本サイトで9月中旬に伝えた裁判所の「記者席」問題(既報)で、現場の対応を定めるルールが5年前に一部変更されていたことがわかった。各地の裁判所の担当職員が参照する手引書が同時期に改訂され、当該箇所の記述が変更された箇所があった。
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最高裁判所は2010年以降、広報事務を担当する職員への手引書『広報ハンドブック』を3度にわたって改訂している。前掲の記事で参照したのは2度目の改訂が反映された2013年版だったが、その後の2020年にも内容の見直しがあり、3度目の改訂が行われていた。筆者が裁判所の情報公開制度「司法行政文書開示」を使って本年7月に「最新版」の開示を求めたところ、2020年版のハンドブックが開示されたことから、同バージョンが現在使われている版であることがわかった。
写しの入手後、「法廷内記者席」の取り扱いを定めた箇所を参照してみると、若干の文言変更があったことが確認できた。具体的には、以下のような改訂だ(旧版、新版の順に引用)。

《要望に基づいて記者席を確保したにもかかわらず、何らかの理由で記者が法廷に来ない、ということもある。このようなときは、記者席カバーを外し、一般の傍聴席に戻すとともに…(以下略 》
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《要望に基づいて記者席を確保したにもかかわらず、何らかの理由で記者が法廷に来ない、ということもあり、傍聴券を交付した事件ではない場合においては、記者席カバーを外し、一般の傍聴席に戻すといった措置を執ることもある(以下略 》
最新版では記者席カバーを外す要件が加筆され、つまりカバー外しが「傍聴券を交付した事件ではない場合」に限っての対応とされてしまったわけだ。さらには、そういうケースであっても必ずしもカバーを外さなくてもよいというニュアンスの「こともある」という文言が文末に加えられた。記者クラブ以外の国民にとっては“開かれた裁判所”がまた一歩後退したと評価せざるを得ない改訂、即ち改悪と言わざるを得ない。
一方、ほかの部分では逆の方向にニュアンスが変化したと受け止められなくもない改訂があった。記者クラブに提供される「判決要旨」「判決骨子」の取り扱いだ。これらについて、ハンドブック旧版では次のような記述があった。
《要旨・骨子は、速報性が要求される報道機関の利用のために裁判部に特別に作成してもらったものであり、そのような報道機関以外に提供することは基本的に予定されていない》
これが、最新版では以下のように変わることとなる。
《判決要旨は、速報性が要求される報道機関の利用のために特別に作成したものであるが、刑事訴訟事件においては訴訟関係人から判決要旨の交付を求められることがある。そのような場合には、裁判体の意見を踏まえ、司法行政上の便宜供与として、当該訴訟関係人に対し、報道機関交付用の判決要旨を交付することが相当である》
それまで原則として報道関係者以外に提供していなかった判決要旨を、裁判の当事者にも提供できることになったという。決して悪い変化ではないが、よく考えると判決要旨・骨子の提供先を報道機関に限定していた慣行がそもそも不適切だったと評価できる。第三者である報道関係者が入手できる要旨文を当事者が入手できないという状況がおかしかったわけだ。
なお判決要旨・骨子については昨年10月配信の本サイト記事(既報2)で伝えた通り、2017年7月の最高裁の事務連絡で提供先が拡大していたことがわかっている。それまで記者クラブ限定で交付されていた要旨文などが、クラブ非加盟のフリー記者などにも提供されるようになったのだ。ジャーナリスト寺澤有さんからその情報を得た筆者はこの1年、地元の裁判所で折に触れて判決要旨等の交付を申請してきたが、先述の事務連絡の通り申請はすべて認められ、これまで札幌高裁、札幌地裁、函館地裁、及び釧路地裁で要旨文の提供を受けることができている。また事務連絡には言及がないものの、やはり記者クラブの“特権”だった「記者席使用」と「開廷前撮影」についても裁判所はフリー記者の申請を受け入れる方向へ変わりつつあるようで、これまで札幌地裁で1度、記者席の使用が認められた。廷内撮影はまだ実績をつくることができていないが、こちらも遠からず要件が緩和されることが期待される。
(小笠原淳)
| 【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】 ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。 |







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