【速報】ヤジ排除、裁判所も検察に追随|被害男性の「付審判請求」を札幌地裁が棄却

昨年夏に札幌市で起きた「首相演説ヤジ排除事件」で、排除被害者が現場の警察官を被告人とする刑事裁判を求めていた「付審判請求」に対し、地元の裁判所が請求棄却を決定したことがわかった。請求人の男性は「不当な内容」と棄却決定を強く批判、引き続き国賠訴訟で排除の違法性を訴えていくとしている。

札幌地裁(駒場秀和裁判長)が11月27日付で付審判請求の棄却を決定したのは、昨年7月に安倍晋三・前首相へヤジを飛ばして警察官に排除された大杉雅栄さん(32)が求めていた特別公務員暴行陵虐事件などの裁判3件。いずれも現職警察官による排除行為の違法性を訴えたもので、北海道警察の警察官計6人が関与していたとされる。

札幌地裁は請求された3件について、JR札幌駅前での排除行為を警察官職務執行法4条の「避難」措置にあたると、また同駅前での2度目の排除行為と大通地区での排除行為をいずれも警職法5条の「制止」措置にあたると判断、警察官らの行為のすべてに違法性が認められなかったとして「請求には理由がない」と結論づけた。先行する検察審査会決定や札幌地検の不起訴処分と同様、現場では自民党員などの聴衆と大杉さんの間でトラブルが起きる可能性があったとし、対応に急を要する事態だったため警察官の排除行為は適正だったという理屈だ。

ヤジ排除問題で裁判所がなんらかの見解を示すのは今回が初めてだが、結果的には「三権分立」の意義や司法への期待が大きく損なわれる形となった。請求人の大杉さんは「検察の主張をそのまま写したような形」と棄却決定を強く批判、道警の言い分を代弁するかのような地元地裁の姿勢に「裁判所としての仕事をして欲しい」と厳しくコメントしている。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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