5月27日、東京地検特捜部は、太陽光発電などの事業名目で富士宮信用金庫(静岡県)と阿波銀行(徳島県)の2つの金融機関から11億円あまりをだまし取った詐欺の疑いで横浜市の太陽光発電関連会社「テクノシステム」社長、生田尚之容疑者ら同社役員3人を逮捕した。
一般にはあまり知られていなかった生田容疑者だが、逮捕で騒然となったのは永田町。彼は、大物政治家に食い込んで、派手にカネをばら撒いていた。
■政治家利用で融資獲得
同社に関しては、本サイトですでに報じた通り、小泉純一郎元首相や次男の小泉進次郎環境相など、政治家とのパイプを生かして金融機関に接近。架空の再生可能エネルギー事業をでっちあげて融資を得るという手法を繰り返してきたとみられている。
その舞台となっていたのが、小泉元首相がひいきにしていた、東京・赤坂の割烹料理店だ。あるテクノシステム関係者が、こう話してくれた。
「生田だけでなく、テクノシステムの金主で最高顧問の名刺を持ち歩くH氏らが頻繁に出入りし、詐欺の重要な道具立てとなった有名政治家との写真を、次々に撮ってはあちこちにばらまいていました」
また、赤坂の割烹料理店の女将がSNSに投稿した写真で、自民党の原田義昭元環境相や小池百合子東京都知事が生田容疑者の経営する肉料理の開店に花を贈っていたことも分かっている。
「小泉元首相は原発廃止論者で、息子は環境相。小池氏も原田氏も元環境相です。テクノシステムの事業である太陽光発電、バイオマス発電など再生可能エネルギーは環境省と密接に関連しています。そこで、生田は、環境大臣経験者に接近を繰り返していました。テクノシステムは九州でいくつもの太陽光発電やバイオマス発電事業を展開していますが、原田氏は福岡が地盤なので、都合がよかったらしいです」(前出・テクノシステム関係者)
政治家をうまく利用してのし上がった生田容疑者だが、ここに来てもう一人、注目される政治がいる。生田容疑者の店の開店に、花を贈っていた東京都の小池百合子知事だ。
■小池知事の金庫番が最高顧問
生田氏容疑者は2015年、小池氏が代表を務めていた「自民党豊島総支部」に150万円、2013年には小池氏の政治団体「フォーラム・ユーリカ」に50万円を寄附していたことが分かっている。(下が、自民党豊島総支部の政治資金収支報告書の該当部分)
注目したのは、小池氏の二つの関連団体が生田氏から寄附を受けた時の会計責任者の名前だ。政治資金収支報告書には「水田昌宏」とある。
水田氏は、東京都練馬区の小池氏の自宅の同居人で、金庫番ともされる人物。小池氏の衆院議員時代は公設秘書で、小池氏の金銭疑惑が浮上するたびに名前が登場してきた。
実はその水田氏、テクノシステムの「株主」とも「最高顧問」ともいわれ、生田容疑者とは昵懇の仲だという。前出・テクノシステムの関係者がこう振り返る。
「水田氏は、テクノシステムの本社にちょこちょこ姿を見せていました。本社では、誰も生田氏には逆らえないが、水田氏だけは別格。ため口で話をして、ソファーにふんぞり返るなど、ぞんざいな態度でした。生田氏は水田氏のことを『大株主、最高顧問』『小池知事の側近で、政治家とのつながりがすごい人なので大事にしなければいけない』と話していました」
生田容疑者のデスクには、小池氏との関係を見せつけるような写真が何枚も飾られていたという。前述したように、それも生田容疑者にとっては重要な「商売道具」だったということだ。
■チラつく大樹総研の影
政治家に接近して親密な関係を構築し、金融機関の信用につなげて融資を得る。ある意味、古典的な手口だ。そこに影響力を及ぼしていたのは、先の水田氏に加えて、もう一人の「最高顧問」とされる金主のH氏だった。
H氏は、生田氏と同様に再生可能エネルギー事業に多額の投資をしているらしく、鹿児島県の吹上浜沖などで洋上風力発電を計画していることが分かっている。一方で、政治とのつながりも――。旧民主党時代の細野豪志衆院議員に、5,000万円もの不透明な資金調達疑惑が浮上した時に名前が出たのがH氏。その際、関与が疑われたのが、近年政財界の フィクサーとして知られるようになった矢島義也(本名:義成)会長が率いるコンサル会社「大樹総研」だった。
「H氏も大樹総研も、政治家とのパイプを武器に成長した会社。生田氏もそれを手本にして、業績をアップさせていたのでしょう。しかし、業績などを考えず、酒やバクチに湯水のように融資されたカネを使いはじめて破綻、最後には御用になってしまいました」(前出・テクノシステムの関係者)
怪しい人脈が浮き彫りになりつつあるテクノシステムの詐欺事件。今後の展開から、目が離せなくなってきた。