先月20日、田川市議会が設置した「情報公開請求に係る個人情報漏洩に関する調査特別委員会」――いわゆる百条委員会――に参考人として呼ばれ、大任町と田川市が犯した情報漏洩を巡る一連の経緯について意見を述べた。情報漏洩があったとしてハンターの記者が両自治体に損害賠償を求めた裁判で、和解が成立したことを受けてのこと。両自治体が情報漏洩を認めた形の和解内容を重くみた田川市議会は、問題の経緯を含めた事実関係を調査する目的で、百条委を設けていた。
参考人質疑の冒頭で市議から出たのは、裁判の被告だった大任町の永原譲二町長から田川市議会に発出された要求文書に関する質問。永原氏の要求を聞いて呆れると同時に、反省するどころか事実をねじ曲げ、「漏洩はなかった」との印象さえ与えかねない同氏の主張に憤りを感じた。毎度のことながら、田川の独裁者は往生際が悪すぎる。
■間違った前提で越権行為
百条委の冒頭、田川市議会の議員から永原町長が発出した文書の内容について意見を求められた。町長の言い分を要約すれば、市議会が百条委設置を決めた際の決議文に「大任町」の名称が出てくるのはけしからん、議事録から関係個所を削除して謝罪しろというもの。当日の質疑で「大任町」という固有名詞に触れることが確実だった参考人に、迷惑が掛からないか心配しているとした上で、その点についてどう考えるかという質問者の問いかけだった。
情報漏洩の件に関して筆者が何をしようと、永原氏側から注文を付けられる覚えはない。「何か言ってきても無視する」と応じたが、念のため他に要求はないのか確認した。驚いたことに、永原氏は削除と謝罪を要求した意図を説明するから自分を招いて話す場を作れと要求していた。傲慢にもほどがある。「そんなものは無視すべき。一連の要求自体が議会の自律権を侵している」「愚の骨頂」「いっそのこと、調査対象者として百条委員会に呼べばいい」と述べておいた。
以下、永原氏の不当な要求について論じておきたい。下が、A4用紙2枚からなる永原文書のコピーである(*赤い書き込みはハンター編集部)。

猛省する立場にあるのは、情報漏洩に関わった疑いがある永原氏自身だ。それを棚に上げての市議会に対する難くせ。上からの物言いも目に余る。もちろん、こんなものを相手にする必要はない。永原氏は「前提」を間違っているからだ。
①に示したように、永原氏は《和解に至った訴訟の事件名》に大任町という名称が含まれているのは《訴訟上の形式》に過ぎないとする。だが、訴訟の事件名には大任町という名称など出てこない。
一般的に「事件名」と呼ばれているのは、裁判所が判決などの関係文書に示す『事件の表示』にある記載を指す。ハンターが訴えた情報漏洩事件における「事件名」は、下の和解調書の『事件の表示』に記されている《令和5年(ワ)第4085号》のこと。どこにも自治体名は出てこない。裁判のことをよく知らない人の作文ということだ。
従って、後に続く《訴訟上の形式》という文言も間違い。そもそも、訴えたハンターが原告で大任町は被告。大任という町名が事件名にあろうとなかろうと、実態として町は情報漏洩の当事者であり、決して形式上のことなどではない。自分勝手な解釈で他の自治体に理不尽な要求を突きつけるのが永原流だが、この文書の内容はあまりにレベルが低すぎる。

次に、《紛争の終結を是とした貴市議会が、その直後に問題を蒸し返す~》という文言。これは永原氏が情報漏洩があったという事実と正面から向き合っていないだけでなく、反省なく「終わったこと」で済ませようとする姿勢の表れだ。
「和解」は確かに裁判という紛争の解決方法の一つである。しかし、田川市と大任町の議会に求められるのは、和解によって明らかになった両自治体による情報漏洩の真相を明らかにすることだろう。どのような経緯で情報が漏れたのかきちんと検証しない限り、事案に関係する権力側の報復を恐れる住民は安心して情報公開請求することができない。「蒸し返す」などという表現を使うようでは、再発防止の実は挙がるまい。
「漏洩はなかった」と言い張ったあげく、旗色が悪くなって漏洩を認めたという両自治体の責任は重い。決して「終わったこと」ではなく、和解によって議会による真相究明への動きが始まったと考えるべきだろう。
ここまで述べてきた通り、③にある永原氏の4点の要求は、すべて根拠を欠いた理不尽なもの。繰り返すが、相手にする必要など一切ない。
■田川市議会にもユダがいる
笑ってしまったのは、③の中の三番目の要求――「本町の行政事務に不当に干渉する越権行為は絶対に行わないこと」だ。田川市議会はこの文言をそのまま永原氏に返せばいい。田川市の議会が決めたことに、不当に干渉して理不尽な要求を突きつけるという越権行為を犯しているのは永原氏。自治体の議会には、地方自治法が認めた「自律権」があり、田川市議会は自らの意思で議会の運営や決定を処理することができる。永原町長の不当な要求は、その自律権を侵すものだ。首長として改めて地方自治について学ぶべきだろう。
不当な要求である以上、相手にするだけ時間の無駄なのだが、困ったことに田川市議会の中には議会人としての自覚を欠いた人たちがいる。筆者を参考人として呼び出しておいて百条委を欠席するという無責任ぶりを発揮した陸田孝則市議会議長は、あろうことか永原氏の要求を受け入れ、同氏を招いて全員協議会を開くのだという。田川市議会の自律権を自ら放棄する暴挙だが、不信任決議を4回も付き付けられながら議長の椅子にしがみつく御仁だけに、地方自治の在るべき姿が理解できていないのだろう。
繰り返すが、筆者は百条委で“永原氏の理不尽な要求は無視すべき”だと明言した。永原氏本人が来たいというなら、“百条委の証人”として呼べばいいとも言った。しかし、筆者の発言を聞いていたはずの永松広宣公明党市議は、代表者会議の中で「先日、この情報公開請求に係る個人情報漏えいに関する調査特別委員会で招聘した参考人から『大任町長を呼べばいい』と、このような趣旨の助言もいただいてる」として、永原氏のための全員協議会を開くよう求めたという。
とんでもない話である。筆者が永原町長を呼ぶべきと指摘した場は百条委。それも「証人」としてだ。永原氏が一方的に持論を展開する会議など必要ないということもハッキリ申し上げており、永松市議が言うような趣旨の“助言”などした覚えはない。勝手に人の発言を歪めて使うのは、政治家である前に人として最低の行為。永松市議には猛省を促したい。他にも尾崎行人市議、田守健治市議らが陸田議長に同調する意見を出したとされるが、確認した発言内容があまりに幼稚だったため本稿では触れない。
重ねて言う。田川市議会が永原大任町長による議会への不当介入を許すことは「自治権の放棄」と同義。市議や議会事務局は、それが田川市民への背信行為になることを肝に銘ずべきだ。
(百条委員会参考人・中願寺純則)















