ヤジ排除、また警官不問に|機能不全・検察審査会が2度目の「相当」議決

一昨年7月に札幌市で起きた「首相演説ヤジ排除事件」で、第三者機関がまたしても現場警察官らの排除行為などを容認する決定を出した。

ヤジ排除被害者の申し立てに3月3日付で「不起訴相当」を議決したのは、検察の不起訴処分の妥当性を審査する札幌検察審査会。安倍晋三・前総理大臣に「増税反対」などと叫んで複数の警察官に拘束され、約1時間半にわたってつきまとわれ続けた札幌市の団体職員・桃井希生さん(25)が昨年4月、現場の警察官らを特別公務員暴行陵虐などで刑事告訴したのに対し、地元検察は同6月までに警察官全員の不起訴処分を決めた。

これを不服とする桃井さんは同7月に札幌検審へ審査を申し立て、排除の不当性の評価を第三者機関の良心に委ねたが、結果としてその思いは届かなかった。

札幌検審は今回の議決で、警察官の行為のほとんどすべてを「やむを得なかった」と判断、当時の排除行為は警察官職務執行法の措置として「許容し得る」と結論づけた。桃井さんらが札幌地方裁判所に提起した国会賠償請求訴訟での被告・北海道警察の言い分を、ほとんどそのままなぞったような決定と言える。

警察官の行為を不問とする処分への異議申し立てが不本意な結果に終わるのは、もう1人の国賠原告・大杉雅栄さん(32)の検審申し立てに昨年10月、同じく「不起訴相当」が議決されて以来、今回で2度目。排除被害者らが参加する「ヤジポイ」チームは4日付のツイッター投稿で、改めて警察官による桃井さんへのつきまとい動画を公開し「これのどこが『適法な職務執行』なのか」と、今回の議決を強く批判している( https://twitter.com/yajipoi0810/status/1367374127045042176 )。


札幌検審が敷地内掲示板に掲出した議決要旨は、次の通り(議決年月日 令和3年3月3日)。

・不起訴処分をした検察官 (官職氏名)札幌地方検察庁検察官検事 鎌田 航

上記被疑者らに対する特別公務員職権濫用、特別公務員暴行陵虐被疑事件(札地検令和2年検第1488~1492号)につき、令和2年6月26日上記の検察官がした不起訴処分の当否に関し、当検察審査会は、上記の審査申立人の申立てにより審査を行い、次のとおり議決する。

議決の趣旨
本件各不起訴処分はいずれも相当である。

議決の理由
1 被疑事実(告訴事実)の要旨
被疑者(被告訴人)A、同B、同C、同D及び同Eほか氏名不詳者らは、警察官であるが、令和元年7月15日に安倍晋三内閣総理大臣が選挙の応援演説を行う際に、その職務として警備活動等を行うに当たり、同内閣総理大臣に批判的な言動をする人物の身体を拘束してその場から移動させることを共謀の上、同日午後4時50分頃、札幌市北区北6条西4丁目北海道旅客鉄道株式会社札幌駅南口広場において、街宣車の上で演説中の内閣総理大臣安倍晋三に向かって、「増税反対。」、「自民党反対です。」などと叫んだ審査申立人(告訴人)に対し
(1) 審査申立人を取り囲み、その腕をつかんだり、同人の腰に手を回すなどして北方に引っ張った上、同人の両脇から同人を押さえ込むようにしたり、同人の肩等をつかむなどして北方に連行する暴行を加え
(2) ベンチに上がった審査申立人の腕をつかんで引きずり下ろし、さらに北方に連行する暴行を加え
もって職権を濫用して審査申立人を不法に逮捕監禁するとともに、職務を行うに当たり審査申立人に暴行を行ったものである。

2 当検察審査会の判断

(1)審査申立人は、前方に熱心な安倍総理支持者の集団がいる状況の中、興奮状態で「増税はんた~い。」などと繰り返し叫んでおり、現に聴衆からにらみつけられるなどしていた。被疑者Aらが、審査申立人がそのまま前方に突進して、支持者の集団にぶつかった場合には、それをきっかけとして将棋倒しなどの雑踏事故が発生したり、支持者から暴行・傷害の被害に遭い、これに反撃するなどしてけんかに発展する危険を認めて、人の身体に危険が生じる事態があると判断し、警察官職務執行法4条及び同法5条に基づいて警告をすることは相当な状況にあったと考えられる。

(2)被疑者Aが、審査申立人に近づいて様子を確認し、「落ち着いて。」などと声かけをしたところ、同人がこれに応じる様子がなかったばかりか、興奮した様子でなお前方に突き進んでおり、同人がまもなく熱心な安倍総理支持者の集団に到達する状況があったことから、直ちに制止しなければ、前記のような事態を防止できないと考えたこともやむを得なかったと認められる。

(3)被疑者A及び同Bは、時間の経過とともにより強度な有形力を行使するに至っているが、それは審査申立人が警察官による措置を逃れようとして前記危険が一層高まったため、必要となった措置を段階的に講じていったものであって、警察官職務執行法4条の避難及び同法5条の制止の措置として相当性を欠くものとは言い難い。

(4)被疑者C、同D及び同Eら男性警察官は、基本的には被疑者Aら女性警察官の後方に位置し、被疑者Aらの身体を支えるなど審査申立人の身体に積極的に触れることなく、例外的に、審査申立人が被疑者Aを振り切って前方に進もうとした場合に審査申立人の前方に立って同人を身体で押し返すなどしたに過ぎず、この点についても相当性を欠くものとは言えない。

(5)なお、ベンチに上がった審査申立人が被疑者Aらに腕をつかまれて引きずり下ろされたという点については、証拠上、これを認定することができないとした検察官の判断は相当であると考える。

(6)被疑者らの一連の職務執行は、警察官職務執行法4条の避難及び同法5条の制止の措置として許容し得るものであって、違法、不当な職権の行使とは認められない。

(7)よって、検察官がした不起訴処分(罪とならず)の裁定を覆すに足りる証拠がないので、上記趣旨のとおり議決する。

札幌検察審査会

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。
北方ジャーナル→こちらから

 

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