駅」「業者選定がわかる文書及び本件の施工体系図」といった単語も、請求した記者以外では大任町と田川市の首長及び職員しか知り得ないもの。開示請求書の内容が、正確に武田事務所に伝えられていたことになる。情報漏洩に基づくS秘書からの圧力に、地方公務員法が規定する「守秘義務違反」を疑わざるを得ない展開だった。(参照記事⇒大任町・田川市が守秘義務違反|開示請求の詳細、議員事務所に漏洩)
(つづく)
(中願寺純則)








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