愛知県知事リコール署名偽造問題の闇(下)|「裏の男」に迫るXデー

美容整形外科「高須クリニック」の高須克弥氏と名古屋市の河村たかし市長が中心となって行われた大村秀章愛知県知事に対するリコール(解職請求)署名活動は、制度そのものを揺るがしかねない「署名の偽造」という事件に発展した。

事態を重くみた愛知県選挙管理委員会は、愛知県警に地方自治法違反容疑で刑事告発。県警は、署名簿を押収するなど、捜査を本格化させている。

■注目集める日本維新の元支部長

『お辞め下さい大村秀章愛知県知事愛知100万人リコールの会』の代表を務めた高須氏は問題発覚後の会見で、「私は表に出てしゃべるだけ。裏はすべて事務局長にお任せです。全面的に信頼していた」と釈明した。たしかに、今回のリコール署名活動では高須氏と河村氏が並んで街頭に立つなど活発に情報発信はしたものの、事務的な活動にほとんどタッチしなかったことが確認されている。

高須氏が言う、裏を任せられていた“事務局長”とは、元愛知県議会議員の田中孝博氏。彼こそが、いま最も捜査当局やマスコミから最も注目されている存在で、騒ぎになるまでは日本維新の会衆議院愛知5区の支部長(2月25日辞任)として次の総選挙に立候補する予定だった人物である。(*下は、田中氏のツイッター画面)

2010年、河村たかし市長が率いる地域政党「減税日本」は、名古屋市議会リコールを成功させ、同市議会を解散させた実績がある。今回の知事リコールでも力になろうと申し出たが、事務局長の田中氏に断られたという。減税日本関係者の話。
「田中氏が事務局長と聞き、やばいと思った。問題は3つです。まず、田中氏に多額の借金があること、次に日本維新の会という特定の政党に在籍して、選挙の立候補予定者であること、そして三つめが、リコールの対象である大村知事やその秘書とも近い関係だということです。かつてリコールを成功させた減税日本として手伝いを申し出てたのですが、『結構だ』と田中氏に言われました。なんか変なことやってないか心配でしたが……」

■トラブルメーカー

地元愛知で田中氏について取材してみると、良くない話ばかりが集まってくる。

2001年8月、田中氏が県議時代のこと。同氏が経営していた産業廃棄物処理運搬会社が経営破綻し、不渡りを出してしまったため、議員歳費が差し押さえられたという。当時の中日新聞を調べてみると、次のような記事が残っていた。

《田中議員が代表取締役を務める産業廃棄物収集運搬業「東海環境サービス」(名古屋市千種区)が7月31日、二回目の不渡りを出した。同社の負債約2億6千万円すべてを田中議員が個人保証し、返済不能になっているという。代理人は会見で「自己破産を申し立てるかどうかは週明けにも結論を出したい。自己破産が裁判所に認められれば、議員辞職も検討することになる」と話した》(中日新聞 8月2日朝刊)

また、田中氏は愛知県稲沢市の一般社団法人名義で愛知県南知多市の県所有「ビラ・マリーン南知多」というホテルを4億円で落札したが、資金を用意できなかったことから8,000万円あまりを愛知県から支払うように求められるというトラブルも起こしている。

■リコール資金の行方は?

今回のリコール署名活動では、クラウドファンディングで資金が集められた。高須氏は自身のSNSに〈クラウドファンディング5,000万円もリコール署名者100万人も過半数達成しそうだ〉と書き込んでいる。署名活動の関係者によると、千万円を超える金額は確実に集まったという。その関係者は、こう振り返る。
「借金まみれの田中氏は、リコール署名をサポートしてくれている弁護士らに『借金があって大変だ』と相談をしていた。クラウドファンディングのカネを田中に任せて大丈夫なのか、との声も出ていた」

選挙にとって名簿は大きな武器となる。衆院選挙の候補者である田中氏がリコール署名活動で集めた名簿を「不当な形で自分の選挙に流用しないかとの心配もあった」(前出関係者)

田中氏は、署名簿偽造に関しては「まったく関与していない」と記者会見で断言した。だが、リコール署名活動が終わったにもかかわらず、まだクラウドファンディングで集めた資金の会計報告は公表されていない。

佐賀市でアルバイトを動員して、名古屋市のG社に署名簿偽造を作成させた発注書によれば、470万円あまりが現金で支払われている。

「発注書には、田中氏の実印とみられる四角いハンコが押されている。サインも田中氏ものだとみられている。状況的には田中氏が主導して署名簿偽造をさせたんじゃないかと思われる。また、クラウドファンディングに疑問の声があることも承知している。その使途も捜査対象となる」(捜査関係者)

名古屋のメディアが、“裏の男”の「Xデー」に備えて準備をしているのは言うまでもない。

(山本吉文)

 

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