自民党の新総裁に選ばれることが確実になったとたん、ワイドショーのヨイショが氾濫。あろうことか、民意を無視する安倍政治の継承者・菅義偉氏に「叩き上げの苦労人」というイメージが定着した。
大きなスキャンダルもなく、政権の支柱から最高権力者へと歩を進めた同氏だが、政治資金の集め方は独特。政治資金パーティーを、陣笠代議士には到底マネのできない頻度で開いている。そのえげつないカネ集めの手法とは……。
■実は金権体質
菅氏の資金管理団体「横浜政経懇話会」が総務省に、「自由民主党神奈川県第二選挙区支部」が神奈川県選挙管理委員会に提出した2016年、17年、18年の政治資金収支報告書によれば、両団体の年間収入を合わせた額は次の通りとなる。
それぞれの年間収入合計額から、政党交付金(16年→1,270万円、17年→2,790万円、18年1,240万円)を除き、個人や企業からの献金及び政治資金パーティーの収入だけを合算するとこうなる。
かなりの集金力と言えるのだが、問題は集め方。菅氏の場合は、収入の大半を政治資金パーティーの売り上げで賄っているのだ。下に、2016年から18年にかけて資金管理団体「横浜政経懇話会」と「自由民主党神奈川県第二選挙区支部」が開催した政治資金パーティーの開催日、パーティー名、収入額をまとめた。
毎年1月から2月までに動きはないが、3月からは資金管理団体か自民支部のどちらかがカネ集めをする形で、16年に8回、17年に10回、18年に10回政治資金パーティーを開いていた。
年間約8,000万円もの売り上げがあるにもかかわらず、毎回の収入が1,000万円以下に抑えられているため、特定パーティー(1,000万円以上の収入がある大規模パーティー)に義務付けられた収入内訳の記載はない。
20万円以上のパーティー券購入者は報告書に記載する義務があるのだが、それもなく、どこの誰がパーティー券を買ったのか一切分からない。極めて不透明なカネ集めだ。
■姑息な「大臣規範」逃れ
1回のパーティー収入を1,000万円未満に抑えている最大の理由は、中央省庁再編が行われ、新たに副大臣及び大臣政務官の制度が始まった2001年に閣議決定された「大臣規範(「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」)に抵触することを避けるためだと思われる。
大臣規範は、『政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する』 として大規模パーティーの開催自粛を規定しており、官房長官も順守義務を負う。
前述した通り、大規模パーティーとは収入が1,000万円を超える特定パーティーのこと。菅氏は大臣規範違反を咎められないようにするため、パーティーの売り上げを1,000万円未満に抑えてきたということだ。どう見ても姑息。総理大臣になろうかという政治家のやることではあるまい。
一般的な社会人が、毎月1,000万円近い収入を得るのは極めて困難だ。菅氏のカネ集めに、「叩き上げの苦労人」というイメージはない。