「違法」と言われようが「独裁」と批判されようが、町政トップに君臨する永原譲二町長の指示通りに物事を進める福岡県大任町。本来、情報公開制度における非開示決定について第三者的な判断が求められる審査請求でも、やはり常識が通用しなかった。
■審査請求から約2年、答申はお粗末内容
ハンターが大任町に対し過去5年度分の入札結果の開示請求を行ったのは令和3年6月14日。町が同年6月25日付けで非開示にすることを決定したため、7月1日付けで「非開示処分は公共工事の入札情報を公表するよう義務付けた『公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律』の規定に反する」として取り消しを求める審査請求書を提出していた。
町が『弁明書』を送ってきたのは10か月も経った令和4年4月初旬。ハンターは同年4月26日付で「反論書」を送ったが、それから1年以上経過しても、町長から諮問されたはずの「大任町情報公開審査会」の審査は終わらなかった。
この点について今月2日の配信記事で厳しく批判したところ、数日して審査会の結論である「答申書」が送られてきた。内容は予想通りというしかなく、「非開示は妥当」とするもの。永原氏や担当課が「入札結果を役場の玄関口にある掲示板に貼り出していた」と説明してきた公表済みの入札結果の扱いについては、一切言及がないという呆れた主張だ。答申書の「審査会の判断」を下に示す。
第6 審査会の判断
1 公共工事適正化法第8条の規定の妥当性について
公共工事適正化法第8条において、地方公共団体は入札執行後、入札者の名称、入札金額及び落札者の名称、落札金額等を公表しなければならないとなっており、この規定における例外的な規定は、他法令を合わせても特には見当たらない。また、国土交通大臣、総務大臣等がメディアで、公表しないことは、違法行為にあたるとの発言もあり、実施機関においても、同法第8条の規定に抵触することは認識しており、審査会としても、同様に認識している。
2 条例第7条第3号の該当性について
他方で、条例第7条第3号では、「公にすることにより、人の生命、健康、生活、財産又は社会的な地位の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」が記録されている公文書については、開示しないことができると規定している。
実施機関は、同条項の「人の生命、」「生活、財産」の保護及び「犯罪の予防」に支障を及ぼすおそれがあるとして当該情報の公開を控えたところである。
審査会においても、審査請求人が指摘している、「いつ、誰が、誰に対して、何を行ったのか」という点を実施機関により明らかにした上で、本号の規定に該当するかを判断する必要があった。
しかるに、実施機関からは、さまざまな事例の説明を受けたところであるが、当該事例の存在を裏付ける明確な証拠の提示まではなされなかった。
しかしながら、令和4年11月26日に、本件公開請求の対象とされている工事の入札に参加した請負業者に対して、実際に、反社会勢力からの脅迫行為がなされたことが、福岡県警による指定暴力団組長ら3人の逮捕(令和5年3月7日)に伴う発表により確認された。
また、これに先立つ令和3年7月には、上記業者を含めた複数の入札参加業者から、入札結果についての公表を控える旨の要望書が提出されていた。
以上のことからすれば、本件公開請求がなされた令和3年6月14日時点において、反社会的勢力からの不当な要求が大任町内の入札参加業者に対して現に存在していたと合理的に推察することができ、同業者の生命、財産の保護及び犯罪の予防に支障を及ぼすおそれが現実化していたと実施機関の認めることにつき相当の理由があったといえる。
よって、本件公開請求にかかる入札結果は、条例第7条第3号が定める不開示情報に該当する。
この点、審査請求人は、小規模な自治体であるならば、入札結果及び落札結果以外の、公開された別の情報源から落札業者が誰であるかを知る可能性もあり、入札結果及び落札結果を公表することと、不当要求行為が行われることとの間に因果関係がないと主張している。
しかしながら、入札結果及び落札結果を公表することによって、より容易にかつ、確実に落札業者を把握することができることは明らかであり、このことにより不当要求がなされ、危険性が相当程度高まるのであり、審査請求人の主張は、入札結果等の情報の条例第7条第3号該当性を否定する理由とはならない。
3 結論
以上のとおり、実施機関が、本件公開請求にかかる公文書に条例第7条第3号に該当する情報が記録されているとして不開示とした決定は、妥当である。
法律の専門家が関与した答申であるとは到底思えない酷い内容である。大任町の総務企画財政課側に確認したところ、案の定、審査会のメンバーに弁護士は含まれていなかった。しかも、定員の5名のところ、一人辞任したため4名での審査だという。
審査会は、入札結果非公開が違法であることについて、「実施機関においても、同法第8条の規定に抵触することは認識しており、審査会としても、同様に認識している」とした上で、町民の生命・財産が脅かされるという町側主張の論拠についても「実施機関からは、さまざまな事例の説明を受けたところであるが、当該事例の存在を裏付ける明確な証拠の提示まではなされなかった」とハンターの申立て理由を認めている。ここまでは、まともな解釈をしているように思えるが、あとに続くのは、合理性を著しく欠いた幼稚な作文だ。
次に審査会は、「令和4年11月26日に、本件公開請求の対象とされている工事の入札に参加した請負業者に対して、実際に、反社会勢力からの脅迫行為がなされたことが、福岡県警による指定暴力団組長ら3人の逮捕(令和5年3月7日)に伴う発表により確認された」と、今年3月に指定暴力団「太州会」の幹部が逮捕された事例を唐突に持ち出す。
ハンターが審査請求したのは、一昨年の7月。その時点での非開示決定に異議を唱えたわけで、2年近く経って立件された事案とは何の関係もない。
「これに先立つ令和3年7月には、上記業者を含めた複数の入札参加業者から、入札結果についての公表を控える旨の要望書が提出されていた」とあるのも単なる付け足し。問題になる開示請求は同年6月のもので、「これに先立つ」などと暴力団幹部の事件との関係を強調したのは、議論のすり替えが得意な町長サイドの意向を受けてのことだろう。同町の審査会はまったく信用できない。
そもそも、法律は入札結果の公表を命じており、業者が何と言おうと例外が認められるものではない。暴力団の脅威を排除するのは警察の仕事であり、これを活用せずに行政機関がマル暴対策をするのは間違いなのだ。何度も報じてきたが、永原氏が隠したいのは、町発注工事が生み出す“利益”を、ダミー業者を使って独占してきた自身の行為。つまり、ハンターが大任町についての報道を始める前――つまり令和3年6月以前――の入札結果なのである。
その証拠に、太州会幹部の逮捕を受けて再開したはずの入札結果公表は、3年7月以降の事案に関するものだけ。9日に役場で事実関係を確認し、かつては役場玄関口の掲示板に貼り出し公表していたとする“令和3年6月以前の入札結果”を公表するよう町側に求めたが、「検討します」として確約を避けた。
審査会の答申が合理性を欠いていることは、令和3年6月以前の入札結果について一切言及していないことでも明らか。公表済みの事項を、情報公開請求を受けて「非開示」にするという子供でも呆れる非常識な姿勢を認める審査会など、存在意義はあるまい。
メンバーが明かされない審査会の答申を信用する人間はいない。ハンターは、次に送られてくるはずの「裁決」を待って訴訟を提起する。