江差パワハラ問題で個別聴取始まる|告発24件対象に第三者委調査

早期の解決が待たれる北海道立江差高等看護学院のパワーハラスメント問題で17日、道が設置した第三者委員会(座長・山内良輔弁護士)が函館市内で2度目の会合を設け、ハラスメント事案の特定や現地調査の実施について話し合った。会合後の記者会見では、5月から募り始めた被害申告が30件に上り、うち24件が調査の対象となったことが明かされた。同日午後には被害学生の個別聴取が始まり、休学中の女子学生ら少なくとも2人が第三者委の聴取に応じた。

第三者委の会見によると、改めて寄せられたパワハラ被害報告30件のうち6件が「記名がない」「加害者を特定できない」などの理由で調査対象から除外され、残る24件について個別の聴取などが実施されることになる。24件のうち江差の事案は19件で、残る5件は同じ道立の紋別看護学院がらみの被害申告(紋別は、現在江差で副学院長を務める品川由美子教員の前任地)。寄せられた被害の具体的な内容は明かされず、また教員の処分や学生の救済措置については「できるだけ早く」との説明に留まった。現地調査の時期についても「決まっていない」とされたが、学院側には事前にスケジュールを伝えることになるといい、いわゆる「抜き打ち」を回避した恰好だ。

被害学生の個別聴取は6月中にすべて終わらせる予定といい、同日午後には今春から休学中の2年生女子(21)など少なくとも2人が各1時間程度の聴取に応じたことがわかっている。女子学生によると、聴取は事前に提出した「調査票」に沿って進められ、学生のほうからは「休学中の学費の免除」や「加害教員の免職処分」などを求めた。委員らは「結論まで長引かせないように努める」と約束したが、学生は「あの感じだとあまり期待できそうにない」との手応え。女子学生は現在アルバイト中で、10月には復学を考えており「そのころまでに解決してくれないと安心して学校に戻れない」と訴える。

学生の保護者らでつくる「父母の会」にかかわる江差町議の小野寺真さん(68)は「調査は調査で進めてもらうとして、並行して救済策を進めて貰わないことには被害回復が遠のく一方」と指摘しており、父母の会では近く早急な対応を道に要求することを検討している。同会ではすでに第三者委との面談を申し入れいるが、こちらの対応の可否については17日時点で「何の連絡も届いていない」という。

(小笠原淳)

【小笠原 淳 (おがさわら・じゅん)】
ライター。1968年11月生まれ。99年「札幌タイムス」記者。2005年から月刊誌「北方ジャーナル」を中心に執筆。著書に、地元・北海道警察の未発表不祥事を掘り起こした『見えない不祥事――北海道の警察官は、ひき逃げしてもクビにならない』(リーダーズノート出版)がある。札幌市在住。

*「江差高等看護学院の正常化を求める父母の会」公式サイト⇒https://esashi-seijo.main.jp/

 

 

 

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